日本語 English

DMI®(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)

非プロトン性極性溶媒

DMI® は三井化学の登録商標です。


主な用途

反応溶媒(医薬・農薬合成用、高分子合成用)、洗浄剤、添加剤、溶剤、表面処理剤 等

概要

DMI®は、極性の高い非プロトン性溶媒です。その優れた溶解力、安定性、高品質を利用し広範囲の分野で使われています。

CAS番号化学品名別名
80-73-91,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
1,3-Dimethyl-2-Imidazolidinone
DMEU
ジメチルエチレンウレア
ジメチルエチレン尿素
Dimethylethyleneurea
1,3-Dimethyl-2-imidazolidinone 1,3-Dimethyl-2-imidazolidinone

規格項目規格値
外観(常温)無色透明液体
色相(APHA)50以下
純度(GC%)98.0以上
屈折率 ( n25D1.468 ~ 1.473
水分(wt%)0.10以下

物理的性質

沸点・引火点が高く、凝固点が低いため、取り扱い易い物性です。
(沸点:222℃、引火点120℃(開放式)/ 95℃(密閉式)、凝固点7.5℃)

安定性

一般的な非プロトン性極性溶媒に比べ、酸・アルカリ存在下でも安定です。
特に高温化における耐酸性、耐アルカリ性が優れています。

溶解性

高い誘電率と双極子モーメントにより、無機及び有機の各種化合物に対し高い溶解性を示す。

荷姿正味重量
一斗缶18㎏
鉄ドラム缶200㎏

物理的性質

類似溶媒に比べて誘電率、双極子モーメントが共に大きな値を有し、溶解性、溶媒和効果が高い。

DMI®の物理的性質

       b.p.(℃)m.p.(℃)誘電率(25℃)双極子
モーメント
引火点(℃)粘度(20℃)
DMI2227.537.64.05-4.091201.94
DMF153-6137.63.86530.92
DMAC 165.5-2037.83.72660.92
NMP220-24324.0981.31.67

注:測定温度は25℃

安定性

強酸、強アルカリ存在下でも非常に安定。

DMI®の安定性

◆ 酸に対する安定性(N2気流下)

 DMI残存率(%)NMP残存率(%)
0hr12hr0hr12hr
50%硫酸(15g)/DMI(30g), 100℃10010010077

◆ アルカリに対する安定性(N2気流下)

 DMI残存率(%)NMP残存率(%)
0hr12hr0hr12hr
フレークNaOH(3g)/DMI(30g), 200℃10010010069
粉末K2CO3(3g)/DMI(30g), 200℃10010010086
溶解性

無機及び有機の各種化合物に対して高い溶解性を示す。

DMI®の溶解性

[例]DMI®に対する有機・無機化合物、各種樹脂の溶解性

無機化合物 g/100g(℃)有機化合物 g/100g(℃)
AgNO3
AlCl3
FeCl3
I2
KCN
K2CO3
KI
KSCN
LiBr
NaI
PCl3
P2O5
Mg(ClO42
ZnCl2
50(60)
35(20)
>50(20)
>150(20)
0.03(20)
< 0.01(20)
30(60)
50(80)
9.3(20)
>200(20)
>50(20)
70(20)
>50(60)
50(60)
デカブロモジフェニルエーテル
ステアリン酸
ステアリルアルコール
エチレンビスステアリルアミド
1.1(25)
28.4(25)
19.2(25)
0.04(25)
有機溶媒(常温)
アセトン
アニリン
イソプロピルアルコール
メタノール
エチレングリコール
可溶
可溶
可溶
可溶
可溶
溶解性 %(℃)
アクリル・スチレン樹脂
エポキシ樹脂
ポリスチレン
>45(20)
>100(20)
>45(20)

他極性溶媒との溶解性比較

[単位: g/100g]

 DMI®DMFNMP
CaCl25(20℃)0.5(r.t.)
FeCl3>50(20℃)>20(r.t.)
I2>150(20℃)>25(r.t.)
KCN0.03(20℃)0.22(r.t.)
K2CO3<0.01(20℃)0.05(r.t.)
KOH<0.1(25℃)0.1(r.t.)
LiBr9.3(20℃)25.5(25℃)
NaBH411.4(25℃)25.5(r.t.)
NaBr3.2(20℃)5.5(25℃)
NaCl0.05(20℃)<0.05(r.t.)0.02(25℃)
NaCN0.02(20℃)0.76(r.t.)
Na2CO3<0.01(20℃)<0.05(r.t.)
NaI>200(20℃)14.4(r.t.)28.8(25℃)

(出典:溶剤ハンドブック)

1. 反応溶媒

DMI®はその高い誘電率と溶媒和効果により、アニオンの求核反応、カチオンの溶媒和を経る反応を促進する作用を持っています。
また 熱的、化学的に安定であり、有機化合物および無機化合物の両方に対して優れた溶解力を持っています。
反応溶媒として極めて有用なため、医農薬合成等の様々な反応に用いられています。

アルドール縮合反応

抗炎症剤として有用なベンジリデン誘導体製造の反応溶媒。

アルドール縮合反応

硝酸化反応

抗炎症剤、鎮痛剤等に使用される(S)-ナプロキセン-4-ニトロキシブチルエステル製造の反応溶媒。

硝酸化反応

アルキル化反応

γ-ブチロラクトンのアルキル化合物製造の反応添加剤。

アルキル化反応

シリルエーテル化反応

医薬中間体に使用されるシリルエーテル化合物製造の反応溶媒。

シリルエーテル化反応

アセチレン置換反応

医薬中間体に使用される置換アセチレン化合物製造の反応添加剤。

アセチレン置換反応

置換反応-1

除草剤として使用されるトリアゾール誘導体製造の反応溶媒。

置換反応-1

置換反応-2

殺菌剤、防カビ剤、殺虫剤、除草剤などの中間体として使用されるテトラフルオロエトキシベンゼン類製造の反応溶媒。

置換反応-2

DMI®は耐熱性に優れた熱可塑性樹脂の製造溶媒として最適です。ポリマーの製造において、優れた溶解能とカチオン溶媒和により反応性を向上させ、高温、アルカリに対する高い安定性により、副反応を抑制します。

  • ポリアミド類、ポリイミド類の製造では、アミド基あるいはイミド基の生成反応速度を高め、高分子量のポリマーを得ることができます9)
  • ポリフェニレンスルフィドの製造では、イオン性不純物の少ない、電子部品に最適なポリマーを得ることができます10)
  • ポリエーテルスルホンの製造では、副反応を抑え、高品質のポリマーを得ることができます11)
  • ポリイミドのフィルム成膜、ポリエーテルケトンフィルムの延伸、ポリスルホン膜の生成においてDMI®を使用すると、均一で優れた品質が得られます12)

9) 特開昭63-108027
特開平 5-140308
10) 特開昭63-268740
11) 特開平 5-86186
12) 特開昭61-195130
特開平 3-13314
特開昭62-19209

求核置換反応-1:フェニルエーテル類

求核置換反応-1:フェニルエーテル類

求核置換反応-2:アミノ化合物

求核置換反応-2:アミノ化合物

求核置換反応-3:フルオロベンゼン類

フルオロベンゼン類

還元反応

還元反応

酸素酸化反応

酸素酸化反応

Kolbe-Schmitt反応

Kolbe-Schmitt反応

自己縮合反応

自己縮合反応

2量化反応

2量化反応

付加反応

付加反応

ハロゲン化試薬との反応(脱水化剤)

DMI®はホスゲン、オキザリルクロライド等のハロゲン化試薬と反応し、脱水化剤として有効。

ハロゲン化試薬との反応(脱水化剤)

2. 洗浄剤

DMI®は強い溶解力を持つため、塗装剥離除去剤やフォトレジスト剥離液など洗浄剤に使われています1)

機器付着物

効果的な塗装除去性と良好な作業性を有する、アクリル系、メラミン系、ウレタン系樹脂の塗装剥離除去剤に使用した特許例2)
評価試験後、塗装樹脂、プライマー樹脂に変化が観察された場合、プライマー樹脂が分解または膨潤剥離された場合は◎印、塗装樹脂が分解または膨潤剥離された場合は〇印、一部溶解または分解または膨潤剥離が認められた場合は△印、変化が認められない場合は×印の覧にそれぞれ変化した個数を示した(試験試料は5個とした)

洗浄剤組成分率(wt%)温度(℃)評価試験例
×
<実施例>
DMI®/EtOH
90/1050~1005   
<比較例>
塩化メチレン
10040  32
DMF10050~100  32
DMSO10050~100  41

※プライマー有りポリオレフィン系樹脂部品にメラミン・アクリル系硬化性塗料を塗装
(塗装Ⅰと塗装Ⅱでは塗装樹脂、プライマー樹脂の化学組成が異なる。)

電子材料

銀や銀合金などに対して腐食性がなく、フォトレジスト及びフォトレジスト変質層に対して高い剥離性を有するフォトレジスト剥離液に使用した特許例3)

