「無印良品はサステナブルな取り組みができているか?」東京有明 店長が語る『環境をかんガエルウィーク』への想い
気候変動をはじめ、森林破壊や海洋汚染などの影響を目の当たりにする機会が増えている。環境問題はもはや喫緊の課題となっている。その解決には、社会システムを大きく変容させることはもちろん、1人ひとりの気づきやアクションの積み重ねも必要だ。
『環境をかんガエルウィーク』は、2022年に無印良品 東京有明でスタートしたイベントだ。初回は無印良品の環境への取り組みを伝えるだけだったというが、回を重ねるごとに進化し、4回目となる今回は24組が参加する賑やかな催しとなっている。さらに東京有明では、毎年の『周年祭』や季節に合わせてテーマを設ける『四季祭』も開催し、イベントを通して環境を身近なこととして考えられるように働きかけているという。
無印良品 東京有明が、環境を考えるきっかけの場を積極的につくり続けているのはなぜか。主催者である東京有明店長の湯崎知己さんに話を聞いた。
湯崎:「環境を考える場をつくりたい」と思ったきっかけは、2015年から3年間にわたるRYOHIN KEIKAKU FRANCE S.A.S.(無印良品の運営会社・株式会社良品計画のフランス・パリ現地法人)への赴任でした。その当時から現地・パリの生活者は、環境に配慮した行動を当たり前に行っていたんです。「パリにはファッションやアートだけではなく、環境に対する配慮も人々の日常に溶け込んでいるのか」と驚かされたことを覚えています。

湯崎:同時に、「無印良品もサステナビリティを謳っているけれど、本当にできているのだろうか?」という疑問も湧きました。日本でも、生活者が当たり前に環境に配慮する暮らしを選べるようにしていかなければいけないし、直接メッセージを伝えていきたいと思ったのです。そのような想いから、帰国後は本社勤務に配属されたのですが、会社にお願いして店舗勤務にしてもらいました。
サステナビリティへの取り組みとして、私が店長を務める無印良品 東京有明は、使用済み商品の回収拠点としては無印良品のなかでも最大規模を誇ります(2025年1月時点)。さらに江東区と協力し、都内では初、民間の店舗としても初の「回収BOX」も設置し、家庭で余っている食材や古着、ペットボトル、本やCD・DVDなどの回収を受け付けています。
また、無印良品の製品を対象としたリユース・リサイクル活動ももちろん実施しています。「体にフィットするソファ」(ビーズクッション)の回収をはじめ、衣装ケース(ポリプロピレン製品)やファイルボックス(ポリエチレン製品)などのプラスチック製品については、お客さまご自身で店舗にお持ち込みいただければ無償で回収させていただき、MUJIマイルを差し上げるということもしています。

回収したプラスチック製品は、クリーニングを行い、基準をクリアしたものは中古品として再度販売。基準に満たないものは、粉砕・洗浄したあと、無印良品の商品に生まれ変わります。ほかにも東京有明の店舗に限り、ユニットシェルフの回収もしており、クリーニングして状態が健全なものはそのまま再販。ダメージが目立つものは塗装してカラーバリエーションをつけながら販売しています。

リサイクルはもちろん、環境に負荷をかけず循環の輪を回していくためには、リユースに取り組むことも大切だ。無印良品 東京有明では、物々交換のようにそのまま渡せるものは渡すというやり方で、製品を長く使うための工夫をしているという。これらの取り組みのなかで、イベントはどのような役割を果たしているのだろうか。
湯崎:われわれが取り組む環境活動をより多くの生活者に知ってもらうためには、関心を持つきっかけをつくることが大切だと思っています。ただ正しいことを伝えるのではなく「楽しい、おいしい、そして正しい」という姿勢であること。そちらのほうが多くのお客さまに興味を持っていただけると思いますし、そこから「自分の生活に取り入れたらどうだろう?」「正しいことはなんだろう?」と考えていただきたいんです。
『環境をかんガエルウィーク』では、同じ目的のなかでユニークな活動をされている方々に参加していただくことで、そのような目的を果たしています。それこそ、イベントを立ち上げたばかりのころは、僕自身やスタッフのつながりで、地元の方々を中心に地道にお声かけし、参加者を募っていました。
それが回を重ねるにつれて、ありがたいことに参加者がほかの方を紹介してくださって、どんどん輪が広がっていったのです。いまでは地域を問わず、いろんな方々にお越しいただき、輪が広がっていることに嬉しさを感じています。

湯崎:今回のイベントでは、総勢24組に参加していただき、さまざまな切り口でリサイクルについて教えてくださる企画が多く、楽しみながら学べるイベントになったと思います。
また、三井化学・MOLpのプラスチックリサイクルに関するワークショップは、無印良品で回収している商品の原材料がどのようなもので、回収した先にどのようになるのかといった話に切り込んでいる点が、素材の会社ならでは。無印良品の社員にもぜひ伝えたい内容だと思いました。
僕自身も、「無印良品として、どのような売り方をすれば環境に負荷をかけないのだろうか」といったことを、現場視点で考えるきっかけにもなっていると感じます。今後もわれわれの姿勢に賛同してくださる参加者の方々と一緒に、継続してやっていきたいですね。