そざいんたびゅー

いつの時代も「革」が人を魅了する理由。
土屋鞄が考える革素材の魅力と可能性

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多くの人に親しまれる素材である革。贈り物に革小物を選んだり、革靴や鞄の経年変化を楽しんだりしている、という人も多いのでは。しかし近年は代替素材の開発も進むなど、そのあり方に変化が見られます。

そんななか、「時を超えて愛される価値をつくる。」をミッションにモノづくりを続けているのが「土屋鞄製造所(以下、土屋鞄)」。1965年の創業以来、いまも職人たちが革をはじめとした素材と向き合い、顧客のニーズに合わせたプロダクト制作を続けています。

日々の生活や仕事のなかで「素材」と向き合う人たちの考え方に触れる、連載「そざいんたびゅー」。今回はプラスチックからすると憧れの素材のひとつでもある革。土屋鞄で商品企画室長を務める鬼木めぐみさんにお話をうかがいました。土屋鞄の考える革素材の魅力、モノづくりの未来とは? 革の魅力だけでなく、モノづくりから販売まで一気通貫した心意気のようなものはあらゆるビジネスに通じるものを感じました。

取材・執筆:石塚振 写真:タケシタトモヒロ 編集:生駒奨(CINRA)

職人の意志が顧客に届き、顧客の声が職人に届く。58年続くクラフトマンシップの裏側

MOLpチーム(以下、MOLp):あらためて、土屋鞄のメーカーとしての特徴を教えてください。

鬼木めぐみ(以下、鬼木):モノづくりや製品に対して、制作背景や思いをお客さまにまでダイレクトに伝えていく体制を取っているのが土屋鞄の特徴のひとつです。現会長の土屋國男が腕一本で始めたモノづくりの会社という背景も影響しています。

企画・デザインはもちろん、生産や販促、クリエイティブ制作、PR、店舗など、各領域で専門性の高いチームを社内で抱えることで、どのタッチポイントでもお客さまに「土屋鞄らしさ」を感じていただけるようにしています。

土屋鞄製造所 商品企画室長の鬼木めぐみさん

鬼木:また、社内に職人を抱えているのも土屋鞄ならではかな、と思います。現在、自社工房が東京の西新井と長野県の軽井沢、佐久の3箇所にあり、私たちも現場を実際に見たり、職人さんとよく会話をしています。

そうして感じた現場の空気感やモノづくりの裏側を、店舗などを通じてお客さまにまで届けることができるのは強みのひとつかな、と。

MOLp:逆に、お客さまからの声が職人の方の耳に届くこともあるのでしょうか?

鬼木:あります。土屋鞄では職人による修理のサービスを行なっているのですが、お客さまから届いた修理品から得られる情報はとくに多いな、と思っています。

例えば、お客さまが使っていくなかでの革の変化であったり、「製品のここが壊れやすい」という声であったり。次の商品開発におけるヒントや課題になっています。

MOLp:修理サービスはいつごろからスタートしたのでしょうか?

鬼木:正確な年数を思い出せないくらい前からスタートしていますね。もともと、1965年にランドセルメーカーとして創業しているなかで、6年間ランドセルを使ってもらうため、といった考えから始まっています。その後、大人向けの鞄でも自然と修理体制を取るようになっていきました。

「理屈を超えた良さ」がある。向き合い続けたからこそわかる、「革」という素材の魅力

MOLp:創業してから、ずっと革製品をつくり続けているのでしょうか?

鬼木:はい。ただ、革を軸としながらも、コットンキャンバスやナイロン、人工皮革の製品などもつくっています。機能や用途に応じて、お客さまの選択肢として用意する、といった考えが背景にあります。

例えば、土屋鞄のランドセルは牛革素材のものがメインですが、「クラリーノ」という人工皮革の素材を使うことで、牛革のランドセルよりも圧倒的に軽量化できる。「土屋鞄のランドセルが欲しいけど、本革製は重くて疲れてしまう」といったお客さまへの選択肢としてつくっています。

鬼木:ほかにも、自社で運営している「grirose(グリローズ)」というランドセルブランドはメインターゲットが女の子ということもあり、軽量化でき、かつテクスチャーも幅が出る人工皮革を全製品に使用しています。

MOLp:さまざまな素材を顧客のニーズに合わせて使い分けているんですね。もちろん、変わらず革製品もつくり続けていて、革へのこだわりも強くお持ちだと思います。あらためて、革にはどういった魅力があるのでしょうか?

鬼木:まずひとつが、革は経年変化が非常にポジティブな素材であるということです。使い込むほどに色ツヤが増したり、馴染んだりと、変化の表現に愛着を持つことができます。「ボロボロ」「使い古されている」といった感じをあまり受けないのは、ほかの素材と比べてもあまりない特徴なのかなと思います。

革は原皮の種類やなめし方、染色方法、加工方法によってさまざまな風合いや表情に仕上がりますが、使う人の個性によっても全然違う表情に育っていきます。長く使えて、変化をするといった点はお客さまとのコミュニケーションが長く続くという点でも良いことだと受けとめています。

鬼木さん自身が使用するカードケース。本人は「まだまだ馴染んでいない」と語るが、ところどころに光沢感が現れている

また、感覚的ではありますが、革には独特の温度感もある。革のどこが良いのかは、科学的に分析できる点もあると思いますが、「なんか良いよね」といった理屈を超えた魅力もあるように思っています。

革の魅力を最大限に引き出すために。土屋鞄が「職人の精神」を重視する理由

MOLp:そうした魅力を持つ革を扱ううえで、大切にしていることはありますか?

鬼木:言語化は難しいですが、土屋会長の言葉である「本物をつくることが重要」というモノづくりの姿勢は大切にしています。

「本物」とは、品格があり、使いやすくて、美しいモノのこと。創業時からつくっているランドセルはもちろん、土屋鞄のすべての製品には、この「本物」の要素が入っているべきだと考えています。

MOLp:創業時の精神がいまも受け継がれているのですね。

鬼木:新卒採用も増え、会社のあり方は時代とともに変化していますが、昔ながらのモノづくりに対する精神や思いは残り続けているし、それが会社の土壌になっています。とくに職人の方々の意識は高く、針一本の落とし方などにも受け継がれています。

土屋会長はいまも工房を毎日周り、ときにはアドバイスをしたり、元気がない人には声をかけたりと、職人たちと会話しています。そのことも、モノづくりの姿勢が浸透している要因のひとつかもしれません。

鬼木:さらには、そうした環境下で成長した職人たちのキャリアが多岐に渡っていることもあります。現在、役員をはじめ、商品企画や生産管理など、あらゆるポジションに現場を良く知る職人出身の方が就いています。

モノづくりを実際に手掛けてきた職人が、社内のさまざまなチームや地位にいることも、「モノづくりの精神」を社内に浸透させている要素だと思います。

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