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ワクワクさんこと久保田雅人×藤原麻里菜。「無駄」からはじめるサステナブル

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素材の魅力を再発見して社会にシェアしていくことを目的に、三井化学の有志の社員が集まって活動しているMOLp。そこから生まれたさまざまなアイデアの種やプロダクトを発表する展示会『MOLpCafé2021』 が、2021年7月13日から17日まで開催される。

今回は、展示に並ぶ個性豊かな新素材やプロダクトを一足先に体感してもらうべく、日頃から「ものづくり」に励んでいるお二人をお招きした。NHK教育テレビ『つくってあそぼ』で、23年間にわたり工作の楽しさを伝えてきた、ワクワクさんこと久保田雅人さんと、頭のなかに浮かんだ不必要なものをかたちにする「無駄づくり」に挑み続ける発明家・藤原麻里菜さんだ。

初対面となるお二人に、展示予定のプロダクトを見ていただきつつ、それぞれが抱くものづくりへのこだわりや、『MOLpCafé2021』のテーマでもあるサステナビリティーについての考えなどもうかがった。そこで語られた、クリエイションにおける「無駄」の重要性とは?

※本取材は、マスク着用やソーシャルディスタンスの確保を徹底するなど、コロナウイルス感染拡大防止策を施したうえで実施しています。

取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ) 写真:玉村敬太 編集:吉田真也(CINRA)

『つくってあそぼ』を見て学んだ発想の転換が、「無駄づくり」でも生かされています(藤原)

メンバー(以下、MOLp):1993年生まれの藤原さんは、『つくってあそぼ』(1990年に放映開始)のど真ん中世代ですよね。やはり、子どもの頃からワクワクさんを見ていたのでしょうか?

藤原麻里菜(以下、藤原):はい。ワクワクさんとゴロリの工作をマネしながらいろいろつくっていましたし、ものづくりの楽しみ方においてめちゃくちゃ影響を受けました。番組で紹介していた工作用のペットボトルを用意するために、ジュースを無理やり一気に飲み干したりして(笑)。

久保田雅人(以下、久保田):それはすごい(笑)。

ワクワクさんこと、久保田雅人さん

公式YouTube動画「トイレットペーパーの芯でロケットをつくって飛ばそう!」

藤原:ワクワクさんから教わったことが、本当にたくさんあるんですよ。たとえば、ものを使うときの応用力。幼い頃の私は、乾電池を「電気を供給するもの」とだけ認識していたのですが、ワクワクさんは「重り」として使っていたことがあって。家のなかにある限られたものでなにかをつくるときは、決まった用途に捉われない発想が必要なんだなと学びました。

いま私がやっている「無駄づくり」も、自分の乏しい技術でつくるには工夫が必要で、『つくってあそぼ』を見て学んだ発想の転換が生かされていると思います。私のものづくりにはワクワクさんの精神が流れているので、今日お会いできて本当に嬉しいです!

役に立たない無駄なものを開発し続ける発明家・藤原麻里菜さん

無駄づくりの公式動画「ゴミができあがるプラモデルを文字通り作る」

久保田:ぼくのほうこそ、お会いするのを楽しみにしていました。今回お会いするにあたり、藤原さんの「無駄づくり」を拝見したのですが、まず「無駄」ってのが、とっても良いですよね。

藤原:そのお言葉、めっちゃ嬉しいです。

久保田:やっぱり、ものづくりには「無駄」が大事なんですよ。『つくってあそぼ』も、リハーサルの前に2時間くらい打ち合わせをしていたのですが、ほぼすべて無駄話でしたから(笑)。だけど、そうやって無駄なことを楽しみながら頭を柔らかくすると、いろんなアイデアが出てくるんです。それで23年も続けられた。「無駄」こそが、クリエイションの起点なのかもしれません。

藤原:ずっと見てきたワクワクさんが「無駄」を肯定してくれる日が来るとは……。ありがたいです。

久保田:ぼくは子ども向け、藤原さんは大人向けなので、一見やっていることは違うかもしれない。だけど、ものづくりにおける「根っこ」の考え方は同じだと感じます。

牛乳パックもペットボトルも、「ぼくたち、まだまだ働けるよ」って言っている気がして(久保田)

MOLp:私たちも普段からアイデアのシェアから新素材の開発、プロダクトづくりをしていまして、そのお披露目の場となる展示会『MOLpCafé2021』 を2021年7月13日から17日に開催します。今回の展示では、アップサイクルやサステナビリティーを主なテーマに掲げつつ、プラスチックという素材の本質的な価値を見出したいと考えています。お二人は、ものづくりにおいてアップサイクルやサステナビリティーを意識していますか?

藤原:最近、意識するようになりました。素材の切れ端とかどうしてもゴミが出ちゃうことはあるんですけど、できる限り材料を使い切るようにしています。端材もなるべく取っておいて別の工作に使うようにしていますね。あとは、そもそもリサイクルされた素材を優先的に使うようにしたり。

資源をただ消費していくだけだと、最終的に底が尽きてしまいますから。有限であることを意識して、ものづくりをするようには心がけています。

久保田:ぼくも、ひとつのパーツも可能な限り使い切るように意識しています。サステナブルを語る際に「もったいない」という言葉がよく使われますが、その考え方はあまり好きじゃないんですよ。どこか後ろ向きじゃないですか。もったいないから使う、じゃなくて「楽しく使い切ろうよ」という考えのほうが、ぼくはしっくりきます。

MOLp:まさに私たちも同じ考えで、「素材屋が考えるアップサイクル」として「RePLAYER」という名のプロジェクトを始動しています。「リサイクル」ではなく、「RePLAYER」という名前にすることで、「何度も楽しもうよ! 楽しみながらリサイクルしている人たちって良いよね!」という思いを込めていて。継続するには、いかに楽しむかが大事ですよね。

藤原:私も、一般的にはすぐ捨てるようなものでも、「これで、なにか面白いものつくれないかな?」っていつも考えるので共感できます。たとえば、ものを買ったときって、だいたい何かに梱包されているじゃないですか。梱包材も、一度だけ使用されたら終わりじゃなくて、次に何かを送るときに使うとか、それこそものづくりの素材として活用するのもアリですよね。

藤原さんが開発した「オンライン飲み会から緊急脱出できるマシーン」のボタン台も、モーターが入っていた空箱を活用

久保田:そうそう。牛乳パックもペットボトルも、なんでもそうなんですけど「ぼくたち、まだまだ働けるよ」って言っている気がして。だから、その声が聞けるうちは活用して、聞こえなくなったときに正しく分別して捨てるのが良いかなと。多くの子どもたちも、その声を聞ける心に育ってほしいです。

MOLp:実際、ワクワクさんは20年以上前の『つくってあそぼ』から、現在もYouTubeなどで「ものを使い切る楽しさ」を発信し続けていますよね。

久保田:ぼくや藤原さんの動画を見て「マネしてつくってみよう」「チャレンジしてみよう」という人が増えると嬉しいですね。それがまた次の世代に伝わって繰り返されることで、不要や無駄と認識されていた素材も、じつはいろんな使い方ができることに社会全体が気づいていく。そうなって初めて、本当の意味でのアップサイクルやサステナビリティーといえるんじゃないでしょうか。

動画「もっと動く、紙コップロボットをつくったよ!」

好奇心を持つことが、素材の再利用に取り組むきっかけになるかも(藤原)

MOLp:「サステナビリティー」というと、どこか高尚でとっつきにくい印象も受けます。でも、ワクワクさんや藤原さんのように、ユニークなものづくりをとおして「素材」との接点を持ち、それを再利用したり、使い切ったりするところから入ると、理解を深めやすそうですね。

久保田:横文字の単語だと、多くの人がどうしても難しく考えちゃうんですよね。藤原さんみたいに、大人がもっと頭を柔らかくしないと。

藤原:立派な考えを持っていないとサステナビリティーを語っちゃいけないとか、そういうことではないですよね。そこは、ものづくりに対する一般的な考え方にも似ている気がします。子どもの頃は、みんながワクワクさんのマネをしたりして、失敗しても楽しく工作をしていたと思うんですけど、大人になると多くの人はそれができなくなる。大人だから完成度の高いものをつくらなきゃいけないとか、ヘタなものを発表したら叩かれそうとか、余計な意識が芽生えてしまうから。

久保田:そんなこと考える必要、まったくないですよね。

「楽しみながらつくることが、いちばん大事!」

藤原:はい。大人だって、ペットボトルで工作しても良いんです。まずは「なにか面白いものをつくってみよう」と好奇心を持つことが、素材の再利用に取り組むきっかけになるのかもしれません。

久保田:大人にこそ、積極的にものづくりに取り組んでみてほしいとぼくも思っています。その姿を子どもたちに見せてあげると良いんじゃないかなって。プラスチックのストローも簡単にポイっと捨てるんじゃなくて、洗ってとっておく。そして、繰り返し使って「こんなこともできるんだ」と子どもに教えてあげると、結果的にアップサイクルにもつながりますし。

MOLp:折りしも、自宅にいる時間が増えて、家族でものづくりをするには良いタイミングかもしれませんね。

久保田:たしかに。工作に限らず、料理でもなんでも良いから、まずは家族みんなで「つくること」にチャレンジしてほしいですね。そこで失敗しながら試行錯誤していく楽しさを教えてあげれば、子どもは勝手になにかを始めますし、大人もものづくりの楽しさを思い出すかもしれない。そうなれば、身の回りの一見不要と思われるような素材も生かしながら、新たなものをつくってみるという行動も増える気がします。

藤原:自分で手を動かしてみないと、得られない情報もあると思うので、そういった意味でも、日常にものづくりの時間を取り入れるのは私もおすすめしたいです。やってみて初めて、「私はこういうふうに考えるのが好きなんだな」とか自分自身のことがわかってくる。それを積み重ねることで、私自身もアイデンティティーが形成されてきた感じがします。

だから、子どもの頃からものをつくってアウトプットするのはもちろん良いことですし、大人になってから「自分の好奇心」にあらためて気づくことも良いこと。ものづくりを思いっきり楽しむことで、いろんな発見がありますよね。

久保田:そうそう、とにかく楽しんでやることが大事。うまくできなくたって良いんです。いきなり、ぼくやゴロリみたいにできるわけがないんだから。「自分なり」を大切にしてほしいですね。そのほうが、面白いものをつくれるようになると思います。

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