経済・環境・社会の3軸経営を深化させ、ポストコロナ社会を見据え、新たな改革に踏み出していきます。 経済・環境・社会の3軸経営を深化させ、ポストコロナ社会を見据え、新たな改革に踏み出していきます。

新たな船出に向けて私たちの未来の「ありたい姿」を深く考える機会。

私たち三井化学グループは、2016年に策定した長期経営計画「VISION2025」の目標に向かって、「経済」「環境」「社会」から成る3軸経営を深化させ、社会課題解決に向けた取り組み、ポートフォリオ変革を進めており、まもなく折り返しの時期を迎えようとしています。
この4年の間にも当社グループを取り巻く社会環境は大きく変化しました。プラスチック問題やCO2削減などサステナビリティに対する意識はさらに高まり、また、デジタルやバイオなどの技術革新も予想を超えるスピードで進展しています。
そして今、世界は新型コロナウイルス感染症拡大というかつてない危機に直面しています。
私は、このような事態の最中、2020年4月に社長に就きました。事業環境は厳しい局面を迎えていますが、私はむしろ、この状況をアグレッシブに捉えています。長期経営計画の折り返しにあたり、改めて、事業や組織のあり方を探りつつ、持続的に発展するために何をすべきかを見つめ直す機会であると考えています。今後、「グローバルに存在感のあるサステナブルな企業グループ」となるために、私たち自身を再定義していきます。

長期経営計画の進捗ポートフォリオ変革により、
着実に成果に結びつきつつある長期経営計画。

経済軸ではポートフォリオの変革に取り組み、財務基盤も整ってきました。環境・社会軸においても、新しい視点を取り込んでいく必要はあるものの、多くの成果を生み出しています。2019年度は、世界的な景気の停滞などの影響もあり営業利益は前年度を下回る結果となりましたが、長期経営計画は着実に進んでいると考えています。
当社グループは、長期経営計画に基づき3つの成長領域「モビリティ」「ヘルスケア」「フード&パッケージング」を掲げ、これらの分野で積極的な投資を行っています。
「モビリティ」では、2019年度は世界的な自動車減産を受け需要が停滞し、2020年度においてもコロナ禍の影響により、厳しい事業環境は続くと見込んでいます。しかし、自動車分野における軽量化や電動化といったニーズは中長期的には拡大すると予想され、多種多様な機能樹脂のラインアップに加え、グループトータルでのソリューション提案力を武器に、顧客ニーズに応えていきます。また、ICT用途に強みを持つ機能性ポリマー製品についても、能力増強を既に意思決定しており、立ち上げ・収益化を急ぎます。
「ヘルスケア」では、技術力や顧客基盤に強みを持つメガネレンズモノマーは堅調な成長を見込んでおり、次の能力増強について意思決定を進めていきます。不織布については、衛生材料用途に加え、5G、自動車向けの需要増加を見込み、産業材用途への拡大を進めます。歯科材料については、デジタル化の急加速を視野に入れ、グループリソースを挙げての連携強化により、日本・アジアでのプレゼンス拡大を図ります。
「フード&パッケージング」では、5Gの普及などにより産業用フィルムの需要が拡大しています。当社グループは、台湾に新工場を完成させ供給能力を1.5倍とするなど積極的な対応を図っており、今後は投資の回収を進めていきます。また、農薬新規原体テネベナール®は多角的な分野で需要が期待でき、さらなる増産を検討中です。
一方、収益の安定化を目指している「基盤素材」は、これまで継続して取り組んできた構造改革により、課題であるボラティリティは確実に低下していますが、収益性の低さは否めず、もう一段の構造改革に取り組みます。地産地消やダウンフローなど、さらにテコ入れすることで再構築を果たせるものと考えており、広い視点から2020年度中に方策を探り、即効性のあるものと、じっくり取り組むものに分けて施策を講じていきます。

