REPORT

素材の素材までかんガエル、三井化学の取り組み。
無印良品のイベントにMOLpが参加

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2025年1月25と26日に無印良品 東京有明で『環境をかんガエルウィーク#004』が開催され、三井化学・MOLpが参加した。

楽しい・おいしいといったポジティブな体験を入口に、環境への取り組み方を考え、アクションにつなげる本イベント。今回は、企業や大学、生産者や団体など24組が出店。環境に配慮した食品やプロダクトの販売に加え、ワークショップなども開催された。今回初めての出店となる三井化学・MOLpのブースでは、プラスチックリサイクルの体験会が実施された。

『環境をかんガエルウィーク』が目指すこととはなにか。主催の無印良品 東京有明 店長・湯崎知己さんに、イベント開催の動機や、東京有明店で行われている使用済み商品回収サービスの取り組みについて話を聞いた。さらに、当日行われた三井化学・MOLpのワークショップ、MOLpメンバーが注目した他出店者のワークショップの様子もお届けする。

取材・執筆:宇治田エリ 写真:佐藤翔 編集:生駒奨(CINRA)

「無印良品はサステナブルな取り組みができているか?」東京有明 店長が語る『環境をかんガエルウィーク』への想い

気候変動をはじめ、森林破壊や海洋汚染などの影響を目の当たりにする機会が増えている。環境問題はもはや喫緊の課題となっている。その解決には、社会システムを大きく変容させることはもちろん、1人ひとりの気づきやアクションの積み重ねも必要だ。

『環境をかんガエルウィーク』は、2022年に無印良品 東京有明でスタートしたイベントだ。初回は無印良品の環境への取り組みを伝えるだけだったというが、回を重ねるごとに進化し、4回目となる今回は24組が参加する賑やかな催しとなっている。さらに東京有明では、毎年の『周年祭』や季節に合わせてテーマを設ける『四季祭』も開催し、イベントを通して環境を身近なこととして考えられるように働きかけているという。

無印良品 東京有明が、環境を考えるきっかけの場を積極的につくり続けているのはなぜか。主催者である東京有明店長の湯崎知己さんに話を聞いた。

湯崎:「環境を考える場をつくりたい」と思ったきっかけは、2015年から3年間にわたるRYOHIN KEIKAKU FRANCE S.A.S.(無印良品の運営会社・株式会社良品計画のフランス・パリ現地法人)への赴任でした。その当時から現地・パリの生活者は、環境に配慮した行動を当たり前に行っていたんです。「パリにはファッションやアートだけではなく、環境に対する配慮も人々の日常に溶け込んでいるのか」と驚かされたことを覚えています。

無印良品 東京有明 店長の湯崎知己さん

湯崎:同時に、「無印良品もサステナビリティを謳っているけれど、本当にできているのだろうか?」という疑問も湧きました。日本でも、生活者が当たり前に環境に配慮する暮らしを選べるようにしていかなければいけないし、直接メッセージを伝えていきたいと思ったのです。そのような想いから、帰国後は本社勤務に配属されたのですが、会社にお願いして店舗勤務にしてもらいました。

サステナビリティへの取り組みとして、私が店長を務める無印良品 東京有明は、使用済み商品の回収拠点としては無印良品のなかでも最大規模を誇ります(2025年1月時点)。さらに江東区と協力し、都内では初、民間の店舗としても初の「回収BOX」も設置し、家庭で余っている食材や古着、ペットボトル、本やCD・DVDなどの回収を受け付けています。

また、無印良品の製品を対象としたリユース・リサイクル活動ももちろん実施しています。「体にフィットするソファ」(ビーズクッション)の回収をはじめ、衣装ケース(ポリプロピレン製品)やファイルボックス(ポリエチレン製品)などのプラスチック製品については、お客さまご自身で店舗にお持ち込みいただければ無償で回収させていただき、MUJIマイルを差し上げるということもしています。

無印良品 東京有明に設けられた回収スペース

回収したプラスチック製品は、クリーニングを行い、基準をクリアしたものは中古品として再度販売。基準に満たないものは、粉砕・洗浄したあと、無印良品の商品に生まれ変わります。ほかにも東京有明の店舗に限り、ユニットシェルフの回収もしており、クリーニングして状態が健全なものはそのまま再販。ダメージが目立つものは塗装してカラーバリエーションをつけながら販売しています。

