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素材の素材までかんガエル、三井化学の取り組み。
無印良品のイベントにMOLpが参加

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取材・執筆:宇治田エリ 写真:佐藤翔 編集:生駒奨(CINRA)

各企業の「環境をかんガエル」取り組みとは? 多様なブースをMOLpメンバーが体験!

イベント開催中、MOLpメンバーたちもほかの参加者のブースをまわった。さまざまな企画のなかから、MOLpメンバーの青木紫野、佐々木泰生が注目したワークショップを実際に体験。その内容を紹介していく。

青木が訪れたのは、鮮やかな色と繊細な絵柄の紙小物が目を引くマエダ特殊印刷のブース。

「ペタペタ模様シールづくり」のワークショップには、子どもから大人までが参加し、シールづくりを楽しむ人が多く見られた。

その内容は、シールをつくる過程でどうしても出てしまう端材をシール台紙にし、世界でひとつしかない模様のシールをつくるというもの。具体的には、通常廃棄されてしまう端材の台紙に、無印良品で梱包材として使われていた段ボールや発泡スチロールでつくったスタンプを押して、好みのデザインにし、世界でひとつしかない模様のシールを仕上げるワークショップを展開。最初は自信がないと言っていた方も、気づけば夢中でスタンプを押して、新しい模様づくりに熱中してしまうのだとか。

シールづくりの説明を受けるMOLpメンバー・青木紫野

マエダ特殊印刷は、東京深川にある1950年創業の老舗シール印刷所。工場にはオリジナルグッズを販売する「STICKER & DESIGN STORE」が併設。マエダ特殊印刷の前田努、髙岩千容の2人がグッズのデザインとイラストを担当している。繊細な線と色の豊かさ、版の重なりといった、凸版印刷という手法ならではの味わいが魅力だ。

青木:ブースを見て「シール小物がかわいいな」と思って惹かれたのですが、ワークショップも楽しそう。気軽にチャレンジできるのがいいですね。

段ボールを小さく切って、丸めたり、折り曲げたりしてスタンプに。発泡スチロールは手で千切った形を生かして使っていく。色とりどりのインクから好きな色を選んで、スタンプを押す面や押し方などを工夫しながら、ユニークな模様を探していく。

青木:最初はうまくできるかな? と思っていたけれど、スタンプを押していくうちに、形が変わっていったり、思いがけない形が出てきたりすることが楽しい。童心に戻って自由につくることができますね。捨てられるはずだったシールの端材と身近な段ボールで、こんなにすてきな遊びができるなんて知りませんでした!

続いて佐々木が訪れたのは、サントリーホールディングス株式会社のブース。ワークショップ『水を育む「天然水の森」から生まれた育林材チャーム作り』では、天然水を育むための「森の働き」を、特別な水実験で学ぶ。そして、森のなかで増えすぎてしまったために伐採された木「育林材」を活用した木工キットで「オリジナル愛鳥チャーム」をつくるという内容だ。

古くから「人と自然と響き合う」というサステナビリティに通じる企業理念を持ち、「天然水の森」(※1)という水を育むための森づくりにも取り組んできたサントリー。その活動内容に注目した無印良品 東京有明から声がかかり、イベント参加に至ったという。

サントリーブースの様子

ワークショップでは、どのようなことを伝えようとしているのか。サントリー担当者の川田ちひろさん、越野多門さん、田中省伍さんにコメントをいただいた。

川田:「森が水を育む」を軸に、水だけでなく森にもフォーカスして、森づくりのためにあえて木を切る必要があるということ、そうして切った木も「育林材」として大事に使っていることを伝える内容にしています。

越野:「天然水の森」の活動を20年以上続いているのですが、降った雨が天然水になるまで、およそ20年かかると言われていますから、そう考えるとわれわれの始めた活動がやっといま、われわれの手元に届いてきているということになります。そのように時間をかけて継続していくことの大切さも伝えたいと思っています。

田中:参加した子どもたちからは、「あまりにも身近で、水が豊かだということに、いままで気づかなかった」といった声や、天然水をつくる工場がある街に住んでいる方からは、「あたりまえにあった自然環境が、豊かで特別だということがわかった」など、水や森のことを自分ごととして考えられるようになったという声が印象的でした。

