マテリアリティの特定プロセス

マテリアリティとは、ステークホルダーの要望や期待の把握、事業活動による社会的な影響の分析・検証といった過程を経て特定されるものであり、このプロセスは、持続可能な社会に向けて三井化学グループが取り組むべき課題の認識において非常に重要であると考えています。当社グループは、常に経営環境の変化を捉えて、取り組みをアップデートするために、定期的かつ継続的にマテリアリティ特定のプロセスを実施することにより、重要性の変化を確認し、事業活動に反映していきます。

ステップ 1:課題の抽出

以下を参考に課題を網羅的に抽出しました。

✔ ステークホルダーとの対話※1
✔ グローバルな社会課題に関する情報収集※2
✔ サステナビリティ情報開示ガイドラインやESG評価機関の評価項目
✔ 当社グループの企業グループ理念・行動指針をはじめとする方針類
✔ 各会議体での議論内容
✔ VISION 2030策定過程における議論

※1ステークホルダーとの対話:
例えば、Blue Value®・Rose Value®の評価・審査・認定プロセスでは有識者からの助言を受けることにより、環境や社会の課題を当社の事業活動に反映する仕組みを構築しています。また、人権デュー・ディリジェンスにおいても社外専門家の意見を受けながらリスクアセスメントなどを進めています。2022年4月には当社で初めてとなるESG説明会を開催し、ステークホルダーとサステナビリティ経営に関する質疑や意見交換を行いました。様々なステークホルダーとのオープンで建設的な意見交換を通じ、相互理解を促進し、信頼関係を構築するとともに、当社グループに対する期待とニーズを確認し、経営に活かすことを目指しています。

※2グローバルな社会課題に関する情報収集:
三井化学はWorld Economic Forumに加入して、グローバルな新規課題に関連した最新動向の情報収集を行っています。そのプラットフォームでは、参加メンバーとともに国際機関および各国政府などと協力し、社会課題の解決を目指しています。

ステップ 2:課題をテーマ別に分類

サステナビリティ情報開示ガイドラインの開示要請事項やESG評価機関の評価項目などを参考に、抽出した課題をサステナビリティのテーマ別に分類しました。

ステップ 3:テーマの優先順位付けと整理

各テーマを、ステークホルダーにとっての重要性(または、社会における影響度)と三井化学グループにとっての重要性の両軸でマッピングして優先順位を付け、ESG推進委員会、経営会議、取締役会で討議のうえ、候補テーマを絞りました。
絞りこんだマテリアリティについては、全体的に俯瞰し、取り組みにより期待する一義的な効果やそれに要する時間軸などの視点から、社会価値と企業価値、両方の創出に直結するテーマを「持続可能な社会への貢献」と位置付け、それを「事業継続の前提となる課題」および「事業継続に不可欠な能力」が支える構成に整理しました。この整理により、分類ごとの具体的な取り組みの方向性がより明確になりました。

ステップ 4:妥当性の確認

特定したマテリアリティについてはESG推進委員会で項目の網羅性と妥当性を確認し、経営会議、取締役会に報告の上議論を重ね、最終的に取締役会の承認を得ました。
マテリアリティは、課題の重要性の変化や新規課題の出現などを考慮する必要があるため、以降毎年ESG推進委員会や全社戦略会議にてレビュー(解析、検討、討議)を実施し、必要に応じて見直す予定です。

「持続可能な社会への貢献」につながるマテリアリティとリスク・機会の認識

三井化学グループは、社会価値の創出と稼ぐ力の両立を叶える事業活動を通じた「企業価値」「業績向上」に直結するテーマを「持続可能な社会への貢献」と位置付け、それを「事業継続の前提となる課題」および「事業継続に不可欠な能力」が支える構成でマテリアリティを整理しています。
「持続可能な社会への貢献」の各マテリアリティについては、選定プロセスにおいて次のように機会とリスクを捉え、特定しました。

「事業継続の前提となる課題」および「事業継続に不可欠な能力」に関する当社グループの取り組みはこちらをご覧ください。

ライフサイクル全体を意識した
製品設計

社会課題に対する認識とVISION 2030の実現に向けて

社会課題はそれぞれが複雑な関係性を有しており、全体を俯瞰した視点で取り組むことが必要です。そのため、ライフサイクル全体を通じて環境・社会に配慮する経済活動が求められています。低環境負荷・ユニバーサルデザインの製品・サービス提供にとどまらず、バリューチェーンを俯瞰して課題をとらえ、製品・サービスを組み合わせたソリューションを提供するソリューション型ビジネスを拡大していきます。

