CONCEPT
バイオナフサとカーボンニュートラルな未来
03
三井化学と拓く
バイオマスな暮らし

現代の豊かな物質社会は、地球の資源を活用し、獲得してきた賜物です。その一方で、過剰な物質社会によって環境や社会に負荷がかかり、さまざまな問題も生じています。豊かな暮らしを維持しつつ、環境・社会の課題解決の端緒となるバイオマス化。三井化学は素材のバイオマス化に挑戦していきます。

豊かな暮らしを支えるプラスチック

見回せば、私たちの暮らしはプラスチックに囲まれています。ありとあらゆるものに姿を変え、豊かな現代社会を支えてきました。

熱や薬品に強く、軽くてしなやか……プラスチックと一口に言ってもさまざまなプラスチック素材があり、それらは暮らしに必要な性質・性能に合わせて、最適なプラスチック素材が選ばれ、使用されています。

卑近なところで言えば、コロナ禍の現代、生活必需品となりつつある不織布マスクや消毒剤のボトル。これらはプラスチックでできています。テレワーク環境を見渡しても、パソコンやマウス、イヤホン、ペンや消しゴム、今着ている服もプラスチックでできています。クルマや家、朝起きてから夜寝るまで、毎日の生活でプラスチックに触れない日はありません。

見えないところにもプラスチック製品は使用されています。それこそ様々な製品を生み出す工場の生産機械の内部にも、プラスチック部品は存在します。

現代社会はプラスチックによって維持されている―――プラスチックがなければこの豊かな社会は実現できなかったと言えるでしょう。しかしこのプラスチックが今、大きな社会問題や地球環境問題を引き起こしている一因となっていることも事実です。

大量生産に適した素材だから広く社会に浸透し、豊かな社会を形作る重要な役割を果たしてきましたが、ごみ問題、海洋プラごみ、マイクロプラスチック問題や、石油という枯渇性資源の利用とCO2の多量排出という大きな課題に直面しています。プラスチックも大きく変わらなければならないタイミングに来ています。

化学の力で社会課題を解決する、それが三井化学のミッションです

三井化学の歴史は化学の力による社会課題解決の歴史です。

先述したように、三井化学は1912年、石炭コークスの副生ガスから日本で初めて化学肥料を作り出したことが起源です。当時は人口の大ボーナス期にあったため、食料不足が大きな社会課題でした。そこで不要であった石炭コークスの副生ガスから化学肥料を製造することで、資源の有効利用とともに農業の生産性向上に貢献しました。

また、1932年の日本初のインジゴの開発は、作付けの急減及び第1次世界大戦により藍の輸入が途絶える中、「ジャパン・ブルー」とも言われた日本の藍色文化を存続するべく開発され、第2次世界大戦時の食料生産優先のための藍栽培禁止令が出される状況においても日本の藍色文化存続に貢献しました。1958年の日本初の石油化学コンビナート建設、日本初のポリエチレン製造や、ポリプロピレン製造は日本の工業化・近代化に貢献しました。

そして今大きく立ちはだかる地球温暖化という課題についても、化学の力で率先して解決に導くことが、わたしたち三井化学に課せられたミッションです。再生可能資源を活用して社会のバイオマス化を推進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する、それがわたしたちの目指す姿です。

そこで、2021年12月より、一部からではありますがプラスチック製造の原料となる石油由来ナフサをバイオマスナフサへと切り替えを始めています。

例えば、今回導入したフィンランドのNeste社のバイオマスナフサは、植物などから作られた食用油の廃棄油や残渣(ざんさ)油を原料に製造されています。つまり、バイオマスナフサ自体がリサイクルされたリニューアブル、サーキュラーなものでもあります。

バイオマスナフサを使用することで、プラスチックのライフサイクルにおけるCO2排出量は、石油由来ナフサを使ったときと比較して大きく削減されることになります。

バイオマスナフサによる社会のバイオマス化推進による大幅なCO2削減---これが三井化学が思う「人々の暮らしの足元からカーボンニュートラル実現に貢献していく、素材メーカーの在り方」だと考えます。

