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素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は、「太陽電池はどうやって発電しているの?」という疑問にカガクに詳しい「モルおじさん」が答えます。
※ 本記事は、2012年1月号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。
イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:吉田真也(CINRA)
ヒントになるのは、暑い日のアスファルト。太陽電池の原理とは?
太陽から地球に降り注ぐ光のエネルギーを、電気エネルギーに変換する「太陽電池」。住宅や学校などさまざまな場所で太陽電池パネルが設置されていますが、どうやって太陽の光を電気エネルギーに変えているのかご存知ですか? 今回は、太陽電池の原理について、カガクに詳しい「モルおじさん」が詳しく解説します。
石油などの化石資源をつかわずに、私たちの生活の必需品である電気を生み出す太陽電池は、光のエネルギーを電気エネルギーに変える働きをしています。エネルギーが別のエネルギーに変わるというのは、身近な生活でも起こっています。たとえば夏の暑い日、太陽の光に当たったアスファルトの道路は、熱くなりますよね。
これは、太陽の光の工ネルギーがアスファルトに吸収され、熱に変わっているのです。太陽電池の場合は、この太陽の光エネルギーを吸収して電気エネルギーに変えているのです。
「光の色」と「光合成」が重要なポイント。光の吸収から電気が流れる仕組み
太陽電池の原理は、「光の色」と「光合成」の2つがポイントになります。まずは「光の色」ですが、太陽の光は白っぽく見えますよね。でも、じつは虹の七色からできています。私たちの身の回りに溢れるモノの多くは、虹の七色のうちのいくつかの色を吸収しています。それによって、私たちには特定の色に見えるようになるのです。
たとえば、植物の葉っぱが緑色なのは、葉っぱのなかに含まれる葉緑素が、赤や紫といった、緑以外の色の光をたくさん吸収し、残った緑色だけが私たちの目に見えています(ちなみに、七色をまんべんなく吸収するモノは真っ黒く見えます)。
この葉緑素が吸収した太陽の光と、空気中の二酸化炭素や根っこから吸い上げた水から、自分が成長するための養分をつくり出すのが「光合成」です。
そうした原理を応用して、葉っぱの代わりにシリコンという物質でできたパネルなどを使って、吸収した光の工ネルギーを電気に変える人工的な仕組みが「太陽電池」です。
太陽電池パネルが光を吸収すると、工ネルギーの高いマイナス(一)とプラス(十)の電気のペアがつくられます。パネルはーの電気を引きつけやすい層 (n層)と、+の電気をひきつけやすい層 (p層)からできているので、一の電気はn層へ、+の電気はp層へ流れ込み、電気が流れます。
太陽電池パネルがより普及するには? 開発中の「色素増感太陽電池」
植物みたいに、無限にある太陽の光から人の暮らしに役立つエネルギーをつくることができたらすごいですよね。とはいえ、太陽電池は一般家庭にも広まってきたものの、まだまだ価格が高く、普及が進んでいるとはいえない現状です。
そこで、もっと低価格かつカラフル(赤、青、黄、緑といろんな色があります)なパネルで、しかも折り曲げることもできる夢のような太陽電池が研究されています。
それが、植物の葉緑素によく似た色素などを使った「色素増感太陽電池」。まさに、光合成をお手本にした太陽電池です。実用化が待ち遠しいですね。
モルおじさんのひとこと
オデコがピカリと光り、裸電球のごとく輝ける日々を過ごしているモルおじさんですが、少し先の未来では人間の体が生み出すエネルギーで電子機器も動かせる時代がやってくるかもしれません。
20世紀初頭から身の回りにあるわずかなエネルギーを電力に変換する発電技術「自然発電(エネルギーハーベスティング)」の研究開発が進められており、近年では人間が発する熱エネルギーを活用することも検討されています。IoT化の進展に伴い、電子制御が必要となる機器もさらに増えるため、電池レスでセンサーネットワーク電源等に活用できる「エネルギーハーベスティング」の展開も注目されています。
ただ、モルおじさんがいま、最も実現させたい発電方法は「感情エネルギー発電」です。電気とエネルギーの研究で有名な発明家のニコラ・テスラ(1856年―1943年)は、「あなたの憎しみを電気に変換してしまいなさい。そうすれば世界全体が明るくなる」という言葉を残しています。モルおじさんも、本当にそうできれば良いなと思う2023年春です。世の中を明るくするためのカガクを追求することが、私たちの使命であると信じて。裸電球のモルおじさんより。