カガクのギモン

黒ずんだ銀のアクセサリーがピカピカに? その方法と化学反応を解説

  • Social

outline

素材や化学にまつわる素朴な疑問をひも解く連載「カガクのギモン」。今回は、「黒ずんだ銀のアクセサリーをピカピカにするには?」という疑問にカガクに詳しい「モルおじさん」が答えます。「モルおじさん」の意外な過去も明らかに……?

※本記事は、2011年5月号として発刊された三井化学の社内報『MCIねっと』内の記事を、ウェブ向けに再編集して掲載しています。

イラスト:ヘロシナキャメラ 編集:吉田真也(CINRA)

そもそも、なぜ銀製のアクセサリーは黒ずんでしまうの?

蝉の声も一段と大きくなり、いよいよ夏本番! ファッションも軽やかになる季節になりました。そんな季節のちょっとしたおしゃれに役立つシルバーアクセサリーですが、久しぶりに見てみると黒ずんでいたことはありませんか? じつはこの黒ずみ、簡単な方法できれいに落とせるんです。夏の暑さにも負けず汗をぬぐいながら、カガクに詳しい「モルおじさん」が今回も詳しく解説します。

カガクに詳しい「モルおじさん」。首につけているのは、30年前に使用していた黒ずんだアクセサリー

そもそも銀製のアクセサリーは、どうして黒ずんでしまうのかご存知でしょうか? その原因は、アクセサリーの銀の原子と、皮膚や髪の毛のタンパク質に含まれている硫黄の原子が結びつく「硫化反応」にあります。この反応によって、銀が「硫化銀」という黒いサビになってしまうのです。

Agとは「銀」の元素記号。硫化銀は、きれいな銀に必要なマイナスの原子が欠けてしまっている状態

では、もとのきれいな銀に戻すには、どうしたら良いのでしょう。ここから、その方法を解説します!

いざ、検証! 銀のピカピカを取り戻すキーアイテムは「アルミ箔」

まず、容器のなかに水を入れて、さらに重曹(食塩でもOK)を少し入れてかき混ぜます。重曹によって水中に「電極」をつくることができます。この電極とは、簡単にいうとプラスとマイナスの電子が集まる、電気が流れやすい場のことです。

重曹を入れることで、水のなかに電極ができます

次に、丸めたアルミ箔を入れ、そこヘ黒ずんだアクセサリーを入れます。

すると化学反応が起きて、アルミ箔がマイナス極、硫化銀がプラス極の電池になります。アルミ箔は水中のプラス電子を帯びて溶け出し、硫化銀はマイナス電子とくっついてもとのきれいな銀になっていきます。前者の化学反応は、「アルミニウムの酸化反応」で、後者は「硫化銀の還元反応」といいます。

アルミ箔と硫化銀のそれぞれが持つ特性によって、きれいな銀に必要なマイナスの原子が戻ってくるのです

硫化以外の変色(汚れ、塩化など)で黒ずんでいる場合は、完全にきれいに戻らない可能性もありますが、硫化銀であれば、この方法できれいな銀に戻るはず。

また、使用した重曹水は、水質汚染で問題とされるBOD(※1)やCOD(※2)の値がゼロで環境ホルモンも含んでいないため、汚れを取ったあとの水をそのまま台所などに流しても自然環境への負荷はほぼありません。

お気に入りのアクセサリーを長く使うためにも、ぜひ今回の方法を試してくださいね!

30年前のアイドル時代の輝きを取り戻したモルおじさん!

※1 BOD:Biochemical Oxygen Demand(生物化学的酸素要求量)微生物が水中の有機物を分解したときに消費する酸素量のこと

※2 COD: Chemical Oxygen Demand (化学的酸素要求量)水中の有機物を酸化剤で酸化した際に消費される酸素量のこと

モルおじさんのひとこと

今回は、大切にしているシルバーアクセサリーの輝きを取り戻す方法を解説しました。シルバーアクセサリーだけでなく、どんなものも工夫を凝らしながら長く使用していると、新品にはない風合いが出てきて、「私だけのもの!」という愛着が湧きますよね。

海洋ごみ問題などで注目されているプラスチックも、じつはロングライフで使用できる素材なんです。私もスタッフとして参加した素材の展示会「MOLpCafé2021」(7/13~7/17開催)では、プラスチック原料の輸送に使用されるフレコン(フレキシブルコンテナ)をアップサイクルしたバッグを発表しました。

このフレコンはEVA(エチレン‐酢酸ビニル共重合体)というプラスチックでつくられており、15年もの長い間、1t(1,000kg)という重さの原料を運んだあとも、80〜90%程度の残存強度を誇る、驚くべき長寿命製品なんです。

工業用途では安全確保の面などから、15年使用したフレコンは廃棄するルールになっていますが、バッグにすれば次の10年、20年、30年先も使用できます。これまで役割を終えると廃棄されていたフレコンも、見方と使い方を変えれば実はとても優れた資源なんですね。

そんな古くて新しい資源を使用したMOLpのフレコンバッグ。これにはブロックチェーンの仕組みを取り入れた新たな仕掛けも行っているのですが、「モルおじさんの話が長い!」とのツッコミが入りそうなので、その仕掛けとそこにある素材愛については、また別の機会に……。