- 基本情報
- 特性詳細
- 用途詳細
概要
ハイワックス™は三井化学がチーグラー法重合技術を基に独自に開発した低分子量ポリエチレン、各種低分子量ポリオレフィンです。高密度重合型、低密度重合型、酸化型、酸変性型、芳香族系モノマー変性型の各種銘柄を取り揃えています。
耐熱性、耐薬品性、親和性、高硬度などの多くの特性と経時安定性に優れていることから、樹脂添加剤(樹脂における添加剤の相溶・分散剤)、成形助剤(省エネ・節電)、顔料分散剤、塩ビ滑剤、インキ耐磨耗剤、繊維加工助剤、塗料添加剤、ゴム加工助剤、ホットメルト、エンプラ改質剤などの広範な用途に使われております。
ワックスとは
性質:常温で固体または半固体の低分子量樹脂
常温~160°Cの範囲で溶融し、溶融粘度が低い

特性
耐熱性
耐熱性、熱安定性が優れています。
耐薬品性
耐薬品性、電気絶縁性が良好です。
親和性
極性ポリマー、無機化合物、金属などとの親和性を付与することが可能です。
高硬度
ポリオレフィンと同等の硬度を持ち、かつ粉砕が容易です。
用途
樹脂添加剤、成形助剤、顔料分散剤、塩ビ滑剤、インキ耐磨耗剤、繊維加工助剤、塗料添加剤、艶出し剤、離型剤、ゴム加工助剤、紙質向上剤、ホットメルト、電気絶縁剤、天然ワックス配合剤、エンプラ改質剤など
特性
ハイワックス™のタイプ別特徴
高密度タイプ
高結晶性のため、高密度で、硬度が高く、軟化点が高い。
低密度タイプ
低結晶性のため、低密度で、硬度が低く、軟化点が低い。
酸化タイプ
極性ポリマー、無機化合物、金属などとの親和性を有する。高酸価品は乳化性が良好。
酸変性タイプ
アルコール、アミン、イソシアネート、エポキシ基などを有する材料と反応性を有する。また、乳化性が良好。
芳香族系モノマー変性タイプ
PS,ABS,ポリエステルなどの芳香族系樹脂との相容性が良好。