気候変動

社会課題に対する認識

パリ協定の目的である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」には、社会全体でのカーボンニュートラルの達成が求められています。また、その実現に至る過程においては、低炭素化(緩和)を加速するだけでなく、足元で生じている気候変動により引き起こされる自然災害の激甚化や感染症の拡大といった課題に対応可能な、強靭な社会の構築(適応)が強く望まれています。

三井化学グループにとっての機会とリスク (例)

EVシフト、再生可能エネルギーの主流化 GHG排出規制、炭素税などの規制強化
再生可能原材料への転換 高環境負荷製品の需要減退
低炭素、脱炭素製品・技術の需要増加 水資源の不足、枯渇
防災・減災、感染症対応製品の需要増加 風水害による生産拠点の被害
サプライチェーンの途絶
三井化学グループにとっての機会とリスク (例)
EVシフト、再生可能エネルギーの主流化
再生可能原材料への転換
低炭素、脱炭素製品・技術の需要増加
防災・減災、感染症対応製品の需要増加
GHG排出規制、炭素税などの規制強化
高環境負荷製品の需要減退
水資源の不足、枯渇
風水害による生産拠点の被害
サプライチェーンの途絶

VISION 2030の実現に向けて

当社グループは、気候変動対応を最重要課題と認識し、緩和と適応に関する気候変動対応方針を策定しています。パリ協定の目標達成への貢献に対しては、2050年のカーボンニュートラルを目指しています。当社グループは、カーボンニュートラル戦略において、自社のGHG排出量削減を進めるとともに、製品・サービスを通じたバリューチェーン全体の低炭素化に貢献することによって社会全体のカーボンニュートラルを目指すことを謳っています。カーボンニュートラルに資する基盤技術の開発・獲得、原燃料転換による製品の低炭素化を進めるとともに、防災・減災をはじめとしたレジリエントな社会に向けた製品・サービスを提供していきます。

サーキュラーエコノミー

社会課題に対する認識

世界の人口増加や途上国、新興国を含めたグローバルな経済活動の活発化にともない、資源の大量消費と廃棄を前提とした従来型のリニアな経済活動が、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)を超える大きな脅威となっています。また、廃棄物の不適切な管理によるごみ問題も深刻化し、自然資本の損失を招いています。こうした中、資源利用と経済成長のデカップリングにより環境と社会の持続可能性を高める「サーキュラーエコノミー」への転換に向けて社会全体での協調・協働した取り組みが求められています。

三井化学グループにとっての機会とリスク (例)

エコシステム視点のソリューションビジネスの機会増大 使い捨てプラスチック利用規制強化とプラスチック需要減退
省資源・資源再生技術の需要増加 自然資本に関する規制・国際規範の強化
プロダクトライフサイクル全体のトレーサビリティの重要性増加 拡大生産者責任などの訴訟リスクの増大
消費者意識変化に伴う企業レピュテーション毀損
三井化学グループにとっての機会とリスク (例)
エコシステム視点のソリューションビジネスの機会増大
省資源・資源再生技術の需要増加
プロダクトライフサイクル全体のトレーサビリティの重要性増加
使い捨てプラスチック利用規制強化とプラスチック需要減退
自然資本に関する規制・国際規範の強化
拡大生産者責任などの訴訟リスクの増大
消費者意識変化に伴う企業レピュテーション毀損

VISION 2030の実現に向けて

当社グループは、産官学との連携・協力を図りながら、環境基盤技術の開発・獲得、再生可能な原燃料資源の活用やリサイクルを推進しています。サーキュラーエコノミーを支える素材・サービスの創出を含め、素材提供に留まらないソリューションの提供を通じて、全事業を対象としたサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの構築を目指します。また、プラスチックを生産する責任を自覚し、プラスチックごみ問題対応をはじめとした自然資本の保全と回復に努めます。

健康とくらし

社会課題に対する認識

世界の人口増加、高齢化、社会参画の多様化(ダイバーシティ&インクルージョン)は、人々の生活に大きな変化をもたらし、あらゆる側面で様々なニーズが出現しています。また、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつであり、健康に関するあらゆる不平等の解消とあらゆる人々の人生の質(QOL)の向上が求められています。

三井化学グループにとっての機会とリスク (例)

