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CO2削減を商品選びの基準に。MOLpが『Earth hacksマルシェ』に出展

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2022年12月3日、4日に渋谷MIYASHITA PARKの屋上で開催された『Earth hacksマルシェ』。同年7月に二子玉川ライズで開催された初回イベントに続き、MOLpも2度目の出展をした。

イベントには、脱炭素(デカボナイゼーション)の取り組みを促進するプラットフォーム「Earth hacks」の考えに賛同した38の企業が参加した。各企業のブースでは多様な商品やサービスが展示販売され、それらの取り組みによって減ったCO2の削減率を「デカボスコア」として掲示。心躍るユニークなアイテムを見たり選んだりすることで、環境への意識も自然と高まるイベントだ。

当日はMOLpメンバーも会場内をめぐり、化学者視点と生活者視点の双方から気になるアイテムやサービスをチェック。ほかの企業の取り組みからも大きな刺激を受けた。イベントレポートとなる今回は、MOLpの出展内容の紹介だけでなく、そのほかのブースの方にうかがったお話もお届けする。さらには主催者である博報堂のミライの事業室ビジネスデザインディレクターの関根澄人さんへのインタビューも実施。Earth hacksの取り組みや、その思いを聞いた。

取材・執筆:宇治田エリ 写真:小坂奎介 編集:川谷恭平(CINRA)

地球の環境課題を「自分ごと」にするために。渋谷で「Earth hacksマルシェ」開催

世界的に「脱炭素」が求められる昨今。日本でも2050年までのカーボンニュートラルの実現に向け、2013年度から2030年度にかけて温室効果ガスの46%削減を目指している。

これにより、脱炭素のための多様な取り組みが国や企業によってなされ、生活者の環境意識も高まりつつある。しかしながら、脱炭素という大きな問題に対して、具体的にどのような取り組みを行なえば地球環境の改善につながるのか、正解を知る生活者は少ないだろう。

今回開催された『Earth hacksマルシェ』は、脱炭素という大きな問題に対して、生活者の意識改善につながる選択肢を提供する事業者の商品やサービスが紹介された。

MIYASHITA PARKの屋上で開催された『Earth hacksマルシェ』。「Earth hacks」とは、2022年1月に三井物産、博報堂、SIGNINGの3社共同でスタートしたオンラインプラットフォーム

本ベントの各ブースで商品と並んで掲げられたのが「デカボスコア」というCO2e(※)削減率を示す看板。これは三井物産がCO2排出量の削減に取り組む、スウェーデンのインパクトテック企業Doconomy社とタッグを組み、「CO2相当量の削減率」を可視化した指標だ。「デカボスコア」を知ることで、消費者が環境課題について知るきっかけが生まれたら、という願いが込められている。

※ 「CO2e」は「CO2 equivalent」の略で、地球温暖化に影響を与えるさまざまな温室効果ガスを二酸化炭素に換算した量

消費者は実際に商品やサービスに触れ、担当者からその取り組みの内容や魅力、ストーリーを直に知ることができる。会場が渋谷ということもあり、休日の2日間は若者を中心に多様なライフスタイルを送る人たちが訪れた。

MOLpのブースに掲げられたデカボスコア

MOLpのデカボスコアは67%。どうやってCO2を削減した?

MOLpからは、海水のミネラルから生まれた新素材「NAGORI®」を使用した、天然石のような質感の新作トレイや、RePLAYER®アップサイクルシリーズのFlecon Tote Bagとパスケースを展示販売(「MOLp OMLINE STORE」でも購入可能)。

そのなかで、大阪の障がい者就労継続支援事業所「オーロラ」と協働し、廃棄されるレジ袋を熱で何層にも張り合わせてつくった「世界に1つ」のアップサイクル・パスケースは、デカボスコア「67%off」という結果が出た。

レジ袋をアップサイクルしたパスケース。詳細はこちら
産業用フレキシブルコンテナをアップサイクルしたトートバッグ。詳細はこちら

67%offという数値は、従来のポリエステルからパスケースをつくった場合、0.03kgCO2eとなるところ、不要なレジ袋(ポリエチレン)をアップサイクルしてつくることで0.01kgCO2eまでCO2が削減できることを示している。

また、パスケースで使用する材料や道具はレジ袋とアイロン、裁縫道具など、一般家庭でも用意できるものばかり。買い物をしたときにもらう使い捨てのレジ袋を、素材の視点から見立てを変えて長く使えるものへと変えていく「RePLAYER®」の概念を具現化している。それぞれが世界にたった1つだけのアイテムになっていることも特徴だ。

小物から、家具、バッグまで。MOLpメンバーが注目したアイテムとは?

イベント開催中、MOLpメンバーたちもほかの企業の展示を見てまわった。さまざまな企業の取り組みのなかから、MOLpメンバーの奈木沙織が見つけた「すてきなアイテム」について紹介しながら、各ブースの担当者にも話を聞いた。

プラスチックブロー成形のパイオニア・本多プラス社(本社・愛知県)が運営するブランド「ame」のブース

まず向かったのは、「ame(アメ)」というリサイクルプラスチックを用いたクラフトブランドの展示ブース。広報を担当する瀬口さやかさんに話をうかがった。

奈木:こちらの雑貨やアクセサリーは、プラスチック製品でありながら、まるでガラスの工芸作品のように手づくりのあたたかみを感じます。

また、ブランド名の「ame」は、雨に由来しているので、成形品の形状を靄(もや)や露(つゆ)、雫(しずく)など、雨冠のつく言葉になぞらえています。そのような細部へのこだわりも含め、美しいと感じました。

「ameのカケラ ピアス・イヤリング」
「靄-MOYA- ティッシュケース」(中央)

瀬口:ありがとうございます。「ame」は、雨が自然界を循環するサイクルと、リサイクルの過程を重ね合わせて名づけられました。

「技術と感性のコラボレーション」をテーマにお客さまのイメージをかたちにしてきた本多プラス(愛知県に本社を置くプラスチック成形メーカー)の特技を活かしながら、作家ものの作品を選ぶときのような、より特別感のあるアイテムを生み出すことを心がけています。

奈木:たしかに、最初に「靄-MOYA- ティッシュケース」を見たときはガラスのようにクリアな質感で驚きました。これらのアイテムは廃棄プラスチックを活用されているのですね。

瀬口:はい。自社の製造工程で生じるプラスチック端材などを使用してつくられています。不純物の混ざっていない状態で製造しているので、透明度を高く保つことができています。さらにあえて気泡を入れたり、有機的な形状のデザインにしたりすることで、いままでにないプラスチックの美しさを引き出しています。

「時の雨 オブジェS」

奈木:見れば見るほど、どうやってつくっているのか気になりますね……。

瀬口:それは企業秘密ですね(笑)。ちなみに「靄-MOYA- ティッシュケース」のデカボスコアは37%OFFとなっています。

奈木:詳細を見ると、新しいPET樹脂からつくった場合のCO2eが2.54kgCO2eで、そこから1.60kgCO2eまで低減できていて、しっかりと脱炭素に取り組めていることもわかりますね!

NEXT

「オフ表記」で生活への浸透を目指すデカボスコア。
廃ビーズやテント生地のアップサイクルも

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