子どもたちも、どうやったら森が健康なものになるかをすごく一生懸命考えてくれて。子どもにも大人にも、未来に豊かな自然環境を引き継ぐことの大切さを伝えられたのではないかと思います。

ブースを見たMOLpメンバー・佐々木は、どのような刺激を受けたのだろうか。

佐々木:今回のワークショップに参加して、改めて資源をいかに大切に無駄なく使うか、廃棄するだけではなく循環させる仕組みに変えるかを考えさせられました。また、われわれも石油(炭素)という資源を地下から引っ張り出して、プラスチックに変えているわけですが、植物由来の資源を積極的に使っていこうとする姿勢にも共感し、刺激を受けましたね。

MOLpメンバー・佐々木泰生

佐々木:水と同様に、プラスチックもわれわれの生活に欠かせない存在です。水や森についての話を熱心に聞く子どもたちの姿を見て、彼らが大人になった未来でもあたりまえの暮らしが続くように、われわれも常に見直して、考えて、実践していかなければならないと感じました。

最適なプラスチックを選べる未来へ。MOLpが『環境をかんガエルウィーク』に参加して得た気づき

「素材の素材まで考える」というテーマのもと、2022年に「BePLAYER®」、「RePLAYER®」(※2)という2つのコミュニケーションブランドを立ち上げ、「改プラスチック」を加速させようとしている三井化学。『環境をかんガエルウィーク』に参加し、どのような手応えや課題を感じたのか。MOLpメンバーで三井化学グリーンケミカル事業推進室の松永有理と藤本恵造に話を聞いた。

松永:無印良品 東京有明では、回収の仕組みがしっかりつくられていて、生活者の方々と継続して環境についてコミュニケーションされています。そういった姿勢に共感しました。このような仕組みの中に僕たちのバイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックなどの素材が回っていくことで、環境対応の側面でも生活者の方々がより納得して物を購入する行動につながっていったらという期待感もあります。

今回ご紹介した、無印良品で回収されたポリプロピレンの衣装ケースを使い、車の部品にしようという取り組みは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの一環として豊田合成さまと一緒に進めています。無印良品で回収された使用済みのプラスチック製品がリサイクルされ、自分たちが乗っている車のパーツになる未来を実際に見て知ることで、「使い終わったプラスチック製品はリサイクルするために無印良品に持っていこう」と生活者が自主的に行動するきっかけになったらと思います。

そのような意識が広まれば、プラ製品の回収の仕組みもより効率的に回るようになるだろうという期待感を持っています。

三井化学グリーンケミカル事業推進室 松永有理

藤本:今回のワークショップでは、プラスチックが100種類以上あることに驚く声もありましたが、日本国内で商品として取引されている化学品(プラスチック含)は1万7,500種類以上もあります。地球温暖化やプラごみ問題といった社会課題の解決が急がれるなかで、これらすべての化学品を一つひとつ個別にサステナブルにしていくことは、私たちに残された時間を考えると最善策とはいえません。

そこで三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というコンセプトのもと、化学品の大元の原料を従来の石油由来から、バイオマス由来やリサイクル由来に転換する取り組みを進めています。これにより、プラスチックなどの多くの化学品を一気に再生可能なものにし、世の中を迅速に良い方向に変えていこうとしています。

バイオマス化で二酸化炭素排出量を削減しながら、徹底したリサイクルで資源循環させる。そんな「バイオ&サーキュラー」な仕組みを構築し、生活者の皆さんと対話しながらその社会実装を進め、リジェネラティブ(再生的)な社会につなげることを目指しています。今回のイベントで実際に生活者の皆さんとコミュニケーションさせていただくなかで、その実現に向け、これからも一所懸命に取り組んでいこうとあらためて思いました。

MOLpメンバーの藤本恵造

今回の『環境をかんガエルウィーク』のほか、東京有明では『四季祭』『周年祭』と、年に6回ほど環境にまつわるイベントを開催している。楽しみながら環境について考え、実践に移す方法を探りたいという方は、ぜひ参加してみてほしい。

※1 サントリー 天然水の森
https://www.suntory.co.jp/eco/forest/

※2 RePLAYER®︎ / BePLAYER®︎
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm