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CO2削減を商品選びの基準に。MOLpが『Earth hacksマルシェ』に出展

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取材・執筆:宇治田エリ 写真:小坂奎介 編集:川谷恭平(CINRA)

処分が大変なビーズクッション。粒を活かしたでデザインでアップサイクル

50年近く縫製事業を続けるタキコウ縫製(本社・愛知県)が運営する「hanalolo(ハナロロ)」

続いて向かったのは、「hanalolo(ハナロロ)」というビーズクッションブランドの展示ブース。ビーズクッションのなかの発泡ビーズや、綿クッションのなかのシリコン綿を原料から製造している。どのようにデカボに取り組んでいるのか、担当の滝川昇吾さんに話を聞いた。

滝川:ビーズクッションをご愛用していただいている方から「ビーズクッションを買い替えるとき、古いものを処分するのに苦労した」というご意見をいただいてきました。

そこで処分方法を調べてみると、自治体によって処分のルールが異なり、地域によってはかなりの手間がかかることがわかりました。こうした課題を解決するために、2021年から「SDBs活動(※)」の一環としてスタートしたのが、使用済みビーズクッションの無料回収です。回収したビーズクッションは廃棄せずに、リサイクルすることでグリーンポケット(植木鉢)」やサーフボードに生まれ変わります。

奈木:ただの発泡スチロールではなく、ランダムにカラフルな粒が入っていておしゃれです。

※ タキコウ縫製が、ハナロロブランドを通じて行うSDGs活動の総称

「SDBsサーフボード」
「SDBsグリーンポケット(植木鉢)」

滝川:ほかにも、Hanaloloでは「SDGsこどもチャレンジ」といって全国のサーファー仲間と子どもたちに協力を仰ぎ、海に落ちている発泡スチロールごみの回収を行なうイベントも開催しています。

奈木:一般の消費者を巻き込むことで環境意識が高まり、脱炭素も自分ごととしてとらえることができそうですね。今回デカボスコアを出したアイテムについても教えてください。

滝川:「グアテマラデニムオニオン」という商品です。こちらのカバーは、グアテマラのアップサイクルプロジェクト「THE NEW PROJECT®」のデニム生地を活用し、廃ビーズのリサイクルと合わせてデカボスコアが23%OFF。通常のコットンを使用したカバーに比べ、9.89kgCO2eが削減できます。また、端切れの布でミニビーズクッションもつくっているんですよ。

グアテマラデニムオニオン
端切れの布でつくったミニビーズクッション

奈木:馴染み深いビーズクッションだからこそ、買い換えるときのことまで考えて購入することが大切だと気づかされました!

規格外のテント材をバッグの生地に使用。CO2と廃棄の削減に貢献する

泉株式会社(本社・大阪府)が手掛けるプロジェクト「SUSTAINABLE.Labo(サスティナブル・ラボ)」

最後に訪れたのは、つい手にとりたくなるデザイン性の高いバッグが並ぶ「SUSTAINABLE.Labo(サスティナブル・ラボ)」。SDGsや地球環境問題に対応していく基幹チームとして、新規開発に力を入れているという。担当の田村浩輝さんに話を聞いた。

田村:私たちが主に取り扱うのは、喫茶店のテラスに使われるオーニングや、日除け用のメッシュなど、膜材と呼ばれる高機能なテントです。

テント膜の製造過程では部分的な傷や汚れがロスとなり、生産すればするほどロスがたまって行きます。そういった部分的なダメージのせいで使えなくなってしまった生地を救済すべく、「SUSTAINABLE.Labo」の活動が始まりました。

奈木:すでに多様な種類のバッグが登場しているのですね。

田村:はい。三角形のマークがついているのが、規格外になったテント生地を使用してつくった「Ian」というバッグです。それ以外に、自動車用のシートベルトを生産するときに出る端材の活用に取り組む東海理化さんのブランド「Think Scrap」とのコラボバッグも今回は特別に展示販売しています。

規格外となったテント生地を活用した「lan」
テントとシートベルトを組み合わせた「Think Scrap」のラウンドトート
「Think Scrap」のクリアミニトート

奈木:テント生地と車のシートベルトは、どちらも非常にタフな素材。異なるシーンで使われる2つの素材がコラボレーションすることで、ほかにはないユニークなアイテムになっているのが魅力的ですね。

田村:ありがとうございます。ちなみに「Ian」のデカボスコアは、新しい生地を使用するよりも7%OFFという結果が出ました。一見少ない数字ではありますが、テント生地は雨風や紫外線にさらされても、長いもので10年は持ちます。長く使えるアイテムとして、ぜひ取り入れてみてほしいですね。

奈木:「SUSTAINABLE.Labo」がこれからどのように発展していくかも気になります!