ハイワックス™の銘柄および物性
一般重合型
特徴
高密度タイプ
高結晶性で高密度のため、硬度が高く、軟化点が高い。
低密度タイプ
低結晶性で低密度のため、硬度が低く、軟化点が低い。
物性項目 | 分子量 | 密度 | 酸価 | 結晶化度 | 融点 | 軟化点 | 硬度 (針入度) |
溶融粘度 (140℃) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単位 | - | kg/m3 | mgKOH/g | % | ℃ | ℃ | 10-1mm | mPa·s | |
高密度タイプ | 100P HP10A |
900 | 950 | - | 90 | 116 | 121 | 2 | 15 |
200P 200PF |
2000 | 970 | - | 87 | 122 | 130 | 1 | 80 | |
400P 400PF |
4000 | 980 | - | 85 | 126 | 136 | <1 | 600 | |
800P 800PF |
8000 | 970 | - | 84 | 127 | 140 | <1 | 8000 | |
低密度タイプ | 110P | 1000 | 920 | - | 80 | 109 | 113 | 25 | 20 |
210P | 2000 | 940 | - | 75 | 114 | 120 | 4 | 80 | |
220P | 2000 | 920 | - | 70 | 110 | 113 | 13 | 80 | |
320P | 3000 | 930 | - | 65 | 109 | 114 | 7 | 250 | |
410P | 4000 | 950 | - | 80 | 118 | 122 | 2 | 650 | |
420P | 4000 | 930 | - | 70 | 118 | 122 | 3 | 650 | |
720P | 7200 | 920 | - | 60 | 113 | 118 | 3 | 6000 |
※HP10Aと末尾にF(200PF, 400PF, 800PF)がつく銘柄は小粒径品です。
変性型
特徴
酸化タイプ(微酸価、高酸価)、酸変性タイプ
極性ポリマー、無機化合物、金属などとの親和性を有する。
高酸価タイプ、酸変性タイプは乳化性良好。
酸変性タイプはアルコール、アミン、イソシアネート、エポキシ基などを持つ材料と反応性を有する。
芳香族系モノマー変性タイプ
PS,ABS,PESなどの芳香族樹脂と相容性が良好。
物性項目 | 分子量 | 密度 | 酸価 | 結晶化度 | 融点 | 軟化点 | 硬度 (針入度) |
溶融粘度 (140℃) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
単位 | - | kg/m3 | mgKOH/g | % | ℃ | ℃ | 10-1mm | mPa·s | |
試験方法 | 粘度法 | JIS K7112 | JIS K0070 | X線 回析法 |
DSC法 | JIS K2207 | JIS K2207 | B型 粘度計 |
|
酸化タイプ (微酸価) |
210MP | 2000 | 940 | 1 | 75 | 112 | 118 | 3 | 80 |
220MP | 2000 | 920 | 1 | 65 | 107 | 113 | 14 | 80 | |
310MP | 3000 | 950 | 1 | 80 | 114 | 122 | 3 | 250 | |
320MP | 3000 | 930 | 1 | 70 | 107 | 114 | 7 | 250 | |
405MP 405MPF |
4000 | 960 | 1 | 80 | 121 | 128 | 1 | 650 | |
酸化タイプ (高酸価) |
4051E | 3200 | 970 | 12 | 74 | 115 | 120 | 1 | 500 |
4052E | 3000 | 970 | 20 | 75 | 110 | 115 | 4 | 440 | |
4202E | 2600 | 950 | 17 | 62 | 100 | 107 | 5 | 300 | |
4252E | 2900 | 940 | 17 | 47 | 94 | 98 | 5 | 480 | |
酸変性タイプ | 1105A | 1500 | 940 | 60 | 60 | 104 | 108 | 6 | 150 |
2203A | 2700 | 930 | 30 | 65 | 107 | 111 | 3 | 300 | |
芳香族系モノマー 変性タイプ |
1120H | 1200 | 940 | - | 58 | 107 | 108 | 7 | 40 |
1160H | 1500 | 1000 | - | 30 | 104 | 105 | 1 | 1100 |
ハイワックス™の代表的用途/機能/性能と効果/推奨銘柄
用途 | 機能 | 性能と効果 | 推薦銘柄 |
---|---|---|---|
樹脂添加剤 | 相容性、表面改質 | フィラー、顔料の分散性を向上 →成形品の表面改質、品質の向上。 |
100P、400P、800P 1105A、2203A、1120H |
顔料分散剤 | 相容性 | 各種顔料と濡れ、分散性を向上させる。 →高濃度マスターバッチ化可能。 |
420P、320MP、 1160H、4202E 720P |
塩ビ滑剤 | 滑性 | 滑性のバランスに優れ、持続性がある。 →生産性向上、消費電力節減。 |
220MP、4202E、4051E |
インキ耐磨耗剤 | 耐磨耗剤・耐熱性 | インキ表面の耐摩耗性、耐熱性付与。 →インキ鮮度向上。 |
220MP、320MP、405MP 1105A、1120H |
繊維加工助剤 | 滑性・柔軟性 | 繊維の樹脂加工時に柔軟性、耐熱性付与。 →高速縫製性、引裂強度向上。 |
4202E、4051E、4052E 1105A、2203A |
塗料添加剤 | 表面改質 | 艶調整効果に優れ、塗膜の耐摩耗性を向上させる。 →木工塗料の高級感付与、耐久性向上。 |
4202E、405MP、4051E |
艶出し剤 | 表面改質 | 光沢に優れ、塗膜物性を向上させる。 →カーワックス、フロアポリッシュの性能向上。 |
410P、1120H |
離型剤 | 離型性 | 熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂への離型性付与。 →成形サイクルの向上。 |
200P、400P、720P、800P 220MP、405MP 1120H、1160H |
ゴム加工助剤 | 離型性・相容性 | 離型性、流動性に優れ、フィラー及び顔料の分散性を向上させる。 →成形サイクル、押出持性の向上。 |
110P、210P、220P、320P 210MP、220MP |
紙質向上剤 | 滑性・表面改質 | 防湿性、光沢、表面硬度、耐ブロッキング性、耐摩耗性を向上させる。 →高級感付与、耐久性向上。 |
4202E |
ホットメルト | 耐熱性・粘度調整 | ホットメルトの接着剤への耐熱性,流動性付与。 →耐熱要求分野(自動車,建材)での品質向上。 |
200P、400P、110P、220P |
電気絶縁剤 | 耐熱性・絶縁性 | 電気的性質に優れ、軟化点の向上。 →フィルムコンデンサーの電気絶縁性向上。 |
200P |
天然ワックス配合剤 | 表面改質剤 | 表面硬度を増し、軟化点を向上させる。 →クレヨン、ローソクの性能向上。 |
110P |
エンプラ改質剤 | 分散性・相容性 | フィラー、強化繊維の分散性を向上 →成形品の強度改良。 |
110P、1105A |
用途
ハイワックスは主に樹脂における添加剤(フィラー)の相溶・分散剤として、またそれ以外でも広範な用途で使われております。
フィラー分散
使用方法
ハイワックス™とフィラーを混合してマスターバッチをつくります。その後、マスターバッチと樹脂を押出機で成形します。
効能
変性基を導入したオレフィンオリゴマーのため、各種フィラー(木粉、セルロースファイバー、GF、CF、CNT、難燃剤等)の分散性を制御可能です。
推奨銘柄
1105A、1120H、1160H、220MP、4202E

顔料分散剤
使用方法
ハイワックス™と顔料を3本ロールで混合してカラーベースをつくります。その後、カラーベースと樹脂を押出機で混合・造粒してカラーマスターバッチとなります。
効能
各種顔料との濡れが良く、高シェア下で高い混練性を発現するので、樹脂着色性に優れた高濃度マスターバッチの製造が可能になります。
推奨銘柄
PE・PP用:420P、720P
PVC用:320MP、4202E
PS・ABS用:1160H

塩ビ滑剤
使用方法
塩ビパウダー、安定剤、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムとともにハイワックス™をドライブレンドし、押出機で押出します。
効能
成形機の金属表面と塩ビ樹脂との間に作用して滑性、離型性を発現するため、樹脂の熱分解を防ぐとともに、押出成形においては消費電力の低減と吐出量の増大ともたらし、射出成形においては、成形品の外観を向上させます。
推奨銘柄
硬質塩ビ(パイプ、継手)、軟質塩ビ(ケーブル、シート):220MP、4202E

繊維加工助剤
使用方法
高酸価タイプや酸変性タイプのハイワックス™を水に分散させてエマルションにしておき、繊維をくぐらせて表面に付着させ、加熱乾燥により繊維表面に造膜させます。
効能
綿やポリエステル織物の繊維をコートして滑性を付与し、高速縫製性や引裂強度を向上させます。また、繊維の樹脂加工時に発生する縮を防ぎ(防縮)、風合いを良くすることができます。
推奨銘柄
防縮:4202E、4051E
可縫性:4051E、4052E
風合い:1105A、2203A

射出成形用金型剥離剤用途
使用方法
PC、PBT、PA、ABS、PSのペレットにハイワックス™をドライブレンドして射出成形を行います。
効能
射出成形時に、樹脂から金型の界面に浸み出し薄膜を形成するため成形品の金型離型が良くなり、成形サイクルが短縮できます。また、金型汚染が減り、清掃等の金型メンテナンスの手間が省けるため生産性が向上します。
推奨銘柄
PC、PBT、PA用:405MP、720P、800P
ABS用:200P、400P、220MP
PS用:1120H、1160H
