ベーシック&グリーン・
マテリアルズ

事業本部長メッセージ

グループの強みとしての大きな役割を認識し、今後の変革を
リードしていきます。

常務執行役員 ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部長 吉住 文男

常務執行役員
ベーシック&グリーン・
マテリアルズ事業本部長

吉住 文男

ベーシック&グリーン・マテリアルズ コア営業利益・ROICの目標

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当事業本部の役割

従来の基盤素材事業にグリーンケミカル事業推進室を加え、ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業として新たな体制となった当事業本部では、石化・基礎化学品をはじめとして生活のあらゆる領域に関わる幅広い製品に不可欠な素材を提供しています。「経済」という用語の発祥として「経世済民、世を治め、民を救うこと」とあるように、社会課題の解決に取り組むことが、経済の一翼を担う企業の本質であるとすれば、当事業本部にとっては製品を安定して供給し続けることこそが、生活者のQOLや利便性を維持し、様々な社会課題の解決に直結することだと私は考えています。また、当事業本部においてグローバルでもトップクラスの競争力を有するナフサクラッカーを保有していることが、三井化学グループの特長にもなっています。ナフサクラッカーで製造する化学素材は、三井化学の成長領域であるライフ&ヘルスケア、モビリティ、そしてICTで提供する製品の素材として不可欠なものですが、このようにバリューチェーンの上流から下流まで一貫して持っていることによって、コストコントロール、安定供給、製品安全性の担保に加え技術開発の側面などにおいてメリットがあり大きな強みと言えます。

一方で、喫緊の社会課題である自然環境の観点から見たとき、当事業本部の排出するCO2は三井化学グループ全体の約7割を占めており、カーボンニュートラルを実現する上で非常に大きな責任を担う事業であることも事実です。また、当事業本部で生産する基礎原料は付加価値がつきづらいものも多く、市況に左右されやすいボラティリティの課題もあります。こうした三井化学グループとしての強みと課題を表裏一体として抱えているのが当事業本部の特徴であると言えます。

グループの変革をリードし、持続可能な価値を実現する

上記を踏まえ、当事業本部では、事業再構築によるボラティリティ低減、ダウンフロー強化を通じた高機能・ニッチ品の拡大を進めており、それらと並行してグリーンケミカル事業の拡大を目指しています。また、大きな機会損失につながりうるプラントのトラブルについては、DXも活用することで未然に防ぐ取り組みを進めています。ダウンフロー強化については、高機能PPプラントの新設や高機能MDIの増強が決定しており、高付加価値製品のラインナップ強化を見込んでいることに加え、連結子会社化した本州化学工業(株)への当社の技術・人材等の資源投入による生産技術支援・生産最適化などを進めており、今後さらなるシナジー効果の発現を期待しています。グリーンケミカル事業の推進においては、他社との連携によるバイオマス原料への転換や、マテリアルリサイクルなどクラッカーを持つ三井化学ならではの取り組みを進めており、さらに各事業本部のグリーンケミカル事業に関する情報を集約・共有することで、全社レベルでの事業拡大を効率的に進めています。バイオマス誘導品についてはすでに欧州化学メーカーを中心に引き合いがきており、今後の市場拡大が見込まれます。

2025年近傍には400億円のコア営業利益およびROIC7%の目標を掲げていますが、生産設備の合理化・高付加価値化および本州化学とのシナジー効果が今後効果を発揮し、目標を達成したいと考えています。また、Blue Value®・Rose Value®製品の売上収益比率向上や、カーボンニュートラルといった目標に対しても、今後バイオナフサ関連の製品が拡大していくことで大きく達成に貢献することを期待しています。

前述した通り、当事業本部は三井化学グループの強みと課題を併せ持っており、特にクラッカーの保有については様々なご意見を頂戴することも事実です。しかし、バリューチェーンの川上に位置する当事業本部の存在は当社グループの特長であり、製品の安定供給やバリューチェーン全体における高付加価値化といった持続可能な価値を実現できる強みであるという点を、若い世代の従業員も含めて再認識し、痛みを恐れず変革を実行することで社会の期待にしっかりと応えていく、そうした覚悟を持って事業を推進していく所存です。

Blue Value® ・Rose Value®製品の状況

特長ある触媒・樹脂設計技術を活かし、これまで、エボリュー®、Nextyol™などのBlue Value®、Rose Value®製品を拡大してきました。2021年度は新たにバイオマス原料由来のエコニコール®の新用途をBlue Value®に認定、ハイゼックス®、ネオゼックス®、プライムポリプロ®、アクトコール®をRose Value®に認定しました。石油原料由来の石化・基礎化学品については、今後当社グループのプラスチック戦略に沿ってバイオマス原料への転換を推進することにより、Blue Value®製品を拡充し、サプライチェーンを通じたGHG排出量の削減に貢献していきます。

