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カーボンニュートラルとは?意味や目標をわかりやすく解説

地球と人々

地球環境に大きな影響を与える気候変動。世界共通の課題として各国に早急な対応が求められる中、日本でも政府の取り組みと連動する形で、再生可能エネルギーやバイオマス素材の導入など、カーボンニュートラルに関する企業の取り組みが進んでいます。そこで、カーボンニュートラルとは何なのか、なぜ必要なのか、2050年カーボンニュートラル実現に向けて企業や個人としての取り組みにはどのようなものがあるのか、わかりやすく解説します。

カーボンニュートラルとは?なぜ必要なのか

カーボンニュートラルの意味をわかりやすく解説

よく耳にする「カーボンニュートラル」とは、簡単に説明すると、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを意味します。もう少し詳細に説明すると、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガス(Green House Gas=GHG)に関して、工業や生活など人為的な発生源による排出量と、主に植物の成長過程での吸収(除去)量の均衡(ニュートラル)を目指す気候変動対策です。

つまり、「排出量=私たち人間のさまざまな活動によって人為的に排出される温室効果ガスの量」と「吸収量=森林などによって大気中から吸収または除去される温室効果ガスの量」を均衡させ、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを意味します。

温室効果ガスとは地球の大気中に存在し、地球の温度を保つ働きをする気体のことです。温室効果ガスがなければ、地球の平均気温はマイナス19℃になると言われており、現在の生物が生存できる環境を維持するためには温室効果ガスが必要です。

しかし、人為的に排出し続けた温室効果ガスが、森林などに吸収される吸収量を大幅に上回った場合、大気中の温室効果ガスが増加し、過剰に地球が暖められることになります。大気中の温室効果ガスの濃度が適正水準以上に高まると、気温は上昇し続け、地球温暖化をはじめとした気候変動問題を引き起こします。

地球温暖化の深刻な影響

温室効果ガスの排出による影響

工業化以降、人間の活動によって世界の温室効果ガスが増加しており、20世紀半ばからの世界平均気温の上昇は、人間が排出した温室効果ガスの増加がもたらした可能性が高い──。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がそう報告したのは2007年のこと。この報告書ではさらに、気温上昇は海洋や河川、陸のあらゆる生物や植物、農業や人間の健康にも影響を与えることが述べられています。

温室効果ガスの排出に伴って世界の平均気温は上昇し続けており、平均降水量の増加や海洋水温の上昇、海氷や積雪の減少などが確認されています。海面水位が上昇すれば、沿岸地域では居住地やインフラが侵食されます。また、温暖化は海と陸の生態系に影響を与え、食料の生産性を低下させる恐れがあります。このように気候変動は自然や生態系はもとより、人間の暮らしや健康にも大きな影響を与えるものなのです。

カーボンニュートラルはなぜ必要なのか

地球規模での気候変動の抑制に向けて、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)でパリ協定が採択されました。パリ協定では「世界的な平均気温上昇を工業化以前と比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をする」ことが世界共通の長期目標として定められました。

1850年~1900年を基準とした世界の平均気温は2011年~2020年に1.1℃温暖化し、21世紀の間に1.5℃の上昇幅を超えるという予測もあります。人間の活動がもたらした気候変動により、大気、海洋、雪氷圏、生物圏で過去数百年から数千年にわたって前例のない広範かつ急速な変化が現れてきています。

こうした事態を防ぐには、温室効果ガス排出量を削減し、温暖化の進行に歯止めをかけなくてはなりません。その上で、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルへの取り組みは必須であり、温暖化を2℃以下または1.5℃に抑えるためには、さらに早急かつ抜本的にこの取り組みを進める必要があります。

世界共通の目標であるSDGsとの関係

カーボンニュートラルとSDGsは、地球環境の保全と持続可能な社会の実現を目指す点で関連しています。SDGsとは、誰ひとり取り残されることなく、人類が安定してこの地球で暮らし続けることができるように、世界のさまざまな問題の解決に向けた「持続可能な開発目標Sustainable Development Goals)」です。SDGsの中にも、気候変動やカーボンニュートラルに関連する目標があります。例えば、目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」では、再生可能エネルギーの使用やエネルギー効率の改善を、目標13「気候変動に具体的な対策を」では、気候変動対策や教育・啓蒙活動を国として行うことを目指しています。

日本政府はカーボンニュートラルの実現により、将来世代も安心して暮らせる、持続可能な社会をつくることを目指しています。また、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、産業や経済の構造変革をもたらし、新たな成長のチャンスになることも想定されます。そのため、EUの「欧州グリーン・ディール」のように、環境保全と経済成長の両立につながる新たな成長戦略の一環として、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを積極的に推進していく動きも見られています。

※カーボンニュートラルと脱炭素との違いについては、「脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?意味や目標をわかりやすく比較」にて詳しく解説しています。

カーボンニュートラルの目標

2050年までのタイムリミット

2018年10月に採択されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書(正式名称は、『気候変動の脅威への世界的な対応の強化、持続可能な発展及び貧困撲滅の文脈において工業化以前の水準から1.5℃の気温上昇にかかる影響や関連する地球全体での温室効果ガス(GHG)排出経路に関する特別報告書』)では、1.5℃目標を実現するためには人為起源のCO₂排出量を2050年前後に正味ゼロにする必要があるとしています。

2015年にCOP21で採択されたパリ協定でも、先進国や途上国の区別なく、すべての締約国が温室効果ガスの削減目標を設定することになっており、その数は195の国と地域に及びます。そのため、日本、アメリカ、イギリス、欧州連合、カナダ、ブラジルといった主要国は、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を宣言しています。

日本の現状と課題

再生可能エネルギー

日本では2020年10月、当時の菅義偉総理大臣が所信表明演説で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」ことを宣言しました。その達成には、エネルギー転換や新たな技術の開発が必要です。

