outline
季節が夏から秋に移り変わるにつれて、私たちの身近にある自然の色も変化します。夏のあいだは緑色をしていた葉っぱは、秋が近づくと黄色や赤に変わります。ふだん紅葉を楽しんでいる人も、葉っぱの色が変わるメカニズムについて知らない人は多いのではないでしょうか? 今回も素朴なギモンに対して、カガクに詳しい「モルおじさん」が解説します。
※本記事は、2014年秋号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。
イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:川谷恭平(CINRA)
季節が変わると、葉っぱの色が変化するのはなぜ?
なぜ緑色の葉っぱは、秋になると黄色や赤になるのでしょうか? 色変わりした姿はまったくの別物のように思えるかもしれませんが同じ葉っぱです。今回も、カガクに詳しい「モルおじさん」が詳しく解説します。
春から夏にかけて、葉っぱは木を成長させるための栄養をつくります。この役割を果たしているのが「葉緑素(クロロフィル)」という緑色の色素です。
しかし、気温が下がり寒くなってくると、葉と枝のあいだに離層と呼ばれる壁ができて、水や養分が行き来できなくなってしまいます。すると葉緑素の働きが弱まり、葉から緑色が抜けていくのです。
葉緑素がなくなったあとに残る成分が「力ロテノイド」と呼ばれる黄色の色素です。力ロテノイドは葉緑素とともに葉っぱにずっと存在していますが、ふだんは葉緑素の緑色が強いため目立ちません。葉緑素の働きが弱まった秋ごろにのみ目立ち始め、葉っぱが黄色く見えるようになるのです。
葉っぱを赤く染める色素はどうやってできる?
ここまで葉っぱが黄色になる仕組みを説明しました。でも、紅葉といえば赤い葉っぱもキレイですよね。葉が赤くなるのはまた別の原理が働いています。
葉っぱでは光合成で糖やアミノ酸などの養分をつくっています。しかし、離層ができたことにより、養分もそのまま葉っぱに残ってしまいます。この残った養分は太陽の光を浴びることで「アントシアニン」という赤い色素をつくります。
このアントシアニンが葉っぱを赤くさせています。葉っぱが赤くなるには太陽の光が必要不可欠なのです。そのため、日当たりの良い場所ほど、美しい紅葉を見ることができるんです。
自粛ムードでストレスが溜まりやすい昨今。感染対策に気をつけながら、息抜きに近場の紅葉を見に行くのはいかがでしょうか?
モルおじさんのひとこと
今回は秋になると葉っぱの色が変わるカガクを解説しました。移りゆく季節を愉しむことは、私たちの暮らしや気持ちを豊かにしてくれますよね。今回は少し長いですが、日本の文化の一つである俳句について語らせてください。俳句では、四季の変化による自然界や人間界のさまざまな現象を客観的にうたいあげる「花鳥諷詠」の考え方により、自然の美しさ、自然と人間の調和を表現した句も多くあります。
「桐一葉 日当りながら 落ちにけり」(高浜虚子、1906年)
これはキリの葉が一枚、日に照らされながら舞い落ちる一瞬の風景を詠んだもので、秋の訪れやときの流れ、そしてそこから喚起される人の心の動きを、この一句に凝縮させています。
こうした俳句の世界のように、MOLpでも三井化学の素材が持つポテンシャルを引き出し、自然と人間の調和を表現することに挑戦。晩秋の記憶(秋の落葉)を植物由来のポリウレタン『スタビオ®』に閉じ込めたコートフック『Slow play』を制作し、素材の展示会「MOLpCafé2021」(7/13~7/17開催)で発表しました。
「落葉の色合い・ギザギザ・透明感。その落葉の再生の記憶をプラスチックに閉じ込めたい。」といった研究者の思いをかたちにすべく、南三陸で出会ったプロダクトデザイナー山崎タクマ氏の「Bio-Vide(落ち葉の板材)」の技法を活用し、三井化学の研究所で集めた落ち葉を『スタビオ®』で封入しました。
そして完成した『Slow play』は、冬の湖水に封印された落ち葉のような表情を持ち、毎日何気なく見る風景からでも、命の循環や環境について考えるきっかけになるアイテムに仕上がりました。
みなさんもぜひ、紅葉シーズンには、コートの襟を立てながら自然に思いを巡らせ一句、詠んでみてはいかがでしょうか。今回は秋を思い感傷的になるモルおじさんでした。
- 関連リンク:
- 「スタビオ®」