酔っぱらった状態でも帰宅可能な理由を科学する
新入社員や異動の歓迎会、お花見などで、お酒を飲む機会が増える春。お酒を飲む機会が増えますよね。ついつい飲み過ぎて「二次会までは覚えているけど、その後の記憶がない!」なんてことも。けれど、不思議なことに気づいたら家の布団で寝ていた……そんな経験はありませんか?
今回は、「酔っ払って記憶がなくなっても、なぜ家に帰れるのか?」その秘密を科学の視点から紐解きます。

カガクのギモン
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素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は「記憶がなくなるほど酔っぱらっても帰宅できるのはなぜ?」という疑問に、カガクに詳しい「モルおじさん」が答えます。
※ アルコールに対する強さは人それぞれです。お酒に強くてついつい飲み過ぎてしまう人も、急性アルコール中毒やアルコール依存症につながる恐れがあるため注意が必要です。
※ 本記事は、2019年秋号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。
イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:川谷恭平(CINRA)
新入社員や異動の歓迎会、お花見などで、お酒を飲む機会が増える春。お酒を飲む機会が増えますよね。ついつい飲み過ぎて「二次会までは覚えているけど、その後の記憶がない!」なんてことも。けれど、不思議なことに気づいたら家の布団で寝ていた……そんな経験はありませんか?
今回は、「酔っ払って記憶がなくなっても、なぜ家に帰れるのか?」その秘密を科学の視点から紐解きます。
私たちの記憶には大きく分けて「短期記憶」と「長期記憶」の2種類があります。
短期記憶は、数十秒から数十分程度のあいだという保持される情報のこと。たとえば、直前までしていた会話の内容や、いま目にしたばかりのものを覚えている状態がこれにあたります。
短期記憶は脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部分で処理され、その情報が重要だと判断されると、「海馬(かいば)」という記憶の選別担当へ送られます。
長期記憶とは、重要な情報を長期間にわたって覚えておける仕組みのことです。短期記憶として海馬に送られた情報のうち、「これは大事だ」と判断されたものだけが「大脳皮質(だいのうひしつ)」という脳の領域に移されます。こうして長期記憶となった情報は、日常の経験や学んだ知識など、私たちが長く覚えていられるかたちで保管されます。この長期記憶は一度形成されると、完全に消えることはほとんどありません。
このように、短期記憶と長期記憶は役割を分担しながら私たちの記憶を支えています。短期記憶が瞬間的な記録装置なら、長期記憶は頼れるアーカイブのような存在だといえるでしょう。
お酒を飲むと、脳の働きが少しずつ鈍くなり、次の順で機能が低下していきます。
前頭前野は理性をコントロールする部分です。お酒を飲むと前頭前野の働きが低下し、判断力が鈍りやすくなります。その結果、普段なら控えるような行動を取ったり、気が大きくなったりすることがあります。
さらにお酒を飲むと麻痺してしまうのが小脳です。小脳はバランス感覚や運動神経をつかさどる部分。お酒が小脳に影響すると、足元がふらつきやすくなり、まっすぐ歩くのが難しくなります。転倒しやすくなるため注意が必要です。
最後に影響を受けるのが、記憶を整理して保存する役割を持つ海馬です。海馬の働きが低下すると、短期記憶を長期記憶に送る作業が停止します。そのため、飲み会の終盤で起きた出来事や会話を翌日思い出せなくなることがあります。
酔いが進むと短期記憶が混乱し、新しい情報を記録しづらくなります。同時に、判断力やバランス感覚も乱れるため、ふらつきや転倒が起きやすくなります。
それでも無事に家に帰れるのは、長期記憶がしっかり働いているからです。たとえば、家までの道順や鍵を開ける動作は長期記憶に刻まれているため、理性やバランス感覚が不安定でも自然と行動できるのです。
さらに、脳の「頭頂葉(とうちょうよう)」という部分も重要な役割を果たします。頭頂葉は周囲の空間を把握したり、視覚や聴覚の情報を統合したりする働きを持っています。驚くことに、この部分はお酒の影響を受けにくいのです。つまり、頭頂葉が「ここを曲がれば家だよ」と指令を出してくれるおかげで、記憶が曖昧な状態でも無事に帰宅できるのです。
お酒は適量なら楽しいですが、飲み過ぎると短期記憶が飛んでしまい、翌日何も覚えていない……なんてことも。せっかくの飲み会をしっかり楽しむためにも、ほどほどに飲んで記憶を守りましょう!
私はお酒が大好き。休日に広い公園の木陰で友人や家族と飲むお酒は最高のひととき。外で飲むと、日ごろのストレスがふっと消え、会話も弾みます。気心の知れた人たちと適量のお酒、これぞ至福!
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晴れの日に公園でワインを飲み、素敵なメッセージカードを受け取る、そんな特別な体験があれば、酔っても記憶が飛ばないかも……? お酒はほどほどに楽しみましょうね!(自戒を込めて)