「世界初」が生まれるまでの全ての過程に立ち会うことができた。
紙おむつに使われている不織布、私はその中で、中空不織布の開発に関わってきました。赤ちゃんの肌に直接触れる不織布は、強度と肌触りの柔らかさの両立が求められ、この市場ニーズに応えるために開発されたものが中空不織布です。学生時代は電子材料の分野を専攻していたので、入社後、最初の2年間は電子材料事業を担当していましたが、3年目から現在の不織布事業へ異動になり、それから11年間、不織布を担当しています。実は私の扱っているものは、紙おむつ向けの不織布としては、世界で初めて中空化(中に空洞のある繊維)に成功した製品。周囲からの期待やプレッシャーも非常に大きなものでした。ラボスケールでの試作、生産機での試作、そして製品化と、ほぼ全ての工程に立ち会えたので、研究者として、うれしい瞬間を数多く経験することができました。
失敗を乗り越える近道は、三現主義と「世界で一番考える」こと。
中空不織布の開発は困難を極め、初めの数回の試作は失敗に終わりました。ただ、失敗をすることで、課題は明確になります。失敗した時は、とにかく徹底的に原因を究明することが重要。現場に出向き、現物に直接触れ、現実を捉える、いわゆる三現主義と言われることですが、この3つの視点から原因について考えるようにしています。それで必ず原因を見つけられるとは限りませんが、机の上で考えるだけでは、さらに原因から遠ざかってしまいます。だからこそ、現場や現物を見て、考え続けるようにしていました。特に中空不織布は世界初のものなので、この開発に関しては世界で一番考えたと自信が持てるように努めてきました。そうやって粘って踏ん張り、まわりからの多大なサポートも得られたため、成功に繋がったのだと思います。
成功へと繋がる10度に及ぶ
トライアンドエラー。
初めてサンプル採取に成功した試作以降も、イメージ通りに進まない部分は多々ありました。また、中空不織布にしか起こり得ないようなトラブルも起こりました。中空不織布に必要な空洞をつくるためには、設備を改造する必要があります。しかし9回にわたり、改造と試作のトライアンドエラーを繰り返し、「あと1回でも失敗したらプロジェクトが終わる」、というところまで追い込まれました。ただ、試作を行うたびに、着実に前進していたので、成功に向かっているという手応えは感じていました。10回目に試作が成功した時は、本当にうれしかったです。
生み出した製品を、
海外へと羽ばたかせるために。
紙おむつは、たくさんの人たちに望まれ、必要とされるもの。「ベットで寝ている赤ちゃんがはいている」など、誰に、どんな場所で、どのように使われているかイメージしやすい製品なので、やりがいに繋がっています。今、不織布事業は国内だけでなく、海外展開も進めており、中空不織布用設備も海外プラントに搭載されようとしています。今後は、自分の手掛けた製品を海外に広げていくことにも積極的に取り組んでいこうと思っているので、中空不織布が日本から世界へ広がっていくことが楽しみです。三井化学には多くの事業や製品があるので、その分色々なことに挑戦ができると思います。やる気があればチャンスを与えられる環境は整っているので、どんどん挑戦してほしいです。
Private
長い休暇が取れた時は旅行に行くことが多いです。お気に入りの場所は沖縄と尾瀬。寒いところが苦手なので、年末年始は毎年沖縄で過ごすことが多くなりました。写真のように会社の同僚と一緒に出掛けることもあります。
写真はカンボジアのアンコールワット。スケール感が本当に圧倒的で、これまでの旅行の中で特別に印象に残っています。