新規ブタジエン製造技術の開発について
2010年3月1日
三井化学株式会社
当社(社長:田中稔一)は、エチレンからブタジエンを効率的に製造する新技術を開発しました。この技術は、大きく2つの触媒反応から成り立っており、今般以下の新規触媒の開発に成功しました。(概略図ご参照下さい)
新規エチレン二量化触媒 (エチレン⇒ブテン) | 固体触媒として世界で初めて高活性かつ長寿命を実現、シンプルなプロセスにより、高い競争力を持っています。 |
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新規脱水素触媒 (ブテン⇒ブタジエン) | 従来触媒に比べて高活性かつ高選択率を実現、高い競争力を持っています。 |
ブタジエンは、主に自動車タイヤ向けの合成ゴム原料として使用され、中国などのモータリゼーションの影響により、アジアを中心に高成長が見込まれております。一方、供給に関しては、その殆どがナフサクラッカー由来であるため、今後、中東ガスベースの安価な汎用エチレン誘導品の流入により、アジアのナフサクラッカーは減産となりブタジエンの生産も減少し、数年後にはアジア全体で100万トン以上ものブタジエンが不足するとも言われております。
また、前述のとおり国内ナフサクラッカーの稼動率低下が懸念されるため、エチレンの高付加価値製品への転換によるナフサクラッカーの生き残りが課題とされております。
今回当社が開発したこのエチレンからブタジエンへの製造技術は、ブタジエンの需要増に対応すると共に、エチレンの高付加価値化により、国内ナフサクラッカーの競争力強化を可能とするものです。
さらに、当社はブテンとエチレンからプロピレンを製造する独自の高性能触媒を使用したメタセシス技術を保有しており、今回の技術とメタセシス技術を組み合わせることで、エチレンからブタジエンおよびプロピレンを自在に製造することが可能となります。
当社はこれまで、以下のとおりナフサクラッカー競争力強化策を進めてまいりました。
1. エチレン誘導品の高付加価値化
- 中東の影響を受けやすいエチレン誘導品のEOGにおいて、市原工場の同プラントを停止(09年7月)
- 高付加価値エチレン誘導品である「エボリュー」(メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン)の副原料1-ヘキセンの製造設備新設(2010年10月完工)
- 「エボリュー」既存プラント増強計画(24⇒30万トン/年)
2. プロピレンセンター化推進
- 大阪工場における日本初のメタセシスプラント運転開始(2004年9月)
- 市原工場における高効率プロピレン生産システムの実証設備運転開始(本年1月25日)
これらの対策に加え、今回開発したこの新技術の開発を進めることにより、更なる競争力強化を図り、当社ナフサクラッカーの“勝ち残り”を実現します。
なお、本ブタジエン製造技術につきましては、現在、研究ベースでの技術開発に成功した段階であり、2012年を目途に工業化に対応した技術の確立を目指してまいります。
国内におきましては、既存設備の転用等含め早期に量産化に移行できる方策を併せて検討いたします。
さらに、技術確立と並行して、海外展開も視野に入れたビジネスモデルの検討を進めてまいります。
本件に関するお問い合わせ先
三井化学株式会社 広報部長 裾分 啓士 | TEL:03-6253-2100 |
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以上