カガクのギモン

カイロはどうして温かくなるの? 「酸化反応」の原理を解説

  • Social

outline

素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は、カイロはどうして温かくなるのかという疑問。その原理と、カイロに必要な材料や役割について、カガクに詳しい「モルおじさん」が解説します。

※本記事は、2011年冬号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。

イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:中川真(CINRA)

鉄はさびると熱くなる? 身近な鉄さびでやけどをしない理由とは

寒い季節の必需品といえば「カイロ」。かじかんだ手先を温めたり、服の上に貼って屋外でのレジャーやスポーツ観戦での冷えを抑えたり。つま先用のカイロを貼って仕事や勉強をしている人もいるかもしれませんね。ところで、なぜカイロは温かくなるのでしょうか?

今回も、そんな素朴なギモンに対して、カガクに詳しい「モルおじさん」が丁寧に解説します。

カガクに詳しい「モルおじさん」

水に濡れた鉄を放置しておくと、表面が赤茶色に変色して、だんだんとさびてきますよね。これは鉄の「酸化」という化学反応です。鉄は空気中の酸素と反応して酸化鉄になるのです。実はこの酸化反応が起きているとき、同時に熱が発生しています。この熱を有効活用したのがカイロです。

でも、そのへんに転がっているさびた鉄を触っても熱いと感じたことはないですよね? それは、身の回りにある鉄の酸化反応はゆっくり進んでいるのが理由のひとつで、さらに外気で冷やされているために、触っても気がつかないだけなのです。

一方、カイロは、いくつかの材料を組み合わせて酸化反応を早めているため、温かくなります。その仕組みを詳しく見ていきましょう。

カイロをつくるために必要な6つの材料と、それぞれの役割とは?

カイロの中身は、「鉄粉」「水」「保水剤」「活性炭」「塩」の5つ。これらを「不織布の袋」に入れます。酸化させるためには酸素が必須なので、空気を通す不織布のようなものを袋にします。

不織布の袋に入れる5つの材料にはそれぞれ重要な働きがあります。

まずは、酸化反応の必需品である「鉄粉」。粉状にすることで表面積を大きくし、素早い化学反応を促すことができます。そこに「塩」と「水」を加えることによって、鉄粉がさびる速度を速めます。さらに「活性炭」はたくさんの隙間があるので、そこに空気を蓄えることができ、鉄粉に酸素を与えてくれます。そして、「保水剤」は隙間に水を蓄えて、鉄粉に少しずつ水分を供給する役割を担います。

これら5つの材料を小さな穴の開いた不織布に入れ、よく混ぜると、温かいカイロの完成!

鉄の酸化から生じる熱を利用してつくられている、カイロ。身近な化学反応と、それを促す塩や水などの「かくし味」によって、生活に役立つ便利な商品が生み出されているのです。

これからが冬本番。カイロで温まって、風邪をひかずに寒い季節を乗り切りましょう!

モルおじさんのひとこと

すっかり寒い季節になりました。クリスマスやお正月に温かいカイロは手放せませんね。今回はカガクの発熱反応がカイロに使われていることをご紹介しましたが、何かが反応するときに、逆に冷たくなる吸熱反応というのもあります。MOLpでは、山岳地帯に病気予防のワクチンを運ぶ人たちのためのアイシングパックとして、尿素と水をひとつのパッケージに入れて、使うときにぎゅっと握って混ぜあうことで吸熱反応を起こす「FASTAID」をつくりました。ラオスの子どもたちに無事にワクチンを届けることができました。