日本が排出するCO₂排出量(電気・熱配分前)の約4割が電力部門、残りの約6割が産業や運輸、家庭などの非電力部門からの排出となっています。電力部門のCO₂排出量については、大半を占めるのが火力発電所からのCO₂排出であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するためには、火力発電所からのCO₂排出量を削減していく必要があります。

また、非電力部門のカーボンニュートラル実現のためには、エネルギー源のグリーン化(化石燃料から水素などの転換)や製造プロセスのグリーン化、バイオマスなど再生可能原料への転換などが必要です。特に、製造プロセス上で大量の熱エネルギーを必要とするパルプ・紙・紙加工業や鉄鋼業、化学工業、セメント業などは、従来の化石燃料を使った製造方法ではなく、水素などを活用した製造方法への転換など、環境負荷の低い製造工程を実現するための技術改革が求められています。

こうした中で、経済産業省が中心となって「経済と環境の好循環」の創造を目指す産業政策「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(グリーン成長戦略)を2021年に策定し、同戦略を後押しするために総額2兆円(2021年3月時点)のグリーンイノベーション基金が造成されました。こうした政府の支援策をうまく活用しながら、各企業は自社の温室効果ガス排出量の削減に向けた具体的な取り組みや技術開発を加速させていくことも重要になります。

カーボンニュートラルを実現するために私たちができること

カーボンニュートラルの実現に向けては、国や企業だけでなく私たち個人としてもできることがあります。ここからは、その一部を解説します。

省エネ活動

家庭における家電製品の一日の電力消費割合出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネルギー政策について」

現在の私たちの暮らしや社会は、食料品や衣料品などはその生産から流通など、さまざまな領域で多くのエネルギーを消費しています。そのため、省エネ活動を推進することは、エネルギー創出に伴う温室効果ガス排出量を削減し、地球温暖化の抑制に貢献できます。また、電力消費量はエアコン、冷蔵庫、照明で5割以上を占めており、これらの省エネが大きなポイントになります。

エアコンを使用する際は、設定温度を適切に設定することで省エネにつながります。夏場は無理のない範囲で設定温度を上げ、冬場は20℃がひとつの目安になります。また、冷蔵庫の省エネでは、ものを詰め込みすぎずに冷気を循環させ、無駄な開閉をしないことがポイントです。照明については、LED電球に替えることで電力の使用量を抑えることができます。

環境に優しい商品選択

私たち消費者が日々の買い物において、環境に配慮された商品を選択することも重要です。環境に配慮された商品であるかどうかを判断する際、参考となる情報のひとつに「環境ラベル」があります。

例えば、ISO(国際標準化機構)の規格に則った日本唯一のタイプI環境ラベル(※)制度である「エコマーク」は、ライフサイクル全体で環境負荷が小さく、環境保全に役立つ商品として認定されたものに表示されます。環境ラベルは商品のパッケージに印刷されていることが多く、そういった表示をもとに商品を選択することで、環境に配慮された商品の選択が可能になります。

※タイプⅠ環境ラベル:
第三者認証による環境ラベル。第三者実施機関によって運営され、製品・サービスのライフサイクルを考慮した基準を策定しており、事業者の申請に応じて審査し、マーク使用を認可するもの。

※エコマークについては、「時代に応じて進化するエコマーク。いち早く『マスバランス方式によるバイオマスプラ』を認定した理由とは」にて詳しく解説しています。

環境問題への意識向上

環境問題は一時的な取り組みだけでは解決できない社会課題であり、私たち一人ひとりが継続的に関心を持ち、地球温暖化の抑制に向けて行動し続けることが重要です。
カーボンニュートラルを含む環境問題に関するニュースを調べる習慣をつけるなど、環境問題について積極的に情報収集するとともに、科学的かつファクトベースで正確に把握することが、社会課題の解決に向けた大きな一歩につながります。

また、先述の省エネのほかにも、日常生活のなかで私たちが温室効果ガス排出量の削減や環境問題の解決に向けてできることは数多くあります。そのような私たちにできる活動についても情報を集め、実践していくことも重要です。

※カーボンニュートラルに向けた個人の取り組みについては、「カーボンニュートラルのために個人でできることは?身近な例を紹介」にて詳しく解説しています。

バイオマスプラスチックとはhttps://www.youtube.com/watch?v=nq8G6Cg9TOg


<公開資料:カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー関連>
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/whitepaper/ 

 

参考資料
*1:環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」:
https://www.env.go.jp/content/000216325.pdf
*2:国立環境研究所「2℃目標、1,5℃目標の実現のために」:
https://www.nies.go.jp/kanko/news/38/38-3/38-3-02.html
*3:環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書の概要 - 第2作業部会(影響、適応、及び脆弱性)-」:
https://www.env.go.jp/content/000155003.pdf
*4:全国地球温暖化防止活動推進センター デコ活ジャパン「温暖化とは?地球温暖化の原因と予測」:
https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge01
*5:公益財団法人日本ユニセフ協会「SDGsクラブ」:
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/about/
*6:環境省 脱炭素ポータル「国の取組」:
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/road-to-carbon-neutral/
*7:経済産業省「グリーン社会の実現に向けた競争政策研究会 カーボンニュートラルと国際的な政策の動向及び企業への影響」:
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/green_shakai/pdf/004_06_02.pdf
*8:経済産業省 資源エネルギー庁「令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)第3節2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」:
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/1-2-3.html
*9:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネポータル」:
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/index.html#general-section
*10:財団法人日本環境協会エコマーク事務局「エコマークのご案内」:
https://www.ecomark.jp/pdf/pamphlet_consumer.pdf

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