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ミラノデザインウィークで圧巻の存在感。「130(ワンサーティ)」が魅せる未来の可能性

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取材・執筆:モルおじさん 編集:森谷美穂(CINRA)

MagnaRectaがミラノサローネで得た実感

ミラノサローネを経てどのような変化が生まれたのか。ここからは、MagnaRectaのCTO・加藤氏と、MOLpの宮下が振り返る。

宮下:ミラノサローネの出展を振り返って、印象に残っていることはありますか?

加藤:「これは何なんだ?」「どうやってつくったんだ?」「これ3Dプリンターでつくったのか!?」と衝撃をもって受け止めていただいたことです。これからも「130」の使い道、使い方をどんどん見せていかなければならないと感じました。

宮下:来場者やデザイナーの方々は「130」をどのように受け止めていたと思いますか?

加藤:新しい技術とクラフトを融合させた、いままでに見たことも触れたこともない作品だったため、すぐに理解するのではなく、「自己消化」に時間がかかっている印象がありました。そのため、作品に触れてもらう機会を多くつくり、「130」が切り開く世界観を体感してもらうことが大事だと思っています。

加藤:MOLpの展示には感銘を受けました。正直、素材メーカーがここまでプロダクトアウトし、しかも文脈(コンテキスト)を踏まえて表現していること自体、すごいと感じています。

宮下:ありがとうございます。

加藤:たとえば、三井化学の素材を使っているとしても、単に機能的性を発揮するだけはなく、デザインの視点で素材を「読み解き直している」。これは、まさにデザインファームのようなアプローチです。

そもそも素材は、「スマートフォンのカメラレンズに必要だから開発する」といったように、機能に応じた「必要悪」として扱われがち。でもMOLpは、そうして完成された素材をいったん解体して、素材そのものの意味を再構築している。つまり、素材メーカーが自ら新しい視点を持ち、コンテキストを再解釈している。そうした点が非常に面白い取り組みだと思っています。

MOLpはミラノサローネに参加してどうでしたか?

宮下:2015年の活動開始から、「いつかはミラノで展示を」と思っていましたが、まさか急にチャンスが訪れるとは。MagnaRectaのプロジェクトに協賛できるとわかり、すぐに社内で決裁を進めました。

ちょうど研究者が現地に行けていない状況もあり、協賛によって説明者として研究者を派遣できることは、まさに渡りに船だったんです。

加藤:どのように展示内容を決めたのでしょうか?

宮下:MagnaRectaの展示文脈を崩さないことを大前提に、2024年秋に開催した『MOLpCafé2024』の「MATSURIAL」の展示から、「THE ZEN」「KODAMA TAMANE」「SLOW VASE TECH」「OLIOK」の4点をピックアップしました。

未利用資源をフィラーとして加え、一発で1点1点表情の異なるビンテージ柄を表現できる射出成型技術を用いた「THE ZEN
2019年ミラノデザインウィークで発表したGreenWiseとのコラボで生まれた植物由来ウレタンから作り出した茎道専用花器STABiO®「SLOW VASE TECH」
レセプションに華を添える和紙と素材技術で編み出した「OLIOK」

宮下:いずれも、これまでの伝統的に評価されている技術やプロダクトを、MOLpなりに再解釈し、技術や素材を加えて表現し直したものです。

プロダクトのもつ「語り」が価値になる時代

加藤:展示の反応はいかがでしたか? 来場者から気づかされたこととかありますか?

宮下:ミラノ現地や欧米から来られる方々の日本文化への理解度の高さプロダクトの機能性はもちろん、ストーリーやコンテキストといったナラティブな要素にも共感が寄せられていました。

たとえば、スマートフォンレンズに使われる樹脂「APEL®」を用いた風鈴・TAMANEは、「プラスチックからこんな音色を出るのか」と多くの人が驚かれていました。ただ、お話をしっかり聞いてみると、価値のとらえ方が全く異なっていたんです。

江戸風鈴の1点ものの成形を現代技術の3Dプリンターと三井化学の持つ音響技術を組み合わせた風鈴「KODAMA TAMANE」

宮下:『MOLpCafé2024』では、TAMANEは4,800円の値づけで完売したのですが、イタリアでの想定価格をヒアリングしたところ、安くて75€(約12,500円)、ナラティブ要素を加味すると150€(約25,000円)、体験価値も含めれば300€(約50,000円)でも売れるという声がありました。

機能的価値だけではなく、感性的価値に対してこれだけのプライスをつけることができる。そんな可能性が感じられ、「語り」こそ製品がまとう価値なんだと再認識することができました。

加藤:MOLpはこの先、どのような方向に向かっていくのですか?

宮下:日本主軸でやっていた活動を、グローバルにも振り向けていくことが考えられるかと思います。今回、初めて海外出展という機会を得て、MOLpがこれまでつくり出した文脈は世界でも通用する、という実感ができました。

グローバル化していくには、活動そのもののインプットをさらに上質に、オウンドメディアやSNS発信といった活動もやり方を変えていくことが求められるでしょう。新たな挑戦に心が躍りますね。

MOLpは研究者の「やりたい」を叶える場です。研究者ひとりひとりの声をカタチにしていきたいと思っています。

PROFILE

加藤 大直Hironao Kato

MagnaRecta共同創業者・CTO。ニューヨーク・パーソンズ美術大学卒業後、デザイナーとしてMckay Architecture / Design、Berm Design NYに勤務。2011年に帰国後、RepRap Community Japanを共同創設し、日本初のオープンソース3Dプリンター「atom」を開発。国内3Dプリンターメーカーの基本機になる。2013年3月にGENKEIを共同創業。日本におけるデスクトップ型3Dプリンタのフロントランナーとなる。2018年2月よりMagnaRectaに社名変更し未来を見越したプロダクト、サービス、事業の実装まで行っている。

PROFILE

宮下 友孝Tomotaka Miyashita

2002年青山学院大学大学院理工学研究科化学専攻を修了し、同年三井化学株式会社入社。入社後、製造、研究、生産管理、購買、営業、新規事業などさまざまな職種・製品担当を歴任し、2021年よりコーポレートコミュニケーション部 広報グループにて社外広報、ブランディング、製品マーケティング支援に従事するほか、MOLpには2015年の第1回活動から参加し、中核メンバーを担っている。