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MOLpがニコニコ超会議に。くられ先生、ツナっちと「超アリエナイ理科ノ実験」

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取材・執筆:宇治田エリ 写真:小坂奎介 編集:川谷恭平(CINRA)

知ってた?食品包装に活用されるさまざまな科学技術

次に、ウツミ研究員がポテトチップスを持って登場。普段、私たちが食べているスナック菓子は、なぜサクサクした食感を維持できるのでしょうかと質問した。

くられ先生に弟子入りを希望していたウツミ研究員(右)

ウツミ研究員:じつはポテトチップスの包装材料は、たくさんのフィルムが積み重なってできているんです。開け閉めがしやすいシール性のあるCPP(無延伸ポリプロピレン)、酸素や光、水蒸気を通さないアルミシート、印刷性が高いOPP(延伸ポリプロピレン)など、それぞれの素材の強みを活かした構成になっています。

ポテトチップスの包装材料の構成図

くられ先生:7層も重なっているんだね。

ウツミ研究員:商品によっては、もっと多い場合もあるんですよ。ちなみに、異素材同士をくっつけることにも技術が必要なんです。ちょっと実験をしてみましょう。

実験では普通のアルミ素材と特殊なアルミ素材を用意。それぞれをポリプロピレンと重ね、熱したアイロンで軽くプレス。すると、特殊なアルミ素材のみしっかりとくっついた。

特殊なアルミ素材にはマイクロミリメートルレベルの薄さで接着材を塗装していた
普段使っている包装材は用途に合わせてさまざまな技術が用いられている

くられ先生は「たしかに、昔に比べて最近のフィルムは開けやすくなった気がしますね。プリンのふたとか。ケーキのフィルムにはクリームがつかなくなったし、マヨネーズの容器も洗いやすくなった」とコメント。

一方、ツナっちは「ショートケーキのフィルムについたクリームをなめるが好きだったのに、最近できないのはそういうことだったのか!」と嘆き、会場の笑いを誘った。

フードロス削減に貢献するスキンパック。包装できないものはなに?

最後に紹介されたのはスキンパック包装の技術で、ステージにお寿司のネタが新鮮なまま、かたちを崩さずパックされて登場。ニコニコ生放送のコメントも「これはすごい」「食品サンプルみたい」と盛り上がった。

食品の鮮度保持を高め、フードロス削減に貢献する包装材料「ハイミラン®」を使用

ここでサトウ研究員から「このスキンパックで包装できないものはなんでしょう?」とクイズが行なわれた。

クイズは4択で、① 残ったスナック菓子、② とげとげのサボテン、③ サンドウィッチ、④ 全部

会場では「サボテンかな」「スナック菓子かも?」と意見が分裂。そこで、展示ブースにある機械を使い、スキンパックの実演をして確かめることに。

奥の機械でスキンパック包装を行なう
シートを熱で温め、上からスキンパックをかぶせて空気を抜く仕組み。スナック菓子は見事に包装成功
サボテンも成功。とげが心配されていたがスキンパックは破れなかった
最後はサンドイッチ。こちらは驚くほどパンがぺたんこに

ウツミ研究員:サンドイッチの食パンのように空気をたくさん含んだやわらかいものは、機械で空気を抜くと、そのもの自体の空気も一緒に抜いてしまうため、つぶれてしまうんです。ちなみにぬいぐるみなども、そのままパックすることはできません。

くられ先生:なるほど。私はサボテンがパックできることに驚いたな。

サトウ研究員:このシートは熱するとやわらかくなるうえ、とても強度があるので、鋭い針にも沿うことができます。次第に冷えて硬くなることで、とげを頑丈に保護してくれるんですよ。

その後、スキンパックに関するニコニコ生放送のコメントからの質問に答え、ステージは終了。来場者も、「日常のものに使われている素材が進化していることを知り、実験をとおしてその特徴やすごさを実感することができました」と満足した様子だった。

くられ先生が過激に科学コンテンツを発信する理由は?勉強のあり方を語る

10代、20代の若者を中心とする多くの方々に、素材の魅力を伝えられた今回のニコニコ超会議。ステージを終え興奮覚めやらぬなか、最後に今回のコラボレーション企画への想いや感想、MOLpの今後の活動に期待することなどを、三井化学の研究員たちやくられ先生にうかがった。

サトウ研究員:今回、私が研究者を目指したきっかけでもあるくられ先生とのコラボレーション企画を、若手である私たちが担当できてとても光栄でした。

企画はシナリオからつくり、展示ブースの計画とすり合わせながら、どんなアイテムを使えば盛り上がるか、綿密に計画を立てました。結果的に、実際にみなさんの反応や楽しんでいただけた様子をダイレクトに感じることができて、嬉しかったです。

ウツミ研究員:三井化学はこれまで、MOLpの活動などをとおして、新しい取り組みや素材の面白さを発信してきました。ですが、それが世の中に浸透しているかというと、まだまだこれからの段階。

今回、ニコニコ超会議に参加したことで、ぼくらとも年齢が近い、10代、20代の世代の方々と新たなつながりが生まれたのではないでしょうか。

また、来場者から素材に関する驚きの声をたくさんいただいて、ぼく自身も新しい素材を開発する意欲が湧きましたし、その魅力を伝えていきたいという思いも生まれました。

くられ先生:ステージでポテトチップスの包装が紹介されたように、私たちは普段、不便のない快適な生活を送っていますが、そうした便利さの裏には、三井化学のようなメーカーによる素材や技術の開発があります。

今回の実験によって、科学の驚きや発見を共有することで、若い人たちの学びにもつながるはず。MOLpの活動はユニークで、開発するプロダクトもアーティスティックなので、もっともっと注目されてもいいんじゃないかなと感じました。

くられ先生:私たちの生活を下支えするのが科学という学問ですが、いまの教育方法ではその面白さが伝わらないという課題があります。たとえば、科学の元素記号をすべて暗記したとして、テストで良い結果は出るかもしれませんが、なんの体験も残らない。

私をはじめ、薬理凶室のメンバーはYouTubeなどで科学の面白さを過激に発信していますが、今回コラボしたような実験や体験型のコンテンツを普及させることで、科学の学びのあり方を変えていきたい。

今日はファンの方々とのリアルな交流もあって、あらためてそう実感しました。「科学研究者になることが憧れ」といってくれる人がもっと増えたら嬉しいですね。

PROFILE

くられ先生Dr.KURARE

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の『アリエナイ理科』シリーズをはじめ、楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプで連載していた漫画『Dr.STONE』では科学監修を務め、フィクションと実科学の架け橋にも。TV番組『笑神様』『MATSUぼっち』の出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画をゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と共同製作。

PROFILE

ツナっちTSUNATTI

「そこらへんのクソガキ」でおなじみの薬学系YouTuber。薬理凶室のメンバーとして、YouTubeチャンネル「科学は全てを解決する」で活躍。