長期経営計画の見直し長期経営計画の折り返し地点を迎え、
改めて未来の「ありたい姿」を議論する。

冒頭お話ししたように、長期経営計画策定時と比べて、社会環境は大きく変化しています。そこで、折り返し地点を迎えるこのタイミングで長期経営計画の見直しを進めています。計画の着地点を2030年頃に改め、自分たちの会社としての「ありたい姿」を議論しているところです。一度視線を高くして2050年頃の社会を想像し、そこからバックキャストで目標を再設定していきます。
これまでの4年間を振り返ったとき、反省点の一つとして実行力の不足が挙げられると考えています。長期経営計画では新規事業や研究開発への積極的な投資を戦略に掲げていますが、計画どおりに進んでいない分野がいくつかあります。新しいプランを立てるまではよいのですが、それを実行する力が足りていないのです。
それはポートフォリオの変革でも同じようなことがいえると思います。これまでは、化学材料を起点とするB to Bビジネスに重心を置いてきましたが、長期経営計画では、そこからさらに踏み込み、B to Cビジネスへの拡大を目指しています。分かりやすく言うならば、野球のルールに慣れ親しんできたプレイヤーがサッカーのフィールドに立とうとしているわけです。これだけの大きな変革には、実行に向けた強い意志が必要です。実行に移せない要因がどこにあるのか、現在検証を進めています。
この「ありたい姿」の検討は、30代後半から40代の中堅社員が中心となって進めています。なぜなら、着地点となる2030年頃には、彼らが当社グループの中核となって実行する立場にあるからです。多少尖ってごつごつしていて不器用な絵だとしても、実行する当事者たちが描くことが大事だと私は思っています。
最終的には、このような演繹的なアプローチと、各事業に根ざした帰納的な視点を合体させて策定します。2020年度末には方向性を打ち出し、2021年度前半には具体的な施策をまとめたいと考えています。現在の長期経営計画で掲げている数値目標の再設定も議論の対象にしています。さらに社員たちの実行力やモチベーションを高めていくための企業文化や組織づくりなど、無形資産の最大化に向けた議論にまで深めていきたいと考えています。

ポストコロナ社会を見据えて安定した事業基盤を整えるとともに、
新しいビジネスチャンスを速やかに掴んでいく。

現在まさに進行中のコロナ禍やその後の社会変化については見通せないことが多く、私たちの事業にどのような影響が及ぶのか、明確な答えを導き出すのは難しいと思います。2020年度は厳しい目線で計画を立てていますが、さらなるダウンサイドリスクに備えてキャッシュ・フローの確保には万全を期しています。一方、「ヘルスケア」や「フード&パッケージング」の領域では需要の拡大が見込まれる分野もあり、このようなビジネスチャンスを速やかに掴んでいきます。
ポストコロナ社会におけるキーワードとしては、やはりまっ先にデジタライゼーションが挙げられるでしょう。当社グループでもテレワークを拡大し、それなりの成果をあげています。しかし、製造の現場など対応しきれない職場も多く、今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など新しい働き方やその評価の仕組みなど改革が必要になると考えています。
また、サプライチェーンにおける課題も世界的なコロナ禍によって浮上してきています。グローバル化の推進によって、当社グループのサプライチェーンも多様化・複雑化しています。ブロック経済の台頭や米中貿易摩擦の拡大などを踏まえ、私たちが進めてきた地産地消体制のあり方などについて検証を加え、必要に応じて再構築を検討していきます。

新型コロナウイルス感染症への取り組み

新型コロナウイルス感染症への取り組み。

(2020年6月末までの情報に基づいて作成)

アイソレーションガウン
アイソレーションガウン

充実した財務基盤と積極的な成長投資大幅に強化された財務基盤。
成長投資とM&Aにおける攻めの姿勢は変わらない。

財務基盤の強化については長期経営計画でも継続して取り組んでおり、社会の急激な変化に対応できる充実した基盤を整えています。現在のコロナ禍の経済環境はリーマンショック時とよく比較されますが、当社グループは当時と比べても収益力は大幅に改善されており、Net D/Eや手元流動性比率などにおいても高い水準を保持しています。
これら充実した財務基盤をバックボーンに、将来への投資も継続して進めていきます。投融資については、2020年度は緊急対策として厳選、繰延により一部削減するものの、これまでの攻めの姿勢を変えることはありません。ICTやヘルスケアなど成長領域への積極的な投資を推し進めていきます。
M&Aにおいても引き続き、チャンスは窺っていきたいと考えています。しかし、私は、単に規模の拡大だけを目指すといった経済軸だけで考えたM&Aを進めるつもりはありません。そこに必ず環境・社会軸の視点を加え、すべてのステークホルダーに受け入れられるように、企業価値を持続的に高めていくM&Aを推し進めていきます。

組織風土の変革人と技術を有機的に結びつけ、
風通しのよい風土をつくるための組織改革に着手。

当社グループでは2020年4月、いくつかの組織改革を行いました。その狙いは、成長3領域におけるビジネス体制の強化と次世代事業の加速にあります。
注力する成長3領域は、トータルなビジネスが成功の鍵を握る分野であり、そのためには人や技術といったアセットを有機的に結びつけて価値を最大化しなければなりません。そのため、「モビリティ」および「フード&パッケージング」において組織横断的なCoEの部署を設立しました。「ヘルスケア」においても、新事業の開発や探索、M&Aを推進する医療事業戦略グループを新設しています。さらに、ICTからロボット、エネルギーまで全領域を対象に、次世代事業の探索・創出を担う新事業開発センターを発足させました。
当社グループでは、ビジネスの推進において事業部制をベースとしており、その仕組みもあって縦軸のラインが強い傾向があります。その結果、グループリソースを有効に活用しきれていないと感じることがあります。今回の改革は、このような組織の風通しをよくする狙いもあります。今後は、企業文化や組織風土の変革を目指した取り組みにさらに力を注いでいきます。

