地域の知られざる素材や技術にふれる、
「ふくいものづくりツアー」レポート・後編

「ふくいものづくりツアー」と題して、福井県内のものづくりの現場を訪れたMOLp®メンバー。1日目は鯖江市の産地を巡り、漆器やメガネの技術、産地の取り組みなどを見学しました。2日目は福井市に移動し、主要産業である「繊維」を取り巻く技術について理解を深めていきます。

あらゆる機能を接着する、熱転写ラベルのリーディングカンパニー

この日、最初に訪れたのは、「熱転写ラベル」の開発・生産・販売を行うジャパンポリマーク株式会社。1985年に創業以来、熱転写ラベルのリーディングカンパニーとして国内外から高い技術が評価されています。

▲案内していただいたのは、ジャパンポリマークの山本和紀さん

山本:当社は接着・マーキングに関する悩みを解決する「マーキングソリューションカンパニー」として、さまざまな接着技術を駆使しています。熱圧着ラベルは表現性や意匠性、機能性など用途が幅広く、お客様のニーズに合わせた機能や意匠をラベルによって追加することが可能です。

▲サッカー日本代表や各Jリーグのユニフォームにつけられた背番号やスポンサーのラベルはジャパンポリマーク社によるもの
▲蓄光や再帰性反射といった独自の機能を持つラベルも開発
▲自動車のサンバイザー部分につけられたコーションラベルのシェアはなんと95%以上!

過酷な環境下でも長時間耐える接着技術や納期に確実に対応する生産能力、圧倒的な採用実績が評価され、あらゆる業界から引く手数多のジャパンポリマーク社。より品質を向上させるための新たな技術や薬剤の開発も進めています。

▲ラベルの製造現場を見学
▲再帰性反射ラベルのマーキング体験もさせていただきました

最近では、人体への影響が懸念されているフッ素化合物を含まない撥水剤と、それに合わせた熱転写ラベル「DWRトランスファー」や、ポリウレタン樹脂を服に転写してさまざまな機能を持たせたウェア「Excale(エクスケール)」を開発。これまでにない機能性ウェアの製品化も進めています。

後半はMOLp®のメンバーとジャパンポリマーク社の研究開発を担うスタッフの方との意見交換が行われ、お互いの技術がどのように活かされるか、熱い議論が交わされました。

形状記憶と接着技術とのコラボや特定の物質だけ吸着できるラベルなど、さまざまなアイデアが飛び出し、今後につながりそうです。

「編み」の技術で衣料から医療分野に貢献。実写ドラマにもなった福井の繊維メーカー

次に訪れたのは繊維のなかでもニット(経編)生地の製造を行う福井経編興業株式会社。国内全体の23%に相当する生産量を誇る、日本屈指の経編メーカーです。

▲経営管理部の小川陽子さんに会社の概要を紹介いただきました

小川:福井は古くからの「繊維産地」です。しかし、時代とともに海外に生産体制が移るなど、事業所数や出荷額は低下の一途をたどり、国内の繊維業界は逆風にさらされました。これまでと同じことをしては生き残れないと、2010年に世界最大級のファッション素材の見本市である「プルミエール・ヴィジョン・パリ」に出展。通常は切れやすい天然素地を編み込むという技術を開発したところ、エルメスのジャケットに採用されたのが一つの転機となりました。

しかし、ここからさらに大きな転機が訪れます。「シルクで人口血管が編めないか」という東京農工大学の朝倉哲郎教授からの問い合わせを受け、衣料からメディカルの分野に参入。人体と同じたんぱく質を持つシルクを経編生地に使えば組織の間に細胞が入り込むことを発見します。その後、大阪医科大学の心臓外科医・根本慎太郎教授とともに心・血管臓修復パッチの開発をスタート。世界で初めて患者の成長に合わせて伸張する心・血管臓修復パッチは、身体的負担と経済的負担の軽減を可能にする画期的なもので、さまざまな治験を経て、2022年の承認・販売を目指しています。

これらの福井経編の取り組みは、直木賞作家の池井戸潤先生によるドラマ『下町ロケット2 ガウディー計画』で実写化。全国的にも福井経編の知名度が一気に高まりました。

最近では、2019年ラグビーW杯日本代表公式ユニフォームの生地も福井経編が開発。選手が激しく衝突しても服がヨレず、軽くて耐久性がある生地に仕上がっているそう。そのほかにも、保育用品のメーカーと共同開発した「吸音テント」や福井大学と開発を進めている「床ずれ防止用ベッドシーツ」など、メディカル以外の製品にも積極的に取り組んでいます。

繊維の技術を活かしながら異分野にも果敢に飛び込んでいく福井経編。そのチャレンジングな姿勢にMOLp®のメンバーも大きな刺激を受けました。

▲三井化学の製品も紹介。福井経編のみなさんも興味津々の様子でした
▲福井経編のみなさま、有意義な時間をありがとうございました!

