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ペットボトルの100%サステナブル化に向けたサントリーの挑戦

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サントリーグループでは、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルの100%サステナブル化を目指し、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進しています。また、リサイクルの補填としてバイオ素材の活用に取り組み、2024年には使用済み食用油(廃食油)由来のパラキシレン(バイオパラキシレン)を用いたペットボトルの導入が開始されました。業界をリードするサントリーにサステナブルな活動に対する想いや、今回の取り組みの概要や展望について、お伺いしました。

話し手

北村 暢康(きたむら のぶやす)
サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 シニアアドバイザー

平野 隆之(ひらの たかし)
サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 気候変動・循環経済統括部長 兼 サプライチェーン本部 イノベーション・開発本部 サステナブル開発部 部長

小笠原 直也(おがさわら なおや)
サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 (環境課題)技術ソリューショングループ 課長

 

ペットボトルは事業に不可欠だからこそ、サステナブル化が急務

サントリーグループが掲げる「プラスチック基本方針」について教えてください。

小笠原さん 我々は「プラスチック基本方針」において、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材等に100%切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにすることで100%サステナブル化を目指す、とする目標を掲げています。

サントリーグループでは、サステナビリティビジョンとして「人と自然と響きある社会の実現へ」を掲げており、このビジョン実現のための取り組みとして7つの重点課題を定めています。この7つのうちの1つがペットボトルを中心とした容器包装のサステナブル化であり、プラスチック基本方針はその具体的な道筋として位置づけられます。

策定の背景についても教えてください。

小笠原さん 2010年代後半から、プラスチックを扱うブランドオーナーとしての取り組み姿勢が問われるようになりました。サントリーグループでは、2011年からすでにリサイクルペットボトルの活用などを進めていたものの、具体的な数値目標は立てていませんでした。そこで、我々の取り組み姿勢を社会に示すために「プラスチック基本方針」を策定し、数値目標を掲げました。ペットボトルは機能性と汎用性が高く、設計や製造がしやすいですし、軽くて割れることもなく利便性の高い容器です。我々の事業には今後もペットボトルが欠かせないからこそ、メーカーとしてサステナブル化を進めなければならないという使命感も策定の背景にはありました。

サントリーグループ_プラスチック基本方針出典:サントリーグループ「プラスチック基本方針」

世界で初めて、バイオパラキシレンで製造されたペットボトルを商品に導入

2024年10月には、使用済み食用油(廃食油)由来のパラキシレン(以下、バイオパラキシレン)を用いて製造したペットボトルを、商品に導入するという取り組みも発表されました。このバイオペットボトルの開発に至った背景を教えてください。

平野さん 2030年までにすべてのペットボトルを100%サステナブル化するという目標に向けて、当社では使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」水平リサイクルを主な施策として進めています。ただ、使用済みペットボトルを100%回収することや、リサイクル過程でのロスをゼロにすることが難しいからこそ、それらで生じた不足分を補うための方策も考える必要がありました。そこで目を付けたのが、バイオマス由来の素材です。我々の方針に共感してくださった企業様と協調しながら、バイオパラキシレンを用いてペットボトルを製造するためのソリューションの提供やサプライチェーンの構築を支援していただきつつ、今回の取り組みを進めていきました。

小笠原さん ペットボトルの原料であるPET樹脂は、30%が「モノエチレングリコール」、残り70%は「テレフタル酸」(前駆体が「パラキシレン」)で構成されています。モノエチレングリコールは、フードチェーンに影響を与えない廃糖蜜由来の素材を使用する技術がすでに商用化されており、2013年から「サントリー天然水」のペットボトルに導入されています。一方、今回のプロジェクトでは、より多くの割合を占めるテレフタル酸についても、マスバランススキームの活用によるバイオマス化(廃食油→バイオナフサ→バイオパラキシレン→バイオテレフタル酸)に成功し、商品への実用を開始しました。バイオパラキシレンで製造されたペットボトルを商品に導入する試みは、世界初となります。実現にあたっては、三井化学様、ENEOS様、三菱商事様などとの連携により、使用済み食用油由来のバイオナフサを調達し、最終的にペットボトルとして製造するグローバルなサプライチェーンを構築しました。

<テレフタル酸のバイオマス化におけるサプライチェーン>
テレフタル酸のバイオマス化におけるサプライチェーン

出典:サントリーグループ「使用済み食用油由来のバイオパラキシレンを使用したペットボトルを世界で初めて(※2)商品に導入」

サントリー_小笠原さん

業界を超えた複数の企業との連携によってサプライチェーンを構築できたプロジェクトでしたが、複数企業とこうした座組みを確立できたポイントはどこにありましたか。

小笠原さん 全体コーディネートを担ってくださった三菱商事様のおかげで、サプライチェーンの下流にいる当社が、三井化学様やENEOS様のような原料を製造されている企業様と繋がることができ、容器包装のサステナビリティに関する構想について具体的に相談できたと感じています。

平野さん 良い技術やアイデアがあっても、それらを理解できないことには良し悪しもわからず、判断できません。そういった意味では、小笠原を中心に、サステナブル素材の知識も身に付けながら、プロジェクトに能動的に取り組んだことは大きなポイントだったと思います。「新しいことをやりたいから、いいものがあれば提案してください」という待ちの姿勢でサプライヤー様に任せきりだったなら、この話は進まなかったことでしょう。

