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ワクワクさんこと久保田雅人×藤原麻里菜。「無駄」からはじめるサステナブル

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取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ) 写真:玉村敬太 編集:吉田真也(CINRA)

「楽しい無駄」がどんどん浸透する世の中になると良いですね(久保田)

MOLp:われわれMOLpも、三井化学の有志の社員が集まる部活的な活動なので、自分たちなりに楽しみながら素材づくりに励んでいます。今日は『MOLpCafé2021』で展示する予定の新しいアイデアの種やプロダクトをいくつか持ってきました。取材前に軽くご紹介しましたが、何か気になるものはありますか?

藤原:私は、レジ袋のアップサイクルでつくられたカラフルなパスケース。カラーバリエーションも豊富で、色の組み合わせが楽しいですね。

あと、海水のミネラルからつくられたプラスチック「NAGORI」のマウスが、陶器みたいでかっこいいなと。実際に触ってみても、肌触りがプラスチックには思えないです。「NAGORI」もいろんなカラーバリエーションがあったら良さそう。

右手に持っているのが「NAGORI」のマウス。左手には、素材の物流に使うフレコンバッグをアップサイクルしたパスケース
海水を淡水にする設備から出る濃縮水をそのまま廃棄すると、サンゴの死滅など環境に悪影響がある。それを有効活用して、新しいプラスチック素材を生み出そうと開発された「NAGORI」でつくったマウス
レジ袋をアップサイクルしたパスケースは、障がい者施設とコラボしたもの。障がいを持つ方々が一つひとつ手づくりで作成している

久保田:このパスケース、かわいいよね。あと、ぼくは余ったコーヒーの粉や茶殻、もみ殻からつくったトレーが気になりました。本当にコーヒーやお茶のにおいがするからびっくり! 静岡の老舗お茶屋さんとコラボしたら良いブランディングになるでしょうね。そういった意味では、太陽光で色が変わるコートをかけるハンガーも、アパレルブランドとコラボしたら面白そう。

コーヒーの粉や茶殻、もみ殻からつくったトレーのにおいを嗅ぐ二人
壁に設置できるコートかけ。太陽光がない場所では透明
太陽光があたると模様や色がつく

藤原:衛生タオルの「FASTAID」もめっちゃすごいと思いました。消毒液と圧縮タオルが別になっていて、使う直前に消毒液がタオルに浸透するから、新鮮さを保てるのが良いなと。コンパクトで持ち運びしやすいし、パッケージデザインもかっこいいですね。

抗ウイルス効果を得られる「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」と「圧縮タオル」を、それぞれ別室で包装した2in1パッケージを採用した「FASTAIDウイルス・スウィーパータオル」
「PUSH」と書いてある部分を押すと次亜塩素酸ナトリウムが別室の圧縮タオルに浸透し、それを取り出せばすぐに衛生タオルとして使える
サイズは大きめなので、さまざまな用途で使用可能。いつでも衛生的に使える仕様は、日常に限らず被災地での使用も想定している

久保田:たしかに、ポケットに入るから持ち運びやすいですね。あと、消毒液をタオルに浸透させるときの作業が楽しい(笑)。

MOLp:それと、サイズが大きすぎて本日は持ってこられなかったのですが「/OF(スラッシュオブ)」というプロダクトも、ぜひお二人にお見せしたかったです。「/OF」は、「スラッシュ・おじさん・周波数(frequency)」を意味するネーミング。おじさんの声の周波数だけを感じ取って、その音をカットしてくれるパネルです。

リモートワークが主流になり、カフェやオープンスペースでオンライン会議や電話をしているおじさんの声が気になる人も増えたはず。「/OF」を使った個室ブースは、そんな問題を解決してくれる

久保田:どのプロダクトも遊び心がありますね。こういう遊びみたいな試みの研究を、いろんな会社でやってほしいなと感じます。そこから、社会課題を解決するようなプロダクトが生まれるかもしれませんから。やっぱり楽しさや面白みがないと広がっていかないから、それこそ藤原さんみたいな人と組んで、「楽しい無駄」がどんどん浸透する世の中になると良いですね。

うまくいかない可能性もあるけど、失敗のなかにも発見がある(久保田)

MOLp:最後に、お二人は今回が初対面でしたが、対談をとおして何か気づきや発見はありましたか?

藤原:小さい頃から見てきた憧れの久保田さんが「無駄」を肯定してくれて、あらためて「無駄って良いことなんだな」と実感できました。

久保田:繰り返しにはりますが、ぼくも藤原さんやMOLpの方々とお話してやっぱり社会には「無駄」が必要だなと思いましたよ。最近は規制ばかりが厳しくなり、遊び心も段々となくなっている気がしていました。だから、藤原さんのような若い方が「無駄」の魅力を発信しているのは嬉しいです。無駄なことをするって、心のゆとりだからね。

藤原:たしかに。とくにいまの時代、心にゆとりを持つことは大事そうです。

久保田:少し脱線するけど、『男はつらいよ』の寅さんも、普段はぷらぷらしていて、たまに帰ってきたらタコ社長と喧嘩して……って、なんだかよくわからない人じゃないですか。現代だったら、社会的に無駄な存在と認識されてしまうかもしれない。

だけど、ぼくら世代はああいう人に憧れたんです。それは、世間に無駄な存在を認めるゆとりがあったからだと思います。いまの世の中には、あまりそういう余裕を感じないので、少しさみしいですね。

MOLp:もっと「無駄」に寛容な社会であってほしいと。

久保田:思いますね。企業や大学なんかも、もっと無駄なことに目を向けてほしい。それって、基礎研究にもいえることだと思うんですよ。

すぐ世の中に役立つものとか、目先の売上だけを追うんじゃなくて、いまは無駄なことかもしれないけど30年後や40年後に実を結ぶかもしれない。そんな研究に力を注ぐことで、より良い未来を築けるんじゃないでしょうか。ものづくりと一緒で、うまくいかない可能性もあるけど、失敗のなかにも発見があるんだから。

そういう意味で、MOLpの活動は、すごく面白いと思いますよ。こういう一見おかしなものもつくる活動の価値をちゃんと会社が認めているのは素晴らしいこと。『MOLpCafé2021』をとおして、いろんな人に素材やプロダクトの面白さを体感してもらえると良いですね。

藤原:『MOLpCafé2021』、私も楽しみにしています!

Infomation
MOLpCafe2021
開催日時:2021年7月13日(火)〜17日(土)
開催場所:ライトボックススタジオ青山&ギャラリー(※オンライン配信も検討中)
公式情報サイト:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/molpcafe2021/

PROFILE

久保田雅人MASATO KUBOTA

PROFILE

藤原麻里菜MARINA FUJIWARA

コンテンツクリエイター、文筆家、映像作家、発明家、YouTuber。1993年、横浜市生まれ。2013年からYouTubeで「無駄づくり」というチャンネルを開設し、自作の実験工作や発明を動画で投稿している。2016年、Google社主催の「YouTube Next Up」に入賞。2018年6月、国外での初個展『無用發明展-無中生有的没有用部屋in台北』を開催。2万5,000人以上の来場者を記録した。著書に『無駄なことを続けるために-ほどほどに暮らせる稼ぎ方-』(ヨシモトブックス)、『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)。
公式サイト https://fujiwaram.com/
公式YouTube https://www.youtube.com/channel/UCHFvKf-ATrhs3jbjj793N6w
公式Twitter https://twitter.com/togenkyoo
公式Instagram https://www.instagram.com/mudazukuri/

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