制振性、応力緩和性に優れたα-オレフィンコポリマー。
従来のポリオレフィンとは異なる感触を持ちます。
- 基本情報
- 特性詳細
ABSORTOMER®の由来
ABSORTOMER®とは、ABSORB(吸収する)という単語とELASTOMER(熱可塑性樹脂)という単語を繋ぎあわせて三井化学が作成した造語です。

概要
ABSORTOMER®は、三井化学が長年培ってきた重合触媒技術を用いてナノレベルで分子構造を最適化したα‐オレフィン共重合体です。ポリマーの粘性的な性質を最大化させることにより、従来のポリオレフィン系材料にない応力吸収性(高tanδ)、応力緩和性、等の発現に成功しました。また温度によってその感触が変化するこれまでに無いような独特で特徴ある触感を実現しました。
ABSORTOMER®はペレット状の製品で、成形時に各種素材添加すると、応力緩和性、追従性(凹凸に密着)等の機能を付与でき、ユニークな製品開発に貢献します。
特性
応力吸収性(高tanδ)
ABSORTOMER®は室温付近で粘性と弾性の比である「tanδ」が既存材料に比べて極めて高く、振動・変形などが加わると、粘性的な性質が力学エネルギーを熱エネルギーに変換し、吸収・分散します。
制振性
ABSORTOMER®は、室温で10Hz以下の低周波数領域に応力吸収性(tanδ)のピークを持つため、衝撃よりゆっくりした振動に対して効果があります。また、三井EPT™等の他素材とコンパウンドすることで、幅広い周波数に対応でき、硬度調整も可能なため、制振材としての適用が可能です。
応力緩和性
材料に一定の荷重を与えて保持した場合、時間の経過と共に荷重が低下します。また、復元速度が緩やかになるため、ABSORTOMER®を使った製品は低反発性を示します。
軽量性
熱可塑性樹脂の中で極めて密度が低く、成形品の軽量化に貢献します。
オレフィン素材とのブレンド、加工性
ABSORTOMER®はペレット形状であり、一般的な成形条件で加工出来ることから、各種素材とのブレンドが容易です。また低融点であるため、EPDM等ゴム材料とも加工出来ます。
衛生性
ポリオレフィン等衛生協議会の自主規制基準、FDA、等に適合しています。油性食品等で一部使用制限がございますので、詳しくはお問合せください。
特性詳細
物性一覧表
ABSORTOMER®は現在2銘柄で展開しております。
2銘柄の違いとしては、硬度、耐熱性、応力吸収性(tanδ)のピーク温度、となります。
項目 | 単位 | 測定条件 | EP-1001 | EP-1013 | |
---|---|---|---|---|---|
流動性 | MFR | g / 10min | JIS K7210準拠 (230℃, 2.16kgf) |
10 | 10 |
比重 | 密度 | kg / m3 | JIS K7112準拠 | 840 | 838 |
柔軟性 | 硬度 | 直後 | JIS K6253準拠 | A92 | D69 |
15秒後 | A70 | D55 | |||
機械特性 | 引張弾性率 | MPa | JIS K7127準拠 | 400 | 1200 |
引張破断伸び | % | 400 | 400 | ||
引張強度 | MPa | 29 | 34 | ||
耐熱性 | 融点 | ℃ | 三井化学法 10℃ / min. |
なし | 130 |
ガラス転移温度 | ℃ | 30 | 40 | ||
振動吸収性 | tanδ | ピーク値 | 三井化学法 1.6Hz, 2℃ / min. |
2.7 | 1.5 |
ピーク温度 | ℃ | 30 | 40 | ||
製品形状 | ペレット | ペレット |
応力吸収性(高tanδ)
EP-1001は室温近傍においてtanδのピーク値となることからその温度を境に硬さが大きく変化します。また、tanδピーク値が2.7と他素材と比べて極めて高い応力吸収性を示します。ピーク温度位置の制御は、ABSORTOMER®とTPO、TPVやEPDM等の他素材とコンパウンドすることで可能になります。

制振性
ABSORTOMER®は10Hz以下の低周波数領域にtanδのピークをもつため、衝撃よりゆっくりした振動に対して効果があります。他素材、特にEPDMとの配合を設計することで、tanδピーク位置を目的の周波数領域にシフトさせることが可能です。(ABSORTOMER®は架橋しません)

応力緩和性
ABSORTOMER®に一定の荷重を与え、保持した場合、時間経過とともに荷重が低下します。一般的なポリオレフィンですと、材料が応力を吸収しないため、時間が経過しても荷重は低下しません。


成形条件
ABSORTOMER®単体での射出成形は不向きですので、押出成形を推奨いたします。
ABSORTOMER®をPE、PP、TPV等の他材へ混ぜた場合の成形条件は、以下を参考にしてください。またABSORTOMER®はホッパー下でブロッキングする可能性がありますので、ホッパー下のシリンダ温度設定、冷却等ご配慮ください。
EPDM等ゴム材料と混ぜる場合は、ロールを加温することを推奨いたします。
押出成形条件
材料 | シリンダー温度 | 推奨の成形法 | 注意事項 |
---|---|---|---|
ABSORTOMER®単体 | 80~230℃ | 押出 | ブロッキング防止にホッパー下温度を低下 |
ABSORTOMER®+PE | 180~230℃ | 押出・インフレ | |
ABSORTOMER®+PP | 200~250℃ | 押出・射出 | |
ABSORTOMER®+TPV | 200~250℃ | 押出・射出 | |
ABSORTOMER®+スチレン系エラストマー | 180~230℃ | 押出 |