- サーキュラーエコノミー
- カーボンニュートラル
グローバルな社会課題の基礎知識
SDGsやカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーなど現代社会が抱える社会課題について、そもそも何が問題なのか、それをなぜ解決しなければならないのかなどを解説します。
SDGs(持続可能な開発目標)
~ 世界が抱えるさまざまな社会課題の解決へ向けた共通ゴール
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」において全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、貧困・飢餓・保健・教育・ジェンダーなど17のゴールと、それぞれのゴール達成に必要な具体的行動や数値目標を定めた169のターゲットから構成されています。人権問題、気候変動、カーボンニュートラルなど、以前からある国際的な社会課題への取り組みを集大成した、最新の世界共通の目標と言えます。
この中の目標1「貧困をなくそう」では、以下のようなターゲットが設定されています。
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
途上国支援が主眼のように見えますが、先進国でもさらなる取り組みが必要な課題がまだたくさんあり、途上国であるか先進国であるかを問わず、世界共通の努力目標となっています。
独ベルテルスマン財団が発表したSDGsの達成状況をまとめた報告書「Sustainable Development Report」の2021年版では、ランキングのトップ10をEU加盟国が独占しています(1位フィンランド、2位スウェーデン、3位デンマーク、4位ドイツ、5位ベルギー、6位オーストリア、7位ノルウェー、8位フランス、9位スロベニア、10位エストニア)。日本のランキングは18位で、達成とされたのは「質の高い教育」「産業と技術革新基盤」「平和と公正」のわずか3項目。一方達成まで程遠いとされたのは、「ジェンダー平等」「気候変動への対策」「豊かな海」「豊かな陸」「目標達成に向けたパートナーシップ」の5項目でした。日本もSDGs達成に向けて、まだまだやることがたくさんありますね。
OECD加盟国のSDGs達成状況(2021年)
出典:Sustainable Development Report
https://dashboards.sdgindex.org/
カーボンニュートラル
カーボンニュートラルは、気候変動の原因である二酸化炭素など温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)について、人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量の均衡を目指す気候変動対策です。2015年にパリで開催された温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合うCOP21(国連気候変動枠組条約締約国会議)で「パリ協定」が合意され、米国・中国・EUなど主要国の批准を経て2016年11月4日に発効しました。
ここで「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」いわゆる「2℃目標」が設定され、同時に「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」という「カーボンニュートラル」の原則が示されました。
カーボンニュートラルは各国で排出権取引や炭素税、炭素国境調整メカニズム(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)の導入が進むことによって、単なる努力目標ではなく、国際経済上重要な政策課題となっています。
世界の二酸化炭素排出量(国別排出割合)
出典:JCCCA HP「3-1 世界の二酸化炭素排出量(2018年)」
日本政府でも2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。これに先立ち2012年から石油・石炭・天然ガスなど化石燃料に対して「地球温暖化対策税」を課税し、排出抑制対策を強化する財源としています。2022年5月時点では二酸化炭素の排出量1トンあたり289円の税率が設定されていますが、欧州諸国と比較するとまだまだ低いものとなっています(スウェーデン137ドル、スイス101ドル、フランス52ドル、英国25ドルなど)。
日本の温室効果ガス排出量とカーボンニュートラルの実現イメージ
出典:経済産業省 資源エネルギー庁HP
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html
EUでは2005年からEU排出量取引制度(EU-ETS)がスタート、EU域内の電力部門、製造業部門、商業航空部門を対象とし、域内二酸化炭素排出量の約4割をカバーして運用されています。2020年3月に発表したカーボンニュートラル政策パッケージ「欧州グリーンディール」の一環として、世界に先駆けてCBAMを2026年から10年かけて、セメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力の5部門から導入する計画を明らかにしました。さらに水素、有機化学品、ポリマーの3部門を追加することや、導入の前倒し等が検討中といわれていますので、様々な産業に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
EUのCBAMは製品生産時の二酸化炭素排出量に応じてEU-ETSに基づく炭素価格を支払うものです。排出枠価格は高騰しており、2022年1月時点で二酸化炭素の排出量1トン当たり85ユーロ(1ユーロ=135円で11,475円)に達しています。CBAMは気候変動対策に消極的な国からの製品輸入に対しては保護関税として機能すると考えられ、WTOなど既存の貿易ルールとの整合性が問われるほか、EU向けに対象分野製品を輸出している中国やロシア等からは早くも懸念が表明されています。
サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、従来の資源消費型の経済(リニアエコノミー)から脱却して、資源の効率的な利用とリサイクルによって、資源投入量を減らし廃棄物の発生を抑止する経済活動を目指すことです。それにより、シェアリング、リース、リユースといったサービスの事業化を通じて付加価値を生み出す持続性の高いビジネスモデルへの変革が期待されます。従来の3R活動は省資源化と廃棄物抑制を主目的としていましたが、そうした思想をビジネスモデル化することによって、事業活動の持続可能性を高めるだけでなく、企業の競争力向上にもつながることが期待されています。
サーキュラーエコノミーの概念
出典:環境省「令和3年版環境白書」
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/pdf/full.pdf
三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルと目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。カーボンニュートラルや循環型社会への対応を検討している企業の担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。 <「BePLAYER®」「RePLAYER®」>https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm |