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MOLpがニコニコ超会議に。くられ先生、ツナっちと「超アリエナイ理科ノ実験」

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2022年4月29日、30日に幕張メッセで開催された『ニコニコ超会議2022』にMOLpが初めて参加した。特設ブースではこれまでに生み出したプロダクトの展示を行ない、科学ステージで「超アリエナイ理科ノ実験」を披露。来場者に科学と素材の魅力を伝えた。

ステージ企画の「超アリエナイ理科ノ実験」では、書籍『アリエナイ理科ノ教科書』シリーズやYouTubeチャンネル『科学はすべてを解決する!』でおなじみのくられ先生、ツナっちをはじめとする「薬理凶室」が1日4ステージ、合計8ステージにわたり、最新の科学技術を紹介。両日の4ステージ目には三井化学の若手研究者とのコラボ実験が実施されました。

本記事は、大盛り上がりだった当日の様子をレポートする。また、ステージ終了後はくられ先生や研究者たちに、科学の面白さや、科学の魅力を伝えるために挑戦したいことについてインタビューを行なった。そこで語られた、教育現場に求められる科学学習のあり方とは?

取材・執筆:宇治田エリ 写真:小坂奎介 編集:川谷恭平(CINRA)

「Neo"PLASTIC"ism」を掲げるMOLp。ブースに展示されたプロダクトを紹介

「脱プラスチック」から「改プラスチック」という考えがベースになっている「Neo"PLASTIC"ism」

今回、MOLpの展示ブースでは、さまざまなものを真空パックで包装できる「スキンパック装置」の実演展示のほか、臓器の質感や触感をプラスチックで表現した「新臓形モデル」、レジ袋をアップサイクルした「RePLAYER®パスケース」、見て触って素材の違いを体験できる「MATERIUM」など、合計7つのコンテンツを紹介した。

なかでもひときわ人気だったのが、来場者が体験できる展示。三井化学が開発した「ストラクトボンド®」というシール材を使った非接触型の空中ディスプレイは、空中に浮かび上がった画面に合わせて指を動かすと、浮遊するキャラクターが反応してさまざまな表情を見せるという仕組み。

「ストラクトボンド®」は透明性に優れているため、空中ディスプレイ映像の高画質化に貢献できる
現在、都内にあるいくつかのセブンイレブンでは、ストラクトボンドを採用した非接触セルフレジ「デジPOS」の実証実験が行われている

光をあてると色が変わる、フォトクロミック機能が搭載されている「SHIRANUI」も来場者の興味を引いた。アクセサリーを制作しているという来場者からは、「SHIRANUIを使ってどんな作品がつくれるだろう? と想像が膨らんだ」とコメントも。

光学プラスチックレンズ材料「MR™」。紫外線によって色が変化する「SunSensors™」が採用されている

手動射出成形機による実演では、ペレットと呼ばれるプラスチックの粒を使って、樹脂(プラスチック)成形の仕組みを解説。射出成形とは、加熱して溶かしたプラスチックを、型に流し込み、冷やして固めて、かたちにするというもの。熱可塑性プラスチックのリサイクル性についても解説し、小学生の来場者は「プラスチックがリサイクルされるとき、こういうふうに形が変わるんだと学びになった」と感想を述べていた。

再利用して生まれたプラスチックを持って説明するササキタイセー研究員
レバーを押して溶かしたペレットを透明な型に注入していく

ブースに訪れた来場者は、MOLpの作品を実際に見て、触れるなかで、「これはどういう仕組みですか?」など、MOLpの研究者に積極的に質問を投げかけていた。質問に対応していた研究者は「たくさんの人の好奇心を刺激できてうれしい」と話した。

展示ブースの裏は来場者が自由に絵を描いて楽しめる仕様に
漫画『Dr.STONE』の原作者・稲垣理一郎さんもイラストとサインを描いてくれた

ツナっちの心理状態が丸裸に?「三井化学 超コラボ実験ステージ」

今回のイベントのなかでもっとも注目されたのが、科学実験ステージで開催された「超アリエナイ理科ノ実験」。これは書籍『アリエナイ理科』シリーズやYouTubeチャンネル『科学はすべてを解決する!』でおなじみの「薬理凶室」と三井化学のコラボレーションで、薬理凶室のリーダー・くられ先生の発案によって生まれた。

レイユールら凶室の人気メンバーをはじめ、科学系YouTuber・元気先生らも参加した実験企画は、毎回立ち見が出るほどのにぎわいに。

ツナっちのTwitterより

両日のトリを飾ったのが「三井化学 超コラボ実験ステージ」という企画だ。これは、くられ先生に憧れて化学の道を志し、三井化学の研究員になったという入社3年目の若手研究員、佐藤陽日(サトウ)と内海樹(ウツミ)が考えたもの。

椅子に座るだけで心理状態や感情を可視化できる最新技術「PIEZOLA® Emotion アプリ」で、ツナっちや来場者の感情を計測しながら、いくつかのクイズや実験が行なわれた。

左から司会を担当したサトウ研究員、ツナっち、くられ先生。実験の模様はニコニコ生放送でも配信された

くられ先生:じつはいま、三井化学さんが開発した人の心を可視化する装置で、ツナっちの本心を読み取って、ニコニコ動画で配信しているんだよ。

ツナっち:俺の心理状態がダダ漏れじゃん!どうやって!?

サトウ研究員:座っている椅子の座面を見ていただくと、装置がついているのがわかりますか?これは「PIEZOLA®️ Emotionアプリ」といって、心拍数や呼吸などから、その人の心理状態を読み取るアプリです。

マスクで表情がわかりにくいコロナ禍のイベントでも、この装置を使えば、平常心、リラックスやイライラした状態、ポジティブな気持ちなど、人の心理状態を可視化することができます。

接触・振動センシング基材「ピエゾラ」を椅子上のマットに搭載
ピエゾラが心拍数や呼吸数などの信号を検出し、アプリで感情を可視化。コロナ禍の新しいエンターテインメントの演出として期待されている

三井化学が開発した、極細糸状の接触・センシング素材「ピエゾラ®️」をバイタルセンサーとして椅子の座面に敷いて、心拍数や呼吸数を取得。リトルソフトウェア社の人工知能技術によって、心拍や呼吸データから感情などを予測することできる。

観客席の一部にもセンサーが設置されており、「自分の感情も読み取られているかも」と会場がざわついた。なかにはストレスの反応が出ている人がいて笑いが起きた。

伸びたり、硬くなったり。「ABSORTOMER®️」の不思議な触り心地

続いて、会場の参加者に配られた「緑のシート」について、サトウ研究員が説明した。

サトウ研究員:これは「ABSORTOMER®️」という三井化学の新素材です。手の体温で温めていただいたうえで引っ張ってみると……。どうなりますか?

くられ先生:すごい、どんどん伸びる!

サトウ研究員:この素材は温度によって硬さが変わるため、冷蔵庫などで冷やすと逆にカチカチに固まるんです。また、プラスチックでありながら、常温になるともとのかたちに戻る形状記憶機能もあるんですよ。

「ABSORTOMER®️」は「Absorb(吸収する)」と「Elastomer(柔らかくゴムのような性状)」を組み合わせた造語。MOLpではこの素材を使い、温度によってかたちが変わるプロダクトを製作
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