再塗装されカラフルに生まれ変わったシェルフ

リサイクルはもちろん、環境に負荷をかけず循環の輪を回していくためには、リユースに取り組むことも大切だ。無印良品 東京有明では、物々交換のようにそのまま渡せるものは渡すというやり方で、製品を長く使うための工夫をしているという。これらの取り組みのなかで、イベントはどのような役割を果たしているのだろうか。

湯崎:われわれが取り組む環境活動をより多くの生活者に知ってもらうためには、関心を持つきっかけをつくることが大切だと思っています。ただ正しいことを伝えるのではなく「楽しい、おいしい、そして正しい」という姿勢であること。そちらのほうが多くのお客さまに興味を持っていただけると思いますし、そこから「自分の生活に取り入れたらどうだろう?」「正しいことはなんだろう?」と考えていただきたいんです。

『環境をかんガエルウィーク』では、同じ目的のなかでユニークな活動をされている方々に参加していただくことで、そのような目的を果たしています。それこそ、イベントを立ち上げたばかりのころは、僕自身やスタッフのつながりで、地元の方々を中心に地道にお声かけし、参加者を募っていました。

それが回を重ねるにつれて、ありがたいことに参加者がほかの方を紹介してくださって、どんどん輪が広がっていったのです。いまでは地域を問わず、いろんな方々にお越しいただき、輪が広がっていることに嬉しさを感じています。

湯崎:今回のイベントでは、総勢24組に参加していただき、さまざまな切り口でリサイクルについて教えてくださる企画が多く、楽しみながら学べるイベントになったと思います。

また、三井化学・MOLpのプラスチックリサイクルに関するワークショップは、無印良品で回収している商品の原材料がどのようなもので、回収した先にどのようになるのかといった話に切り込んでいる点が、素材の会社ならでは。無印良品の社員にもぜひ伝えたい内容だと思いました。

僕自身も、「無印良品として、どのような売り方をすれば環境に負荷をかけないのだろうか」といったことを、現場視点で考えるきっかけにもなっていると感じます。今後もわれわれの姿勢に賛同してくださる参加者の方々と一緒に、継続してやっていきたいですね。

「100種類以上?」MOLpワークショップで学ぶプラスチックリサイクル

イベント開催中、三井化学・MOLpのブースではオリジナルグッズの販売とともに、『プラスチックリサイクルで「かんガエル」キーホルダーをつくろう!』というテーマでワークショップが行われた。

MOLpブースの様子。ワークショップでは、プラスチックがじつは植物やプラスチックごみからも製造できることや、一度製品化されたあとも熱をかけて溶かしたらまた形を変えられる「熱可塑性プラスチック」などについて説明され、参加者も熱心に耳を傾けていた

その内容は、使用済みのペットボトルキャップを使ったキーホルダーづくりを通して、楽しみながらプラスチックのリサイクルを学ぶというもの。来場者に向けたレクチャーでは、「そもそもプラスチックとはなにか」「環境とプラスチックはどのように結びついているのか」「プラスチックの種類とリサイクルの関係性」などについて話が繰り広げられた。

子どもも大人も前のめりで聞き、質問が飛び交う光景も。環境のために、プラスチックとどう向き合っていくべきか知りたいという積極的な姿勢がうかがえた。

「熱可塑性プラスチック」(ポリプロピレンやポリエチレン)でつくられているペットボトルのキャップを使い、マテリアルリサイクルを体験。射出成形機に入れ、200から250度の高温でドロドロに溶かし、型の中で冷やし固める

今回のワークショップを通して、来場者もプラスチックをより身近に感じられたようで、「プラスチックが100種類以上もあるなんて知らなかった」と驚きの声も多く寄せられた。

また、まずはプラスチック製品を長く使うこと、プラスチックの特性を理解してリサイクルすること、そして二酸化炭素排出量の削減につながるバイオマスプラスチックのメリットを知り、適材適所で最適な素材を選択することにより、正しくプラスチックと付き合っていきたいという意識の変化が生まれたようだ。

NEXT

老舗印刷所や、世界的な飲料メーカーも。
MOLpメンバーがイベントを通じて得た気づきとは

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