カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーを実現するには、長期的に粘り強く取り組む姿勢と気概、大胆な発想の転換、そして科学的思考と研究開発、業界の垣根を越えた連携による実行力の強化が必要不可欠です。私たち三井化学は、これまでに培った基盤技術をベースに、さまざまな垣根を越えて、素材の素材から未来を変えていきます。
カーボンニュートラル宣言と長期経営計画VISION 2030
私たち三井化学は2020年11月、持続可能な社会を構築するための化学企業が果たすべき役割と考え、2050年カーボンニュートラルを宣言し、地球規模の課題に対し真摯に向き合い自らを変革していく決意を表明しました。
循環型社会とはどのような社会なのだろう?
カーボンニュートラルを実現するには、何を変えていかなければならないのだろう?
翌2021年6月には、新たな成長軌道を描くために、新長期経営計画として「VISION 2030」を策定しました。当社の存在意義である「社会課題の解決」に立ち返り、化学の力で社会課題を解決していく姿勢を明確にした上で、2030年のありたい姿を「変化をリードし、サステナブルな未来に貢献するグローバル・ソリューション・パートナー」と定めました。
また、私たちが実現したい「目指す未来社会」として
①環境と調和した循環型社会
②多様な価値を生み出す包摂(ほうせつ)社会
③健康・安心にくらせる快適社会
を定め、この実現に向けて気候変動やサーキュラーエコノミーへの移行など、当社が取り組むべき16のマテリアリティを特定しました。
(https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/mci_sustainability/materiality/process.htm)
特定したマテリアリティは、グリーンマテリアルによる事業転換、サーキュラーエコノミーへの対応、カーボンニュートラルに資する環境基盤技術の開発・獲得、そして社会課題視点の全事業への展開といったVISION 2030の基本戦略にも盛り込まれています。
カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー社会の実現に向けて、長期的視点で一歩ずつ着実に、社内の改革やさまざまな垣根を超えた活動を開始しています。
組織名に見る変革への本気度
VISION 2030の実行速度を上げるため、2022年4月から組織を大きく改正し、ベーシック&グリーンマテリアルズ事業本部を発足しました。
ベーシック&グリーンマテリアルズ事業本部は、石油由来原料からさまざまな化学品やプラスチックを製造・販売する当社の根幹部門です。今回の組織改正では、「グリーンマテリアルズ」と名称を改め、石油由来原料からバイオマス原料へ大きくかじを切るという強い思いを込めました。
また、これまで進めてきたバイオマス化やカーボンニュートラルに貢献する技術開発、マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクルの本格事業化を進める専門部隊を「グリーンケミカル事業推進室」として新設しました。
さらに、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー関連事業の創出に向けたCoE体制(センター・オブ・エクセレンス:組織横断的な取り組みを中心となって進める専門組織)を整え、全社一丸となってカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを加速していきます。
垣根を越えた取り組みを加速
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現は、私たちの力だけでは難しく、さまざまな垣根を越えた連携が必要不可欠です。すでに産官学、業界の垣根を越えた取り組みを進めています。
三井化学カーボンニュートラル研究センターを設立
2021年10月、カーボンニュートラルに資する最先端の環境基盤技術の開発・実用化に向けて、九州大学のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER:アイスナー)内に、三井化学カーボンニュートラル研究センターを設置しました。
I2CNERは、世界に先駆けてカーボンニュートラルを冠した研究機関として有名であり、2010年に文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」に採択され、2020年にはWPIアカデミーの拠点となるなど、カーボンニュートラル技術における世界最先端の研究施設です。
三井化学カーボンニュートラル研究センターでの主な研究領域は以下の通りです。
① グリーン水素製造・利用
② CO2分離・回収技術の開発
③ CO2変換・固定化技術の開発
④ 高度分析・評価技術の開発
I2CNERが培ってきたグリーン水素、CO2の回収、貯留、変換などカーボンニュートラル・カーボンネガティブを目指す世界最先端の知見と、三井化学が取り組んできた低環境負荷技術の社会実装を目指した開発・工業化に関する知見をベースに、共同研究を実施していきます。また、カーボンニュートラルの実現に必要な要素技術の研究を集中的かつ効率的に行うことで、これら技術の社会実装を加速させます。
海洋プラスチックごみ問題への取り組み
サーキュラーエコノミーの実現には、資源を消費して廃棄するという一方通行の経済から、資源を効率的に利用するとともに資源の回収・再利用により廃棄物を出さない社会への転換が必要です。特に、海洋プラスチックごみ問題は、不適切な廃棄物管理によりプラスチックが資源循環から外れ、海洋に流出してしまうことに起因しており、早急な解決が求められています。
最も大切なことは、河川や海に流出させないことです。流出を抑止するには、プラスチックに関わるサプライチェーンが一体となって対策を実施することが必要です。三井化学では国際的なアライアンスであるAlliance to End Plastic Waste(AEPW)や、クリーンオーシャンマテリアルアライアンス(CLOMA)に参画し、取り組みを進めています。
Alliance to End Plastic Waste(AEPW)
AEPWは、海洋プラスチックごみなど多くの問題を抱える廃プラスチック問題の解決に向け、世界中の政府機関、環境・経済開発NGOに加え、市民社会と提携する国際的な非営利団体です。当社は2019年の設立時から参加しています。(参加企業は、2021年6月時点で58社)
AEPWでは5年間で総額15億米ドルを投じ、次の4つの分野において持続可能な社会の実現に向けた貢献を目指しています。
① インフラ開発:より有効なプラスチック廃棄物管理とリサイクルの促進を図るべく、インフラを開発します。
② イノベーション:プラスチックのリサイクルを促進し、使用後のプラスチックから価値を創出するための技術革新を進めます。
③ 教育・啓蒙活動:政府、企業や団体、地域社会と共にプラスチック廃棄物管理への更なる理解を深め、改善を図ります。
④ 清掃活動:河川ほか、プラスチック廃棄物の流出地域における清掃活動を行います。
AEPW:https://endplasticwaste.org/ja
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)
CLOMAは2019年1月、業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速するためのプラットフォームとして設立されました。これまで、会員間の技術情報共有や、マッチング機会の提供といった活動を実施しています。
2020年5月には「CLOMAアクションプラン」として、2030年に容器包装リサイクル率60%、2050年にはプラスチック製品リサイクル率100%という目標を掲げ、具体的な方策の提言や実証テストなどを進めています。(参加企業は、2022年2月時点で462社)
CLOMA:https://cloma.net/
素材の素材から世界を変えていく
私たち三井化学は総合化学メーカーとして、これまでも限られた資源やエネルギーを最大限活用し、無駄のないモノづくり・研究開発を重ねてきました。
例えば、触媒開発、プロセス技術から生まれた軽量化・薄膜化技術は、枯渇性資源の使用量削減、GHG排出量削減、プラスチックごみの削減といったReduce(リデュース)に大きく貢献するとともに、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー実現に向けたソリューションとして展開してきました。
当社は、このような基盤技術を最大限活かしつつ、新たなソリューションとしてのグリーンマテリアル開発、リサイクル技術の開発・社会実装を進め、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーの担い手として、これから先の未来社会をデザインしていきます。そして、パートナー企業や顧客、生活者の皆さまと共に、一歩ずつ、でも着実に、素材の素材から世界を変えていきます。