売上収益および売上収益比率の推移
売上収益および売上収益比率の推移 図

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プロダクトポートフォリオ変革およびダウンフロー強化・拡大の取り組み

ポートフォリオ変革による事業再構築の取り組みは、すでに設備停止や工場閉鎖等のダウンサイジングが完了していることに加え、新たにPTA事業の国内生産設備の停止・撤退を決定しました。また、PH事業においてはシンガポールの製造・販売会社の株式譲渡を決定しました。ウレタン事業についても、他社との新規アライアンス検討を含め現在再構築を推進しています。

ダウンフロー強化については、高機能PPにおいてプラントのスクラップ&ビルド計画を進めており、新プラントでは自動車材用途等での軽量化・薄肉化や、マテリアルリサイクルに貢献する高機能PPの生産を2024年11月より開始する予定である一方、需給バランスの最適化を図るため2023年1月には姉崎工場1PPプラントを停止することを決定しています。それにより、大幅な合理化、省エネにより7万t/年のGHGを削減します。

高機能MDIにおいては、61万t/年へと能力増強した韓国MDIが2024年7月に稼働を開始します。これにより、自動車分野における高機能シート(乗り心地改善)やNVH(ノイズ、振動、乗り心地)材などの品質要求の高まりに応じた開発をタイムリーに推進するとともに、CASE(Coating、Adhesive、Sealant、Elastomer)などの非自動車材の用途開拓を進めていきます。

さらに2021年10月に連結子会社化した本州化学工業(株)については、当社グループの技術、情報、人材等の経営資源を投入することで、既存プラントの生産性向上やプラント新設の検討を実施し一定の成果を上げています。今後は、有機合成技術を軸としたアロマ誘導品を拡充し、ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部のダウンフロー強化とリンクさせることに加え、ICTやヘルスケア領域とのシナジー発揮による新製品・新事業創出につなげていきます。

ポートフォリオ変革で安定利益確保 図

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ダウンフロー強化・拡大 図

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シナジー効果の早期発見 図

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グリーンケミカルの事業化を加速

当事業本部では、2022年4月にグリーンケミカル事業推進室を新設し、全社のサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルへの転換をリードする体制が整いました。今後各事業本部のグリーンケミカル事業に関する情報を共有し、全社の関係部署と連携することで、グリーンケミカル事業の推進を加速します。クラッカーから多様な化学品・各種ポリマーに至る、当事業本部の有する事業・設備基盤を活かし、バイオマス原料やプラスチックリサイクル、CCU等の幅広い分野での事業化を目指します。

バイオマス原料への取り組みとしては、2021年にフィンランドNeste社との提携により、日本で初めてバイオナフサを導入しました。国内外の顧客からの関心も高く、2022年10月には3ロット目の投入を予定しています。今後は他工場においてもISCC認証*の取得を進め、バイオマス製品の拡充を図っていくとともに、バイオ原料の多様化や他社との提携も検討しています。

また、当事業本部では、カーボンニュートラルへの取り組みとして、クラッカーの燃料転換を推進しています。従来のメタンからクリーンアンモニアへの転換を実現することで、燃焼時のCO2排出量低減を目指しており、2026年までにアンモニアバーナーおよび試験炉の開発、2030年には実証炉の開発・運転開始を予定しています。

廃プラスチックをプラスチック製品として再利用するマテリアルリサイクルについては、J-CEP(ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ)への参画や、自治体やブランドオーナーとの連携を通じて、すでにパッケージング分野の機能性フィルム・シートなど他事業本部の持つ製品での実証実験が立ち上がっています。また、廃プラスチックの化学原料へのリサイクルを可能とするケミカルリサイクルについては、BASFジャパン(株)やマイクロ波化学(株)をはじめとした優位な技術を有する他社との連携を積極的に進めており、社会実装の早期化を目指しています。

* International Sustainability & Carbon Certification

バイオマス原料の調達拡大に向けて

当社グループは、バイオマスナフサの原料となる廃食用油で東南アジア・中国地域最大の集荷・販売会社であるApeiron AgroCommodities Pte. Ltd.へ2022年6月に出資しました。カーボンニュートラル社会の実現に向けて世界規模で石油由来からバイオマス由来への原燃料転換を推進する動きが加速していますが、バイオマス原料は需要の伸びに対して供給が限定的なため、今後ますます調達競争の激化が予想されます。主なバイオマス原料には様々な種類がありますが、廃食用油はもっともGHG削減貢献量の大きなバイオマス原料です。また、非可食である点から食糧問題と競合することもありません。今後もバイオマス原料の安定調達を行い、カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきます。