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CEOメッセージ

CEOメッセージ

社長就任にあたって

ボトムアップの力を発揮し、お客様の成長を支える

私は、社長に就任する前は、経営企画部長そして経営企画担当役員としてCSO(Chief Strategy Officer)を務め、会社の方向性や全体戦略の策定や他社トップとの連携協議をリードする立場でありましたが、私のキャリア形成は、現場力に基づき生産技術を磨いた工場時代、そしてM&Aを梃にグローバル展開を進めた事業部時代の経験をなくしては語れません。これら2つの経験は、まさに三井化学グループが直面している課題にも通じます。

私は1992年に入社し、大阪工場の製造現場でケミカルエンジニアとしてキャリアをスタートしました。現場のベテラン技術者たちの中で何ができるのか、自ら考え、行動することで課題を乗り越えていく日々でした。

それから10年ほど後、アンモニアプラントの製造課長として、約40人の部下を抱える大所帯ということだけでなく、トラブルが続いていた赤字プラントの責任者を務めることになりました。当初は私が考えた計画を各担当者に渡しその通りに動いてもらいましたが、思うように成果が上がりませんでした。そこで発想を変え、私がすべての責任を負うもとで若手をリーダーとして、ベテランのサポートを受けつつも自由に考え動いてもらう体制に変えたところ、色々な提案が出てきて、皆で挑戦することができました。

挑戦して上手くいかなかったこともありましたが、上手くいったことに対して皆が自信をつけて、さらに多くの提案が出てくるようになりました。その時に初めて、皆の力を活かすことによって職場は良くなり、ものすごい力が発揮されることを体感しました。結果としてトラブルは減少し、安定生産によって価格交渉力も高まったことで採算も改善し、工場に投資もできるという好循環が形成でき、黒字化を実現しました。さらに、この取り組みを拡張しようと思い、生産改革推進室を自ら立ち上げて、会議体の見直しなども行いました。

本社に異動してからは機能化学品(現ライフ&ヘルスケア・ソリューション)の開発室で、クロスボーダーのM&Aを担当しました。それまでM&Aの経験はなく、財務の知識も十分とは言えませんでした。ただ、工場での経験で磨いたチームビルディング力を活かし、部署横断のプロジェクトチームにおいて全員の意見を取り入れながら進めたことで、何とか皆で乗り越えてディールを成功させることができました。

また、ビジョンケア材料の市場開発を担当していた際、各地域戦略などの策定は積極的にローカルの人材に委ねるようにしました。そうしたところ、それぞれの担当が地域に合った案を次々と考えてくれました。提案された取り組みは上手くいきましたし、皆が自ら動いてくれました。

これらの経験を通じて私が学んだことは、仕事を任せられて自ら成長したい、そして社会に貢献したいという気持ちはどの国の人でも共通だということです。従業員一人ひとりに成長の機会を与えることで、グローバルに人材の力を展開できると考えています。ただし、お客様の成長こそが私たちの成長であるという視点が必要です。当社グループのような化学メーカーは、ともすれば自分たちの良い製品を売り込みたいという気持ちが先行してしまいがちですが、お客様の求めているもの、お客様の成長に貢献するものがあってこそ自分たちの成長につながります。こうした考えが、この後お話する新体制下での施策に反映されています。

また、当社グループの強みは一人ひとりの力、ボトムアップの力です。会社は経営者だけが動かしているのではなく、従業員一人ひとりの力をあわせて動かすものであり、経営者がすべきことは、進むべき道を示し、その実現に向けて一人ひとりに対してきちんと成長できる機会を提供することです。そして、従業員には自らの成長に何が必要かを考え、プロとして成長し、ボトムアップで力を発揮してもらう。一人ひとりの進化が会社の成長につながり、企業価値の向上につながるのだと考えています。

VISION 2030の振り返り

激化する事業環境の中、羅針盤としてのビジョンは堅持する

VISION 2030を開始してから5年間が経過しました。5つの基本戦略を柱とした取り組みは着実に進展しており、KPIであるBlue Value®・Rose Value®製品の売上収益比率の伸張にも表れている財務・非財務の統合意識や社会課題視点の導入、ROIC思考の全社浸透も進んできていると感じています。

特にソリューション型ビジネスの構築については、従来の素材売りから脱却する上で様々な悩みや挑戦を経て、大きく社内での発想や考え方が変わりつつあります。北米で大きく利益を上げているコンパウンド事業に代表されるように、お客様の細かなニーズに対し、当社グループの持つ豊富な素材と技術を組み合わせることで代替されづらい製品を提供することができており、これが当社グループの大きな強みであるという認識も共有されていると感じます。

しかしながら、成長領域の収益拡大は、当初想定していたスピードと比較して進捗が遅れています。今後は、さらなるグローバルでの事業拡大に加え、ローカリゼーションによる用途の拡大、製品ラインアップの拡大を図っていく必要があります。その展開は製品によって違うので、様々なアプローチで顧客のニーズに応えていきます。

そのため、手段の一つとしてM&Aも引き続き検討していきます。これまでの当社グループのM&Aを振り返ると、既存製品・技術を新市場に売り込む、あるいは当社グループの強い既存市場に新規製品・技術を投入するパターンは成功確率が高く、成果を挙げています。一方で、例えば歯科材料のKulzer社に代表されるように新規市場に新規製品・技術で挑戦した案件では成果発現に時間を要しましたが、その市場を理解してきたことで現状を見定めた今後の成長と挑戦に臨めるようになりました。この度、米国Ultradent Products社を買収したことにより、長年の課題だったヘルスケア最大市場の米国での事業基盤を確立できただけでなく、予防歯科意識の高まりによる成長機会を獲得しつつ、Kulzer社および三井化学とのシナジーの最大化を追求しさらなる成長を実現してまいります。M&Aについては、今後も、案件ごとに新規・既存の領域を見極め、既存領域の延伸を基本的なターゲットとして、市場・技術ともに新規領域においては、新光電気工業(株)への出資のようにマイナー出資でスタートするなど、メリハリの効いた戦略をとることで成功確率を上げていくことができると考えています。

もう一つの課題として、ベーシック&グリーン・マテリアルズ(以下、B&GM)の赤字が続いており、再構築の加速が急務です。近年では生産トラブルが複数回発生しており、安定供給に向けた体制づくりも喫緊の課題となっています。今般の中東情勢に端を発する供給不安などから、石油化学産業が国内の産業を支えるエッセンシャルな領域であること、そして経済安全保障上の観点からもその重要性がますます再認識されています。当社グループとして、その供給責任を持続的に果たしていくためには、再編なども含めいかに強靭な事業体に転換していくかが重要です。

B&GM強靭化に向けて、東西の他社連携を通じた生産設備の統廃合についての議論は着実に進捗しており、東日本については2027年、西日本は2030年を目途にエチレン設備の一基化や最適生産体制の構築に向けた検討を進めています。さらにその先の2030年以降には、ユーティリティ設備の共有化や共同での生産技術力の向上といったコンビナート全体の強化やバイオマス、ケミカルリサイクルといったグリーン化による競争力向上が不可欠です。特に中国の技術力向上は目覚ましく、これまでのような大量生産の汎用品では対抗できないレベルまできています。現在、石油化学製品の重要性や便利さが再認識されつつある中で、今後製品のリサイクル率や環境対応製品への認知向上などで市場の創出が進めば、中国に対しては大きな障壁となると同時に、すでに他社連携を通じたケミカルリサイクルのスキーム検討やバイオマスの利用技術開発を進めている当社グループにとっては大きな優位性となると考えています。

なお、B&GMについては2027年度の分社化に向け引き続き検討を進めていますが、これは成長領域とは必要な投資判断の速さや研究開発のタイムラインなどが大きく異なっており、両者がよりそれぞれの事業に特化した体制で戦略を推進するためのものです。改めて強調しておきたいのは、この両軸は車の両輪のように等しく重要だということです。石炭、そして石油化学から続いてきた当社グループの技術はその多くがB&GMに集約されており、そうした技術は成長領域の拡大においても必要不可欠です。根本にある当社グループとしてのDNAは共有し、互いに連携しながら成長していくことを目指します。

VISION 2030の策定時から事業環境は急速に変化しており、化学業界はグローバルに大きな転換期にあります。目指す姿や基本戦略の大きな方向性に変わりはありませんが、それを実現する戦術は変えていく必要があると考えています。

VISION2030

新体制下の経営方針

100日プランの策定・実行を通じて成長と進化を実現し、
企業価値向上への道筋を拓く

こうした中、新たな経営体制として打ち出したのが「三井化学グループの成長と進化」というキーワードです。これは強みを伸ばし収益を拡大していく成長3領域に加え、これまでの大量生産のような量的な拡大ではなく、他社と連携しつつ新たなあり方を模索し、進化していくB&GMという両軸を意識しています。そして、この成長と進化を実現するためには、従業員一人ひとりが技術を伸ばすとともに、新たな領域のスキルを身に着けていくことが必要です。だからこそ、まず私はCEOとして従業員には「お客様の成長」「一人ひとりの進化」に取り組んでほしいと語っています。従業員一人ひとりの進化が、当社グループの進化につながります。その結果として事CEOメッセージ業が成長・進化し、お客様の成長を支え、当社グループの企業価値が向上すると考えています。

さらに、全社一丸となって迅速に行動していくためには、横串機能としてCxOの役割が重要だと考えています。各CxOが先頭に立って「三井化学グループの成長と進化」を牽引していくことが必要です。これらの考えのもと、各機能部門およびコーポレート部門が主体となり、私を含めその責任者である各CxOが週に一度集まり議論を行い、4つの課題についてあるべき姿を描くとともにその実現のための骨太計画を100日間かけてつくり上げました。

2030年目標の骨太計画

2030年目標の骨太計画
2030年目標の骨太計画
2030年目標の骨太計画
2030年目標の骨太計画

あるべき姿

お客様の「成長」を支えるソリューションパートナーへ

あるべき姿の1つ目は、「お客様の『成長』を支えるソリューションパートナー」です。ここでは、お客様起点での技術の進化・事業化と、グローバル技術サービス拠点戦略を通じたソリューション提供力の強化を検討課題としています。

まず本来技術は、「お客様の使われ方・意思決定」に適合して初めて価値化されるものです。そのためには、これまでの「技術」起点から「お客様の未解決課題」起点へと転換し、お客様とのコミュニケーションを通じてコア技術を進化させていきます。さらに研究初期から生産技術が関与し、加工・組立・自動化・DXを統合して量産・収益まで設計されたテーマとし、試作から販売まで一気通貫した生産技術によりお客様にソリューションを届けます。

また特に成長領域は、高成長・高収益のグローバルスペシャリティ実現に向け、今後さらに海外売上収益比率を伸ばしていくためには、各地域のローカルのお客様にも積極的にアプローチしていかなければなりません。

例えば、現在急成長中のインドのモビリティ市場においては、これまでのように安価な製品だけでなく、高級感や差別化できる素材のニーズがローカルメーカーの間でも高まっており、それは幅広い素材と技術を組織横断的に活用できる当社グループだからこそ応えられる領域です。こうしたニーズを拾い上げていくため、グローバルに展開する技術サービス拠点を足掛かりとして各地域の研究開発機関などとの連携を進めることで、日本主導ではなく、よりローカル市場に密着した研究開発体制を確立していきます。すでにモビリティの複合材やコーティング・機能材などの領域では海外拠点に根差した地産地消的な体制ができており、これを今後も幅広い事業に拡大し、各拠点が自走していくことで、三井化学は日本の会社だったのかと驚かれるような、真のグローバルスペシャリティカンパニーを目指していきます。

あるべき姿に向けた強化策

AI・DXの活用を通じて、プロ集団を目指す

あるべき姿2つ目の「技術を伝承・『進化』させるプロ集団」においては、工場オペレーションの平準化や保全技術の高度化に取り組んでいきます。従来はそれぞれの生産品の工場ごとに文化ややり方が異なっていました。しかし、今後他社との連携も深めていく中で、互いの生産技術を融合するためには標準化が不可欠となります。細部の作業に至るまで同一化する必要はなく、いわば骨格の部分を共有することで、誰にとっても安全・安定に動かせる工場を実現していきます。

また、ベテランから若手への技術伝承も目下の大きな課題です。これまでは背中を見て学ぶような職人的暗黙知のやり方でしたが、これからはAIやDXなどのテクノロジーをフル活用することで、個人に蓄積していた知識をデータ化し、形式知として受け継いでいく必要があります。当社グループには100年の歴史があり、その中で積み上がった知識や事例を活用できることは、中国をはじめとする新興勢力に対抗する上で大きな強みにもなり得ます。標準化とAIによる作業軽減、さらに人の力による技術伝承と絶え間ない生産技術向上により、安全安定運転と競争力強化を図っていきます。

3つ目の「一人ひとりが『進化』し続けるグローバルプロ集団」においては、当社グループが目指しているグローバルスペシャリティカンパニーを実現するために必要な人材とは何か、という問いを起点に検討を行っています。グローバルの競争環境は刻一刻と変化しており、従業員一人ひとりがそれに応じて役割・思考・関係性を変え続け自らをアップデートするとともに、顧客・市場起点で意思決定し、異文化・異分野を越えて価値共創できる柔軟性を持つことが求められます。会社としてはそのための挑戦・越境・学び直しの機会を提供することで、キャリアを自律的に進化させ続けるグローバルプロフェッショナルを育成します。加えて働き方の変化や労働力不足が叫ばれている中、それを補う形でのAI・DXツール活用や、前述のソリューション提供力強化のためにも、これまで以上に各地域の多様なローカル人材が活躍する企業グループを目指します。

4つ目の「効率と『成長』を両立し価値を最大に『進化』」は、日々の業務におけるDXツールの活用といった生産性向上施策だけでなく、高ROIC事業へのシフトやデータドリブン経営の実現といった経営の次元においても競争力を高めていく方策を検討していきます。これにより、成長領域の稼ぐ力向上とB&GMの改革加速により生み出した営業キャッシュ・フローをはじめとする財務資本、そして前述のようにテクノロジーを通じて強化した製造資本や知的資本、人的資本といった経営資本を最高効率で活用することで、DXを通じたCX(企業変革)を目指します。

4つの骨太計画にはそれぞれチャレンジ目標を定め、2030年に向けて、ボトムアップの力を結集し、各目標を実現していきます。

新社長としてのミッション

自ら考え、自ら誠実に行動することで、
ステークホルダーとともに成長できる三井化学へ

自ら考え、自ら誠実に行動することで、ステークホルダーとともに成長できる三井化学へ

当社グループには長い伝統と、世界トップクラスの製品・技術力があり、成長ポテンシャルも大きいと考えています。今後AIやDXといったテクノロジーをしっかりと活用していくことで、埋もれていた過去の技術や知識も新たな価値を生み出すものとなると思います。その上でグループの知恵を結集し、あるべき姿に向けた取り組みを着実に策定・実行していくことで、真のグローバルスペシャリティカンパニーになっていけると信じています。

そのためには、冒頭で申し上げた通り、従業員一人ひとりの力とモチベーションを最大限に引き出していかなければなりません。私にとって企業価値を向上させるということは、会社の経済的・財務的な価値を高め続けると同時に、そこで働く従業員やステークホルダーの皆様がやりがいを感じて成長し、進化し続けていける場という非財務的な価値を高めていくことです。

私は様々な経験の中で、「自ら考え、自ら行動する」ことを自分のモットーとしてきました。現在は、そこに「誠実」を加えた「自ら考え、自ら誠実に行動する」という言葉を、社内で積極的に発信しています。考えと行動はセットでなければ意味がありません。そしてそれは、世の中や身近な人に対して誠実なものでなければなりません。私はリーダーとして、あるべき姿を示し、実行力を持ってこの転換期を乗り越える組織をつくっていくことで、ステークホルダーの皆様とともに成長できる企業グループを目指していきます。