界面化学の技術と多様な働き方でイノベーションを起こす

最後に訪れたのは、界面化学の技術をもとに化学製品と化粧品の研究開発、製造・販売を手がける日華化学株式会社。国内シェアナンバーワンの繊維加工用薬剤をはじめ、金属加工、紙・パルプ、クリーニング業界向け薬剤や化粧品など、その製品は多岐にわたります。

なかでも2017年に11月に新設した「NIC(NICCA イノベーションセンター)」は、社内外でのオープンイノベーションを加速させる研究開発拠点として、大きな話題に。著名な建築家である小堀哲夫氏の手による建物は、国内外の建築賞を数多く受賞しています。

まずはNICの内部を見学。4階建の建物内には研究所のほか、技術紹介ブースやスタジオサロン、カフェテリアなどが配置されています。フリーアドレスのワークスペースのほか、仕事に集中したい人のための「篭り部屋」も完備。NICができたことにより、部署を超えた交流が活発になるなど、社員の働き方にも大きな変化が現れているそうです。

▲どのフロアにいても自然光が降り注ぐ明るい空間。空調に地下水を利用するなど、環境にも配慮したサステナブルな施設でした

NICでの「ガーデンレクチャー」

日華化学では社外のゲストを招き「ガーデンレクチャー」と称した社内向けの講演会を定期的に開催しています。実は数年前からMOLp®の活動に注目してくださっていたという日華化学のみなさん。今回はなんと「ガーデンレクチャー」でMOLp®の活動を紹介する機会をいただきました。

プレゼンテーションでは、三井化学のこれまでの変遷やMOLp®の成り立ち、具体的な活動内容やこれまで手がけた素材などをご紹介。コミュニケーションを変えたことによるインターナルの変化を共有しました。MOLp®の活動を通して、「そうだ、三井化学に聞いてみよう」とお客様に言っていただけるようになるための文化を社内につくっていきたい! と今後の活動への意気込みを語りました。

▲日華化学のみなさんも熱心に聞き入っていました
▲質疑応答では「活動内でのテーマはどのように決めるのか?」「完成度の高い製品をどのように具現化するのか?」
「スポンサーや予算を獲得するには?」など、さまざまな質問が飛び出しました
▲プレゼンテーション後は、MOLp®の製品を実際に手にとっていただき、開発者から具体的なエピソードをご紹介

日華化学の「Mo-So活動」とMOLpのコラボが実現!?

MOLp®のような組織を横断した活動は日華化学にもあります。それが「Mo-So活動」。普段の業務のなかでは、好奇心のままに研究活動することはなかなか難しいもの。そこで部署を超えたMo-Soメンバー約20名が集い、自由な発想でさまざまなプロトタイピングを行っています。

Mo-So活動は「日華化学の技術と異分野をつなぐ」がコンセプト。興味のある分野の勉強会や講演会の開催からアイドルを応援する活動といったものまで幅広く、メンバーそれぞれが熱量高く取り組めるものをテーマに活動しています。

業務を超えた活動の面白さ、難しさなど、それぞれの活動内容を共有しながら、MOLp®とMo-Soのディスカッションは大盛り上がり。時間いっぱいまで話が尽きることはありませんでした。今回の交流をきっかけに、双方のオープンイノベーションがより活発になることを期待します!

▲日華化学のみなさんと

2日間かけて福井を巡った「ものづくりツアー」。伝統工芸やメガネ、繊維と分野は違えど、訪問したそれぞれの場所で刺激をいただき、今後のヒントになるものを得ることができました。MOLp®はこれからもますます活動の幅を広げていきます!

SPECIAL THANKS:
ジャパンポリマーク株式会社
福井経編興業株式会社
日華化学株式会社