カーボンニュートラル戦略
カーボンニュートラル宣言
三井化学グループは、世界の平均気温の上昇を1.5~2度に抑えた持続可能な社会を構築するために化学企業として果たすべき役割があると考え、2020年11月に2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。当社グループのGHG排出量(Scope1, 2)を削減するだけでなく、当社グループが提供する製品のライフサイクル全体を通じたGHG削減貢献量を最大化することにより、社会全体としてのカーボンニュートラルにむけた社会変革に大きく寄与すべく始動しています。
なお、2030年までにカーボンニュートラル関連の投資枠を1,400億円規模で考えており、全社横断的に柔軟な資金投入を行っていきます。

三井化学グループのカーボンニュートラル戦略
戦略① 当社グループのGHG排出量削減(Scope1, 2)
化学産業は、化石由来の原料を使用し、その製造工程においても化石由来の燃料を蒸気・電気に変換して用いていることから、他の産業よりも多くのGHGを排出しています。これからの化学製品の製造においては、高性能触媒の使用や省エネ機器の導入等による製造エネルギーの削減、再生可能エネルギーの積極利用、さらに低炭素な原料・燃料への転換など様々な施策の積み重ねにより、大幅なGHG排出量削減に貢献できると考えています。
まずは、確実に自社グループのGHG排出量を把握し、削減に向け主体的に取り組むべく、Scope1,2におけるGHG排出量削減目標を設定しました。
具体的には、各種削減施策により2030年度までに2013年度比でGHG排出量40%削減を目指します。これはVISION 2030の非財務目標のひとつにも設定しています。さらに2050年カーボンニュートラルに向けては、市場や顧客等の外的要因の整備/変化が前提となりますが、前述の施策に加えて、新技術の開発や事業ポートフォリオ転換等による80%以上の削減を、残り20%についてはCCUS等のカーボンネガティブ技術の開発・導入等の施策を進めていく考えです。
GHG排出量削減は、排出量が多い生産拠点を中心に実施していく予定です。グループ全体に技術やシステムを展開しながら効率的かつ最大効果を目指して取り組みます。
戦略② 製品提供を通じたGHG削減貢献量の最大化
化学製品は、様々な最終製品に使用されていることから、製品ライフサイクルの各ステージでGHG削減に貢献することができます。当社グループでは、環境貢献価値を有するBlue Value®製品の提供を通じて、製品ライフサイクル全体でGHG削減貢献量を最大化することで、社会全体のカーボンニュートラル達成に貢献したいと考えています。GHG削減貢献量は、Blue Value®認定基準でもあるライフサイクルアセスメントの観点から、自社従来品/市場一般品との比較により評価しています。2021年度のBlue Value®製品・サービスの売上においては、約100万トン/年のGHG削減貢献量と試算しました。2050年カーボンニュートラルを見据え、VISION 2030においてもBlue Value®製品の売上収益比率40%以上を非財務指標として設定しています。
事例1 原燃料の低炭素化:
燃料転換 ~アンモニア活用~
ナフサクラッカーは、化学企業の要であると同時に多くのGHGを排出する工程です。当社はナフサクラッカーにおいて、従来、メタンを主成分としていた燃料をアンモニアに転換することで、燃焼時に発生するCO2を限りなくゼロに近づけ、石油化学業界全体のGHG排出量削減に貢献したいと考えています。
アンモニアは炭素を保有せず、運搬・貯蔵の技術が確立されており、水素に比べて熱源としてのハンドリングが容易であると言われています。ナフサクラッカーとアンモニア事業の両方を所有する当社が幹事会社となり、エチレンプラントの知見や技術力を有する丸善石油化学株式会社、東洋エンジニアリング株式会社、双日マシナリー株式会社と協働で実証実験を推進しています。実証期間は2021年度から2030年度までの10年間を想定しており、2026年までにアンモニアバーナーおよび試験炉の開発、2030年にはアンモニア専焼炉の社会実装を目指します。
なお、この事業は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したグリーンイノベーション基金による「ナフサ分解炉の高度化技術の開発」の実証実験に採択されています。
事例2 新技術の開発:
三井化学カーボンニュートラル研究センター設立
2021年10月、カーボンニュートラルに資する最先端の環境基盤技術の開発・実用化に向けて、九州大学のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER:アイスナー)内に、三井化学カーボンニュートラル研究センターを設置しました。I2CNERは、世界に先駆けてカーボンニュートラルを冠した研究機関として有名であり、2010年に文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」に採択され、2020年にはWPIアカデミーの拠点となるなど、カーボンニュートラル技術における世界最先端の研究施設です。I2CNERが培ってきたグリーン水素、CO2の回収、貯留、変換などカーボンニュートラル・カーボンネガティブを目指す世界最先端の知見と、三井化学が取り組んできた低環境負荷技術の開発・工業化に関する知見をベースに、共同研究を実施していきます。また、カーボンニュートラルの実現に必要な要素技術の研究を集中的かつ効率的に行うことで、これら技術の社会実装を加速させます。

事例3 ライフサイクル全体でのGHG排出量削減:
製品カーボンフットプリント(PCF)による環境影響の見える化
三井化学では、プロダクト・スチュワードシップの一環として10年以上前から、製品カーボンフットプリント(PCF)を含むライフサイクルアセスメント(LCA)の評価体制を構築してきました。特に、簡易LCA(Blue Value® Index)に拠り当社製品・サービスの環境影響を評価することで、環境貢献価値のある製品をBlue Value®製品と認定し、広く社会と共有しています。昨今、製品ライフサイクル全体の環境影響を見える化することに対する社会的な要請が高まっており、当社はPCF/LCA情報の提供体制を一層強化しています。
これまでに当社3工場(市原、大阪、岩国大竹)で製造する製品のGate to Gate※1におけるPCF算出を完了しています。今後は原料等のデータが利用できない製品を除き、計算範囲をCradle to Gate※2に拡大した上で、当社全工場の製品について2022年度上期中に算出する予定です。加えて、製品の出荷から顧客までの輸送※3におけるGHG排出量についても国際輸送を包括する算定方法(Global Logistics Emissions Council (GLEC) framework に適合)に基づき算出を進めています。
今後も高精度かつタイムリーなPCF/LCA情報を提供すべく、サプライチェーン上のステークホルダーと協働しながらさらなる体制の強化を図っていきます。
※1Gate to Gate:
ゲートからゲートまでの意味。製造工場の敷地内に製品原料が納入された時点から、製品製造工場出荷までを指す。
※2Cradle to Gate:
ゆりかごからゲートまでの意味。製品原料の採取から製品製造工場出荷までを指す。
※3当社責任の輸送に限る。詳細はこちらをご覧ください。

- CEOメッセージ
- CSOメッセージ
- 三井化学グループのサステナビリティ
- コーポレート・ガバナンス
- リスク・コンプライアンス
- レスポンシブル・ケア
- 社会とのエンゲージメント
- 方針一覧
- その他
- サステナビリティニュース一覧