あらゆる人の健康と豊かなくらしの需要の高まりによるモビリティ・医療機器類・医薬包材・ICT分野・住宅建材製品の需要増加 感染症予防・拡大防止、保健衛生の向上などの製品需要増加
年齢、性別、人種、障害の有無などを問わない、あらゆる人々の社会参画支援サービス/製品の需要増加 VUCA時代による不確実性
病気・健康対策に加え、未病への対応とくらしの快適性・安全性ニーズの拡大 ヘルスケア、医療分野における訴訟リスクの高まり
三井化学グループにとっての機会とリスク (例)
あらゆる人の健康と豊かなくらしの需要の高まりによるモビリティ・医療機器類・医薬包材・ICT分野・住宅建材製品の需要増加
年齢、性別、人種、障害の有無などを問わない、あらゆる人々の社会参画支援サービス/製品の需要増加
病気・健康対策に加え、未病への対応とくらしの快適性・安全性ニーズの拡大
感染症予防・拡大防止、保健衛生の向上などの製品需要増加
VUCA時代による不確実性
ヘルスケア、医療分野における訴訟リスクの高まり

VISION 2030の実現に向けて

当社グループは、社会課題視点の全事業への展開を進めています。ビジョンケア(視力補助、目の保護)やデンタルケア、医療用品や衛生製品、ユニバーサルデザイン対応といったあらゆる人々のQOL向上に資する製品・サービスの創出を通じ、様々な地域(都市、遠隔地)に生活するあらゆる人々(老若男女、病気・障害の有無を問わず)が健康・安心で快適な生活を送ることができる包摂的な社会の構築に貢献していきます。また、心身ともに健康・安心で快適な暮らしを実現し、多様な社会参画を推進する活動を通じて、より多様な価値連鎖を創造し、社会と当社グループの持続性を高めていきます。

住みよいまち

社会課題に対する認識

気候変動にともなう自然災害の激甚化や、災害発生時のインフラやサプライチェーンの途絶といった有事に備えて、防災および減災を考慮した社会の構築が望まれています。また、スマートシティ化ニーズの高まりや、DXをはじめとした技術革新にともなうインフラ・行政サービスの全体最適化が求められています。

三井化学グループにとっての機会とリスク (例)

人口規模に応じたスマートでレジリエントなまちづくり需要増加(都市のICT化・インフラ整備) 高度ICT社会に向けた人材の確保・育成
防災・減災、感染症対応製品などの製品需要増加 生産拠点の防災対策および事業の高度なリスクマネジメントの必要性増加
三井化学グループにとっての機会とリスク (例)
人口規模に応じたスマートでレジリエントなまちづくり需要増加(都市のICT化・インフラ整備)
防災・減災、感染症対応製品などの製品需要増加
高度ICT社会に向けた人材の確保・育成
生産拠点の防災対策および事業の高度なリスクマネジメントの必要性増加

VISION 2030の実現に向けて

当社グループは、まちの持続可能性を高めるべく、防災・減災に貢献する製品・サービスの拡大や、インフラの長寿命化・延命化およびネットワーク強化に貢献する製品サービスの拡大を目指します。インフラや社会基盤への貢献にあたっては、バリューチェーン全体を考慮し、ソリューション型ビジネスモデルを構築します。また、DX推進の取り組みもあわせ、グループグローバルでのデータ活用とデジタル技術の駆使による新しい価値創出を追求していきます。

食の安心

社会課題に対する認識

世界の人口増加にともない、食料供給量が不足し世界の飢餓人口が増加しています。また環境面でも、気候変動にともなう日照りや水害がもたらす食料生産への影響や、生態系の乱れから深刻化している害虫による農作物への被害などから、フードセキュリティの強化が求められます。また、過剰な供給と消費といった不均衡な需給バランスによるフードロスも飢餓人口増加の要因ととされています。フードロスは、不経済なだけでなく、生産から廃棄におけるCO2排出などの環境問題にもつながっていることから、その削減が必要とされています。

三井化学グループにとっての機会とリスク (例)

食品保存・流通技術の向上(コールドチェーンなど)への対応 フードロス・食品廃棄物の削減に資する包装容器需要の増加
食料の安定生産と供給および従事者の負担軽減に資する製品・サービスの需要増加 農薬・食品包材に対する規制強化
食品・飲料メーカーとの協業による新技術・市場の拡大 深刻な水不足等による事業活動制限リスク
三井化学グループにとっての機会とリスク (例)
食品保存・流通技術の向上(コールドチェーンなど)への対応
食料の安定生産と供給および従事者の負担軽減に資する製品・サービスの需要増加
食品・飲料メーカーとの協業による新技術・市場の拡大
フードロス・食品廃棄物の削減に資する包装容器需要の増加
農薬・食品包材に対する規制強化
深刻な水不足等による事業活動制限リスク

VISION 2030の実現に向けて

当社グループは、世界中の人々の食の安心を守るため、農薬や農業技術の革新による食料の生産性向上や水へのアクセシビリティ向上を目指します。また、省資源や気候変動の観点からも、食品包装材製品の改良や食品流通における安全・安定性の確保への貢献を通じフードロスや食品廃棄物の問題に取り組みます。

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