 フォトレジスト剥離液組成分率
(mass%)
評価結果
フォトレジスト剥離性フォトレジスト変質層
剥離性
銀合金
に対する腐食性
実施例DMI®/2-(2-アミノエトキシ) エタノール70/30
比較例1DMI®/モノエタノールアミン70/30×
比較例2DMI®/トリエタノールアミン70/30××
比較例3DMI®/N,N-ジエタノールアミン70/30×
比較例4DMI®/2-(2-アミノエトキシ) エタノール/水60/30/10××

※剥離性:◎=除去可、○=僅かに残りあり、×=除去不可

※腐食性:◎=変化なし、○=一部変色発生、×=変色発生・光沢度変化・一部膜剥れ発生

【試験方法】

フォトレジスト及びフォトレジスト変質層剥離性評価 : ドライエッチングを行った評価用基板をフォトレジスト剥離液中に70℃、10分間浸漬させ、光学顕微鏡及び電子顕微鏡により剥離性を評価

 

銀合金腐食性 : ガラス基板上に成膜した銀合金をフォトレジスト剥離液中に70℃、10分間浸漬させ、光学顕微鏡及び電子顕微鏡により腐食性を評価

 

1) 特公平 7-15111
特開平 6-228591
2) 特許第2924323号
3) WO2005/022268 A1

3. 添加剤

DMI®は接着剤、ゴム加工助剤、および電解液などの添加剤として用いられています。

接着剤

良好な保形性を維持し、初期タックの低下がなく貼り合せ可能時間を延長でき、更に難接着性の加工紙でも接着できる優れた接着性と強力な接着力を持つ、ポリビニルピロリドン主成分のスティック状接着剤に使用した特許例4)

 実施例比較例1比較例2
接着剤成分※a) 95部95部95部
添加剤DMI® 5部ε-カプロラクタム 5部なし
接着強さ試験結果※b) 100%90%30%
硬度試験結果※c) 1.011.510.98

※a)接着剤組成:ポリビニルピロリドン=27部、ステアリン酸ナトリウム=8部、水=50部、グリセリン=10部

※b)接着強さ試験:上質紙同士を貼り合わせ、三日後に引っ張り剥離した時の紙破率

※c)硬度:12.5gの針が10秒間で進入する距離(mm)。距離が小さいほど硬度が大きい

ゴム加工助剤

加工助剤の添加による反発弾性悪化、カーボンブラックの分散による加工性悪化などを回避できるゴム加工助剤の変性剤に使用した特許例5)
ゴム組成物を用いてASTM D2230-77A法に従い、押出加工性を評価

 変性剤液状ゴムの
重量平均分子量
液状ゴム
添加量※d)
60℃反発性※e) ウェットスキッド抵抗※f) 押出加工性
実施例DMI®6,00010596116
比較例なし6,00010555812

※d)液状ゴム添加量はSBR100gに対する重量部数

※e)60℃の雰囲気中に放置した試験片をJIS K-6301に従って測定

※f)ポータブルスキッドテスター(英国スタンレー社製)を用いて23℃でASTME-303-74の路面で測定

電解液

高い比伝導度を示すと共に熱的にも安定であり、更に低温においてもジアザビシクロアルケン類カルボン酸塩の溶質が析出しない、電解液の溶質析出防止剤として使用した特許例6)

 電解液組成(wt%)比伝導度
(30℃,ms/cm)
初期熱処理後
実施例溶質(25)
γ-ブチロラクトン(70)
DMI®(5)
7.17.2
従来例1溶質(20)
γ-ブチロラクトン(65)
エチレングリコール(15)
7.04.9
従来例2溶質(10)
γ-ブチロラクトン(90)
4.54.5

溶質:フタル酸モノ-1.5-ジアザビシクロ [4.3.0] ノネン-5塩
熱処理:150℃,10時間

電解液

4) 特開平11-189757
5) 特開平3-281645
6) 特開平9-7895

4. 溶剤

DMI®をインクジェット記録用インクの溶剤として用いることで、記録濃度、耐乾燥性および保存安定性を向上させることが知られています7)

 

7) 特開平 4-339873
特開平 6-172690

5. 表面処理剤

ナトリウム、カリウムおよびリチウム金属のポリアリル錯化合物分散体をDMI®に溶解した液(エッチング剤)で、フッ素系樹脂であるテフロンの表面を処理するとエポキシ樹脂系接着剤による接着強度が向上します8)

 

8) USSR pat 583994 特開昭54-84501

PDFカタログ

日本語

サイズ
1 MB
日本語

English

サイズ
998 KB
English

製品に関するお問い合わせ

パーソナルケア材料事業部
TEL 03-6880-7451
FAX 03-6880-7561