今回のプロジェクトの成功要因は何だと思いますか。

平野さん 皆様ご存知の通り、1つのプラントを立てるためには数百億円の投資が必要です。このようにハードルが高いと、一歩目がなかなか踏み出せません。だからこそ、いかに既存設備を活用できる範疇でサプライチェーンを構築できるかにこだわりました。これが、スピード感を持ってプロジェクトを推進し、商品化を実現できた要因だと考えています。サントリー_平野さん

プロジェクトによって期待される定量的な効果についてはいかがですか。

小笠原さん バイオパラキシレンで製造されたペットボトルは、従来の化石由来原料から製造したペットボトルに比べて、大幅なCO₂排出量削減に貢献できると期待されています。現在は効果についての試算結果を第三者機関に確認を行っている最中ですが、CO₂排出量削減効果が高いと見込んでいます。

プロジェクトを通して得られた知見や技術を、他の取り組みや事業にどのように応用する予定ですか?

小笠原さん 今回のプロジェクトを通じ、サステナビリティの取り組みは1社で完結するものではなく、バリューチェーンに関わる多くのパートナー企業との協業によってブレークスルーするのだと再認識できました。BtoC企業であるサントリーグループに期待されている発信力や、お客様とのコミュニケーションができる立ち位置を武器にしながら、他のプロジェクトにも今回の経験を生かしていきたいです。

北村さん 社内の関係部署を巻き込みつつ、複数のパートナー企業様とともにプロジェクトを推進するための座組の作り方やプロジェクトマネジメントのノウハウが身に付いたと考えています。役割が違う組織やメンバーがプロジェクトに集結するなかで「一体感を醸成して、同じ方向を向くことができた」経験は、他の業務にも応用していきたいです。

「サステナブルな商品が当たり前に選ばれる時代」の創造をけん引できる企業でありたい

生活者に対しては、今回の取り組みをどのように伝えていく予定ですか。

平野さん 未来の社会や地球に貢献する新しい取り組みを行っている価値を、お客様に対してどのように届けるかというコミュニケーションの部分は、これからの課題です。お客様に共感していただくためのメッセージの届け方やストーリーの内容については、今まさに一所懸命に考えているところです。

小笠原さん 一部の商品では、バイオマス資源を用いて製造したペットボトルをすでに採用しているため、皆さんが何気なく手に取っていただいたサントリーの飲料がバイオマス資源由来のペットボトルだったということがあるかもしれません。今後は、ペットボトルのバイオマス化に関しても、ブランドコミュニケーションを強化していくフェーズになります。健康になりたいから身体に良いものを選ぶ人が多いように、「サステナブルな社会を目指してサステナブルな商品を選ぶ」人が大半を占めるような時代が必ず来ると思っています。そうした時代が訪れたとき、サントリーが選ばれるブランドであるために準備をしていきたいと思います。

北村さん 重要なのは、今回のプロジェクトを「どのようにビジネスに昇華できるか」と「従来の商品との価値の違いをどう打ち出すか」だと考えています。そのためには、「どんな価値があるのか」と「サントリーがなぜこのような取り組みをしたのか」の両方を、わかりやすく生活者に示さなければいけません。今回のプロジェクトは、CO₂排出量の削減や資源の有効活用に繋がりますが、その事実だけを生活者に伝えるだけでは不十分です。「この価値がプラスされている商品なら、積極的に買いたい」と生活者に思ってもらえるような、自分事だと捉えてもらうための働きかけやコミュニケーションに取り組んでいきたいです。

サントリー_北村さん

最後に、サステナビリティ社会の実現に向けての意気込みをお願いします。

平野さん 当社のバリューの一つに、「利益三分主義」というものがあります。これは、「事業活動を通じてお客様から得た利益は、自社への再投資だけでなく、お客様や社会に還元していくという考え方」です。このバリューに沿って、業界や社会全体をリードする気概で、サステナビリティ社会の実現に取り組んでいきたいです。

小笠原さん 「利益三分主義」と同様に、サントリーには「やってみなはれ」というバリューがありますが、これは「現状に満足せず、常に高みを目指して、失敗を恐れず変わり続けろ」という意味だと捉えています。そのような姿勢を大事にしつつ、スピード感を持ってサステナビリティ活動に取り組む必要がありますが、個社でできることには限りがあるのも事実です。だからこそ、他の業界の皆様と協働して、新しい技術の導入やイノベーションの創出を目指していきたいです。

北村さん 生活者との距離の近いBtoC企業だからこそ、たとえば節水を意識する方や、リサイクルを行うときにラベルを剥がして捨ててくれる方が1人でも増えるようなメッセージの届け方を意識していきたいです。まだまだ試行錯誤の最中ですが、CMを見た方から当社のお客様センター宛に「ペットボトルの分別の必要性を理解できた」や「もっと水を大切にしていきたい」といった声も多く届いています。商品の背景にあるサステナビリティ活動について共感いただけるようなコミュニケーションを今後も強化していきたいです。

取材時のダイジェスト版動画も提供しています。ぜひ、こちらからご視聴ください。

PLAYERs#06_サントリーhttps://youtu.be/DAeMsr3GJ4s

三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

「BePLAYER®」「RePLAYER®」
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm

<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

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