品質は既存品とほぼ同等―――三井化学の「改プラスチック」への道筋

バイオマスナフサからのバイオマス化学品・プラスチックの提供には多くのメリットがあります。従来のバイオマスプラスチック(セグリゲーション方式)は、そもそものプラスチックの種類が異なるため、品質が異なりました。そのため、品質を揃えるための技術的検討や処方検討に多くの時間が掛かるため、なかなか普及してきませんでした。

また素材メーカー側としても新規製法やプロセスの開発、多額の設備投資が必要になるため、実行が難しいものでした。

そこで私たち三井化学は、プラスチック・化学品を作っていく際の最も上流の原料に、石油由来ではないバイオマスナフサを導入することで、そこから生み出される基礎化学品をバイオマス化し、またそれらから作りだされるプラスチック・化学品も同様にバイオマス化されるという流れを作り、従来と全く同等の機能性を保持したバイオマスプラスチック・化学品が作れることに着目しました。

加工性や機能などは同等のため、既存品からバイオマス化への転換が容易に運べると考えたからです。

具体的には、バイオマスナフサはあらゆるプラスチック・化学品を生み出す心臓部であるエチレンプラント(クラッカー)に投入されます。そこでは、エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎化学品が製造され、それらのバイオマス基礎化学品をもとに、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂、接着剤などの原料となるフェノールを製造しています。

このように素材の素材をバイオマス化することにより、より多くの製品のバイオマス化が可能になるのです。素材の素材から考え、世界を素から変えていくことで、脱プラスチックではない“改プラスチック”への道筋を作りだしていきます。

ポリプロピレンのバイオマス化も着実に進行中

また、世界でも日本でも最も多く使われているプラスチックの一つであるポリプロピレンのバイオマス化も進めています。

ポリプロピレンはその使いやすさや機能、価格の観点から最も使用されているプラスチックの一つですが、セグリゲーション方式でのバイオマス化は技術的にもコスト的にも課題が大きく、なかなか進んでこなかったのが実態です。

今回、バイオマスナフサによるマスバランスアプローチにより、様々な用途で使用されるポリプロピレンのバイオマス化を実現し、社会のバイオマス化を一気に押し進めることができると期待しています。

既に他の素材でもバイオマス化に向けたプロジェクトが大きく動き出しています。

社会のバイオマス化を後押しするマスバランス方式

今回のバイオマスナフサ導入に際し、バイオマスの認証制度の一つとして欧州で広く採用されているISCC PLUS認証(International Sustainability and Carbon Certification)を取得しました。

ISCC PLUS認証とは国際持続可能性カーボン認証の略称で、バイオマスやリサイクル原料の持続可能性認証プログラムのこと。世界中で適用される認証スキームとして策定されています。

この認証を、素材を提供する三井化学が取得し、マスバランス方式(物質収支方式)によってバイオマス認証を取得した素材として割り当て、サプライチェーンに提供することは、複雑な生産工程を持つ化学産業のバイオマス化を推進させる原動力になります。

この方式は複雑な原料体系と誘導品、複雑なサプライチェーンを持つ化学業界がカーボンニュートラルを実現するために必須のアプローチと言えます。マスバランス方式とバイオマス認証制度は、社会のバイオマス化を進めるための重要なポイントになっていくといえます。

社会のバイオマス化を素材から後押しする、それが私たち三井化学のバイオマスナフサ導入の考えなのです。

カーボンニュートラルな暮らしを支える

三井化学はカーボンニュートラル社会の実現に向け、バイオマスナフサ導入による化学品・プラスチックのバイオマス化を進めていきます。

素材の素材から考え、世界を素から変えていくことで、脱プラスチックではない“改プラスチック”への道筋を作りだし、人々のライフスタイルに自然とバイオマスが入っている、暮らしの足元からカーボンニュートラル実現に貢献していく、そんな未来を信じてバイオマスプラスチック・化学品のラインナップを一層拡充させていきます。


バイオナフサとカーボンニュートラルな未来

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