カガクのギモン

なぜ日焼け止めは、紫外線をブロックできる? 原理をわかりやすく解説

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素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は、紫外線から肌を守ってくれる日焼け止めの原理について。どのような成分が日焼けを防ぐのでしょうか? カガクに詳しい「モルおじさん」が答えます。

※本記事は、2019年は春号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。

イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:吉田真也(CINRA)

シミ、しわ、たるみの原因に。「紫外線」の正体とは?

新型コロナウイルスの影響で外出を控えている皆さんも、天気の良い日は少しだけ外に出たくなりますよね。しかし、夏の日差しが強いシーズンは、肌にダメージを与える紫外線が気になるところです。対策として日焼け止めは欠かせません。ところで、なぜ日焼け止めは紫外線をブロックできるのか、疑問に思ったことはありませんか? 今回も、カガクに詳しい「モルおじさん」が詳しく解説します。

カガクに詳しい「モルおじさん」

まずは、「紫外線」の正体から説明します。太陽から地球に届く光にはさまざまな種類があり、すべての光は波のような曲線を描きます。この性質により、波は山と谷をつくるのですが、山から山まで、または谷から谷までの距離を「波長」といいます。波長の長さによって、光の種類が区分されていて、その一種が紫外線です。

紫外線の波長は100〜400nm(ナノメートル ※1nm=100万分の1mm) と短く、目で見ることはできません。さらにいえば、紫外線(UV)は波長の短い順にUV-C (100〜280nm)、 UV-B (280〜315nm)、UV-A (315〜400nm)に区分されます。

光は波長が短いほどエネルギーが強く、UV-Cは生物に大きな影響を与えます。ですが、成層圏のオゾン層(※1)に吸収され、地表には到達しません。また、UV-Bも同様にほとんどが吸収されるため、地表に到達する紫外線の約90%がUV-A、残りの約10%がUV-Bとなっています。

(※1)大気中のオゾンは成層圏(約10~50km上空)に約90%存在しており、このオゾンの多い層をオゾン層といいます。

構成比は小さくとも、エネルギーの強いUV-Bは肌の表面を急速に傷つけます。一方で、UV-Aは緩やかに肌の奥深くまで届き、これがシミ、しわ、たるみなどの肌老化を招くといわれています。

日焼け止めによって、肌の守り方が違う? 代表的な2種類

こうした紫外線から肌を守るために、2種類の日焼け止めがあります。「紫外線吸収剤」を使用したものと、「紫外線散乱剤」を使用したものです。

前者は皮膚の日焼けの原理に対応したもので、化学的な仕組みにより紫外線のエネルギーを吸収するタイプ。紫外線が皮膚の細胞に浸透するのを防ぐ力が強く、なおかつ汗で崩れにくいのが特徴です。ただ、紫外線を吸収する際、微小ながら熱エネルギーなどが生じるため、敏感肌の方には刺激になる場合もあります。

紫外線を吸収するタイプの「紫外線吸収剤」

一方、後者の「紫外線散乱剤」には、酸化チタンや酸化亜鉛など紫外線を跳ね返す成分が含まれており、物質自体は変化しません。熱エネルギーなども生じないため、比較的、肌に優しい日焼け止めといえますが、汗などで流れやすい性質があります。

紫外線を反射するタイプの「紫外線散乱剤」

なお、現在市販されている製品には、吸収剤と散乱剤の両成分を配合したものもあります。同じように見える日焼け止めにも、異なるカガクのチカラが働いています。紫外線が強い夏のシーズン、自分の体質と使用環境に合った日焼け止めで肌を守ってください!

モルおじさんのひとこと

お肌の大敵でもある紫外線ですが、じつはカガクの世界ではさまざまな使われ方をしています。紫外線を当てて液体のプラスチックを固めたり、殺菌効果によって衛生的な空間を維持したり。さらには、紫外線のエネルギーを利用すれば、物体の色を変えることも可能になります。わかりやすい例でいうと、外に出るとサングラスになって、室内に戻ると普通のメガネになる調光メガネです。MOLpでは、こうした調光技術の面白さに親しみを持ってもらいたいという想いがずっとありました。そして生まれたのが、光の当たり方で色が変わるボタンを用いた洋服「CLEAR」や、幻想的な光を放つアクセサリー「SHIRANUI」です。これらの調光技術を活かしたアイテムで、一人でも多くの人に変化することの楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。