カガクのギモン

どれを組み合わせたら黒になる? 光と色の三原色を「黒ペン」で解説

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素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は、色に関する素朴な疑問。カガクに詳しい「モルおじさん」が答えます。

※本記事は、2011年9月号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。

イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:吉田真也(CINRA)

色はたった3種類の組み合わせでできている。では、黒をつくるには?

じつは、私たちが目で見て感じ取るすべての色は、たった3種類の色の組み合わせからできています。それは黒も同じです。では、黒はどんな色の組み合わせでつくられるのでしょうか?

今回も素朴なギモンに対して、カガクに詳しい「モルおじさん」が解説します。

カガクに詳しい「モルおじさん」

まず、色の素となる「原色」は3種類あり、それらを混ぜ合わせることで、ほぼすべての色をつくることができます。

ただ、光と光を重ねて色をつくるときと、絵の具などで色を混ぜてつくるときとでは、そもそも原色の3種類が違うのを知っていますか? 前者は「光の三原色」といい、赤・緑・青を指します。後者は「色の三原色」といい、シアン・マゼンタ・イエローになります。

「光の三原色」は、混ぜ合わせるほど色が明るくなり、3種の原色を混ぜると「白」になります。カラーテレビやパソコンのモニターなど、発光によって映像を映し出すディスプレイには、この「光の三原色」が使われています。

一方、「色の三原色」は混ぜ合わせるにつれて色が暗くなります。そして、その3種の原色が混ざると、「黒」になります。雑誌やチラシをはじめとするカラー印刷などで、「色の三原色」は使われています。

とはいえ、上記はあくまで基礎的な混色(2つ以上の色を混ぜてほかの色をつくること)の原理です。じつは、同じ黒に見えても、含まれている色素の種類や数が違うこともあります。ここでは身近なもので確認する方法を紹介します。あなたが普段何気なく使っている黒いサインペンは、いったいどの色の組み合わせからできているのでしょうか。簡単な実験で調べてみましょう。

いざ、実験! 意外な結果が待っているかも!?

【用意するもの】
・水性のサインペン2本(※メーカーが違うものを選んでみてね)
・吸水性のある紙(ティッシュペーパー、キッチンペーパー、コーヒーフィルターなど)
・はさみ
・透明なコップ
・水
・割り箸

手順①:紙を切って、黒い点を描く

コップのなかにちょうど収まるくらいの大きさに紙を切り、下から約2.5cmのところに鉛筆で横線を引きます。そして、横線の上に別のメーカーの黒い水性サインペンでそれぞれ点を描きます。

手順②:コップに水を入れ、紙の端を濡らす

コップの下から5 mmくらいの高さまで水を入れます。紙の上の部分を割り箸にはさんで、紙の下の先端が水につくようにコップに入れます。このとき、「手順①」で描いた黒い点が水につかないようにしてください。

手順③:すると、色に変化が……!?

しばらくすると、紙が水を吸ってどんどん上部までインクが浸透していき、色に変化が出てくるはず。色が分かれてきたら、黒インクがどんな色素を混ぜてつくられたのか、わかってきます。

色素を分離させるこの手法は、「ペーパークロマトグラフィティー」といいます。黒いインクに含まれている各色素は、水に溶けやすかったり、紙にくっつきやすかったりするので、その特徴を活かして分離させる手法です。

サインペンのメーカーによって黒いままだったり、分離したときの色味が違ったりと、結果が変わるのは、同じ黒に見えても含まれている色素の種類や数が違うから。これが、色の原理の面白さです! 早速、いろんなペンで実験してみましょう。

モルおじさんのひとこと

今回は、色の三原色についてお話しました。彩度(鮮やかさの度合い)や明度(明るさの度合い)などが少し違うだけでも変化するため、色の種類は無限大にあります。そのなかでも、人間が見分けられる色の数は、個人差や環境によっても変わるのですが、アメリカの物理学者のジャッド(Deane Brewster Judd)によると200万~1,000万色だそうです。世界はとてもカラフルなんですね! MOLpではファッションブランドのアンリアレイジと協業し、フォトクロミックの技術を使って、太陽の光を受けると、色のない「透明」からすべての色を取り込んだ「黒」へと双方向に変化する服を発表しました。その色の変化の過程では、薄い紫から濃いブルーとなり暗い黒へと変化していきます。また、地域によって太陽光の量も異なるため、色の見え方も変わるなど、環境に合わせて変化の過程が楽しめる新しい服になりました。実際に東京で試作していたときとパリやミラノの空の下で見た色は、それぞれ色が違っていて、「同じでないこと」の価値を体感しました。