そざいんたびゅー

プラスチック=悪ではない。
素材の力を追求するseccaのものづくり

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「プラスチック製の食器」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょうか。使い捨てコップや無料でもらえるスプーン、100円均一の皿類などが身近かもしれません。

そうしたプラスチック製品は、地球環境を破壊する存在として問題視されています。しかし、クリエイター集団「secca」(雪花)代表取締役の上町達也(うえまちたつや)さんは「本当に悪なのはプラスチック素材ではない」と語ります。

日々の生活や仕事のなかで「素材」と向き合う人たちの考え方に触れる、連載「そざいんたびゅー」。今回は工芸とテクノロジーを組み合わせたものづくりを行なうseccaを訪問。創設者の上町さん、柳井友一(やないゆういち)さんにお話をうかがいました。

取材・執筆:榎並紀行 写真:池田ひらく 編集:生駒奨(CINRA)

カレーを美味しく美しい所作で。seccaの器の特徴とこだわり

MOLpチーム(以下、MOLp):はじめに、seccaのプロダクトについて教えてください。このギャラリーに置いてある作品だけでも、グラスやお皿、カトラリーだけでなく、スツールや楽器、アート作品まで本当に幅広いですね。

seccaオフィス内のギャラリールームに並べられているプロダクトの数々

上町達也(以下、上町):当初は器からスタートしましたが、現在は弦楽器やスピーカー、家具、さらには伝統工芸と最先端テクノロジーの技能をかけ合わせたアートやオブジェなども手がけています。

現在seccaには7人のメンバーがいて、それぞれ違う背景と職能を持っているのが特徴です。柳井のように陶芸を学んできた者、プロダクトデザイン出身の者、楽器メーカーで開発をしていた者など、それぞれのスペシャリストが得意な部分を持ち寄り、チームでものづくりをしています。

代表取締役の上町達也さん

MOLp:もともとは上町さんと柳井さんのおふたりで創業され、最初につくったのが「scoop」という器だとうかがいました。「すくいやすさを追求したテーブルウェア」というコンセプトがとてもユニークですが、あらためて特徴を教えてください。

柳井友一(以下、柳井):カレーやハヤシライスといったルーもの、ソースが多いパスタなどの料理を、より美味しく、より美しい所作で食べることを追求した器です。

取締役の柳井友一さん

柳井:普通の平たい皿の場合、カレーをすくうときにフチの部分が汚れてしまいがちですが、「scoop」は器の一部に反り返った面を設けることで最後まで綺麗に食べ切れるようになっています。

最後まですくうために皿を持ち上げる必要もないので、会話をしながらでも美しく食事を終えることができる。そんな食体験をデザインするための器ですね。器を通して「美味しくなる」ことが重要。そうでないとただの形遊びになってしまいます。

モダンなデザインの「scoop」

柳井:scoopに限らず、seccaのプロダクトは「人の心を動かす体験をいかにつくるか」が起点になっていて、「その体験をつくるインターフェースとして、物はどうあるべきか」という順序でものづくりをしています。

「職人=伝統を守る」ではない。何百年も残るものを生み出す職人のマインド

MOLp:ものづくりの拠点としての金沢の優位性はどこにあるのでしょうか?

柳井:金沢には江戸時代から加賀藩が職人を育成する御細工所があり、美術工芸政策に力を入れてきました。それは現代にも受け継がれていて、ものづくりを志す人にとっては恵まれた環境だと思います。

加賀藩御細工所の精神と役割を受け継いだ「金沢卯辰山工芸工房」があり、陶芸、漆芸、染、金工、ガラスなどさまざまな分野のつくり手がそれぞれの分野の研究に没頭することができます。その後は金沢でアトリエを構える人も多いです。

上町:そうした土壌があるため、金沢はおのずといろいろな素材を扱える職人やクリエイターが多い土地なんです。ぼくらもseccaを立ち上げる前からずっと仕事をお願いしている漆職人や金箔職人がいます。

こうした、さまざまな職人さんとつながり、一緒にものづくりができるのは金沢を拠点にする大きな利点だと思います。

MOLp:多くのものが大量に生産され、大量に消費されている現代社会とは一線を画し、ものづくりに向き合う環境が金沢にはあるんですね。seccaとしても、そういった環境を求めたということでしょうか。

上町:ぼくは決して、大量生産が悪だと考えているわけではありません。とくにインフラなど、量産が支える分野は確かにあります。しかし、それがいまの社会のように消費型のものづくりに偏るのではなく、一つひとつの物の価値を大切にする社会であってほしい。

その点、金沢の工芸作家や職人の手仕事には、一つひとつに魂が宿っていると感じます。だからこそ長く大事にされるのだと思いますし、多くの人を魅了するのではないでしょうか。ぼくたちも、ともに一度は金沢を離れて大手メーカーで働いた経験があるのですが、だからこそこの街のものづくりに深く共感しています。

MOLp:いかにテクノロジーが進歩しても、金沢のような街では職人の手仕事の価値が残り続けると。そうしたマインドや技術がほかの街にも伝播すると良いですね。

上町:そうですね。ただ、必ずしも手仕事でなくてはダメというわけでもないと思います。職人のマインドをしっかり継承し、長く愛されるものをつくる意識は持ちつつも、積極的にテクノロジーを取り入れるのは悪いことではありません。大切なのは「手仕事的」であること。テクノロジーはあくまでツールであり、扱う人の熟練した技能が必要不可欠であることは、手仕事となんら変わりはありませんから。seccaでも陶磁器などを製作する際は、3D CAD(※)やCNC(※)などのデジタルファブリケーションを活用しています。

※ 3D CAD …「3dimensions Computer Aided Design」の略。コンピューター上で3次元的にデザインや設計を行なうこと
※ CNC …「Computer Numerical Control」の略。工具の移動量や移動速度を数値で制御する加工機を指す。指示のために入力されたデータに従い、自動的に素材を加工する

MOLp:その継承すべき「職人のマインド」とは、具体的に何でしょうか?

上町:ぼくは「イノベーティブな精神」だと思っています。そもそも「伝統工芸」と呼ばれているものが生まれた背景には、過去の時代の職人たちのイノベーティブな精神があったはず。

ものづくりが好きで、誰も見たことがない何かを生み出そうと探求し、諦めずにチャレンジを重ねてきたからこそ、何百年も残るものになったのではないでしょうか。ぼくたちつくり手が最も大事にすべきなのは手法以前に、そうしたイノベーティブな精神の部分だと思います。

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