CoE:Center of Excellence

サステナビリティマネジメントバリューチェーン全体を見据えた
幅広い視野による取り組みが重要。

ここ数年でESGやSDGsへの意識が急速に高まり、社会の価値観が大きく変化しています。このような中で、企業は社会の公器としての役割を認識し、社会と企業のサステナビリティを追求していかなければなりません。そういった意味で、3軸経営の考え方はとても明快であると思っています。環境・社会を大切にしながら経済成長とのバランスを重視した経営に取り組んでいきます。
この3軸経営の結果を見える化してステークホルダーと共有するコミュニケーション手段として、Blue Value®、Rose Value®を導入しています。長期経営計画のKPIにも設定し、環境・社会課題解決に貢献するBlue Value®、Rose Value®製品を着実に拡大していきます。またこの指標は、社員たちが仕事に取り組む上での価値基準としても非常に有効であると考え、活用していきます。
私たちが真摯に取り組むべき社会課題として気候変動とプラスチック問題が挙げられます。これまでは製品を製造するという動脈系のビジネスにフォーカスしてきましたが、これからはリサイクルやリユースといった静脈系のビジネスもセットでなければ、企業価値のさらなる向上は難しい時代となります。循環経済への転換という高い視点に立ち、気候変動とプラスチック問題を切り離せない一体の課題として捉えて解決を図っていこうと考えています。
社会課題は、私たちにとってリスクであるとともにビジネスチャンスでもあります。しかし、チャンスを掴むには社外との協働が欠かせません。今後は、異業種との協働や国・地域を超えた連携など、バリューチェーン全体を捉える広い視野を持って取り組みを進めていきます。

前向きな意欲を育てる環境づくり社員一人ひとりがモチベーション高く、やりがいを持って仕事に向き合える
組織づくりに取り組む。

企業にとって「人」がなによりも重要な資産であることはいつの時代においても変わりありません。その「人」を育てるために、経営人材やグローバル人材の育成制度など様々な仕組みを導入しています。それらに加えて、社員たちの前向きなマインドを支えるために、働き方改革やモチベーションアップのための環境づくりなどベースになる部分にも注力していきたいと私は考えています。
最近の大きな変化の一つに、若い人たちの働き方や企業に対する考え方が変わりつつあることが挙げられます。企業が持続的成長を果たしていくためには、このような新しい世代の人たちにとっても魅力的な存在でなければなりません。製造や販売、研究開発などあらゆる分野のあらゆる世代の人材にとって働きがいがある企業グループを目指していきます。現在進めている長期経営計画の見直しプロジェクトでも、このような風土づくりを含めて将来の「ありたい姿」を議論しています。その議論を踏まえて、新しい改革に踏み出していきます。

「安全」への意識の徹底コロナ禍という初めての経験を通じ、
「安全」の大切さを再認識。

「安全」もまた、当社グループの経営において極めて重大な命題です。この「安全」を守っていくために、私たちが忘れてはならないのが2012年の岩国大竹工場レゾルシン製造施設での爆発火災事故です。以来、製造現場と一体となって改善を積み重ねてきました。しかし、近年においてもトラブルが継続して発生しており、「安全」への意識の徹底が図れていないという課題があります。
このような重大な課題を解決していくために、改めて根本的な視点に立って取り組みを進めていきます。制度の改革や新技術の導入はもちろん、さらに踏み込んで製造の現場で安全を担う社員たちが、意欲を持って前向きに仕事に向き合えるような環境づくりにも取り組みます。
私たちが直面するコロナ禍は、企業における「安全」のあり方を見つめ直す貴重な機会であると感じています。社員たちの健康を守るという「安全」の重要さについても改めて気づかされました。社会的責任を果たし、社会とともに歩んでいく企業グループとして、今一度「安全」に対する意識を徹底していきます。

ステークホルダーの皆様へ社員一人ひとりの力を一つにして、
目標を達成できる“実行力”を備えた、“強く、いい会社”を目指す。

企業に求められる価値が、経済軸に優れた「強さ」だけで評価される時代は過ぎ去ったように思います。とはいえ、環境や社会にばかり軸足を置いていたのでは、十分な利益をあげることは難しく、株主や社員といったステークホルダーの期待に応えることはできません。だからこそ、経済・環境・社会のバランスがとれた3軸経営が大切になるのです。
世界は今、コロナ禍というかつて経験したことのない嵐のただ中にあります。私たちは、まさにその荒天の海を航海しているような状況といえるでしょう。しかし、必ず嵐は過ぎ去り逆風が止む時がやってきます。その時にベストコンディションで全力疾走できるような態勢をつくり上げておくことが、当社グループの舵を握る私に課せられた役割だと思っています。このような時代だからこそ視線を高くして未来を見据え、社員一人ひとりの力を一つにして、自ら立てた目標を確実に達成し、社会とともに持続的な成長を果たす「強く、いい会社」を目指していきます。

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