田村:そうですね。今回いらっしゃるお客さまが多様なだけではなく、いろんな業種の方が集まっているため私たちもたくさんの刺激をいただいています。廃棄を減らすための出口を見つけていくために、柔軟に他企業ともコラボしていきたいです。

環境にいいことを、もっと気軽に。主催者に聞く「デカボ」の取り組み方

見どころ満載だった今回の『Earth hacksマルシェ』。同日の別会場では、脱炭素社会の実現に向けて、企業と130人の学生による共創ビジネスコンテストプログラム「Earth hacksデカボチャレンジ2022」も開催された。

グランプリに輝いた、みずほ銀行チームは、節約した分のお金が自動的に投資に振り向けられる仕組みを考案(写真提供:Earth hack)

これらの取り組みをとおして、Earth hacksはどのような未来の実現を目指しているのだろうか? 最後に、主催者である関根さんに今後にかける思いを聞いた。

博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザインディレクターの関根澄人さん

関根:生活者の脱炭素のイメージを、「自分とは縁遠いこと」から「気軽に取り組めること」へと変えるためには、まずは商品やサービス自体が魅力的である必要があります。それに「環境にいい」という価値が加わることで、無理なく楽しく取り入れられると考えています。

Earth hacksとしては、一人ひとりが脱炭素に楽しく取り組むためには、「生活者視点」を徹底することが必要不可欠だと考えています。

だからこそ、企業やブランド単位のCO2削減量では消費者が体感しにくいので、商品一つひとつにデカボスコア算出する方法を立て「〇〇%オフ」と表記することにしました。「オフ」の表記は、カロリーオフや糖質オフといったワードから、私たちの生活になじみやく、ポジティブにとらえやすい。脱炭素がもっと親しみやすいものになることを狙って考えました。

このようにツールとしてデカボスコアを活用することで、もっと魅力的で、応援したくなるようなストーリーを持った商品と出会う機会が増えたらいいですよね。

さらに、魅力的に感じた商品の取り組みを知り、その商品を自分が購入することでどれだけ地球にいいことができたかという実感も湧くと考えています。

日本では、2030年までにCO2排出量を46%削減することを目標としているが、今回のマルシェで提示されていたように、デカボスコアをその目標と照らし合わせることで、自分たちの消費行動がどれだけCO2排出量の削減につながっているか実感できた。

今後、Earth hacksに参加する企業はますます増えていくだろう。2回連続の出展となったMOLpには、Earth hacksを運営する側として何を期待するのだろうか。

関根:「Earth hacksマルシェ」を開催するうえでも、Earth hacksを運営するうえでも、素材の会社としてゼロからものづくりができる三井化学の存在は非常に重要だと考えています。

マルシェの場合は、参加していただくことで生活者にこれからの脱炭素への可能性をより感じてもらえると思いますし、Earth hacksでも参加するほかの企業にいい影響が与えられるはず。

そしてMOLpとしても社会性や機能性、そして感性を追求する姿勢を持っていて、ストーリーもしっかりある。まさにぼくらが求めている存在として、頼もしさを感じています。

「Earth hackマルシェ」に参加して得た気づき

2022年4月には、三井化学はカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー社会の実現を加速させるため、「RePLAYER®」と「BePLAYER®」という2つのブランドを立ち上げたばかり。

「素材の素材まで考える」「世界を素(もと)から変えていく」をキーメッセージに、RePLAYER®はサーキュラーエコノミーの実現のために、廃プラ等の廃棄物を資源と捉え、再利用していく取り組み。

BePLAYER®はカーボンニュートラルを目指して社会のバイオマス化を進めている。たとえば、使用済みの食用油などから生成されたバイオマスナフサを原料に、プラスチック素材を生み出している。

このアプローチにより、素材自体の品質を大きく変えてしまう従来のバイオプラスチックと異なり、石油由来プラスチックと同品質のバイオマスプラスチックをつくることができるようになっている(詳細はこちら)。

今回の『Earh hackマルシェ』の実践は、「改プラスチック」を考えるうえでもヒントになるだろう。人々の意識そのものや行動を変えていくことはどうしても時間がかかるもの。だからこそ、まずは現状を知り、知識を広げ、暮らし方の意識を変えていく必要がある。

そのスピードを加速させるためには、やはり生活者に「魅力的だ」と感じてもらう必要がある。そこから知識を広げていくことで、人々の暮らし方の意識を変え、最終的には行動変容につなげていくことができるはずだ。

「BePLAYERーRePLAYER」のブランドムービー