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サーキュラーエコノミーに向けて

バイオマス戦略・リサイクル戦略

資源の大量消費と廃棄を前提とした従来型のリニアな経済活動は、地球環境に大きな負荷をかけています。当社グループは、理念である「素材メーカーとして材料・物質の革新と創出」を通して、豊かで快適なくらしを100年以上にわたり支えてきました。そしてこれからも、環境と社会の持続可能性を高める「サーキュラーエコノミー」への対応強化を通じて社会課題解決に貢献します。

このような考えのもと、VISION 2030の基本戦略では全事業を対象としたサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルの構築を掲げ、当社グループの主要製品であるプラスチックについてサプライチェーン全体を視野に入れ、バイオマス戦略、リサイクル戦略に注力しています。これら2つの戦略とプラスチックごみ問題への対応を通して資源循環を促進し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。

バイオマス戦略・リサイクル戦略

バイオマス戦略:バイオマスプラスチック製品群の拡充

当社グループは、バイオマス原料への転換は新たな化石資源の使用を抑制すると同時に資源循環を促進することから気候変動の緩和策となると考え、バイオマスプラスチック製品群の拡充を図っています。

2021年度より、廃食油などから製造されたバイオマスナフサをナフサクラッカーの原料として投入することで、そこから派生する様々な化学品・プラスチックをバイオマス化しています。提供可能なバイオマスナフサ誘導品のラインナップ拡充のため、各製品におけるISCC PLUS認証の取得を進め、2025年9月現在、ナフサから製造される製品およびその下流製品を含め、約40製品が認定されています。

当社グループは、原料となるバイオマスナフサを調達し、大阪工場のエチレンプラント(ナフサクラッカー)へ投入すると同時に、マスバランス方式によってバイオマス原料使用分を特定の製品に割り当てて、フェノールやアセトンといった化学品、ならびにポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂製品の製造と販売を行っています。

提供可能なバイオマスナフサ誘導品のラインナップを拡充するため、各製品におけるISCC PLUS認証の取得を進め、2025年9月現在、ナフサから製造される製品、およびその下流製品を含め、約40製品が認定されています。当社のバイオマスビスフェノールAを用いてバイオマスポリカーボネート樹脂の開発・生産を行う帝人(株)をはじめとしたパートナーとの協業や、当社グループが立ち上げたBePLAYER®製品の販売を通じ、バイオマスの社会実装を推進し、バイオマス化学品ならびにバイオマスプラスチックの普及に貢献していきます。

バイオマスナフサによるバイオマス化学品およびバイオマスプラスチックの製造・販売

(株)プライムポリマーが製造販売するマスバランス方式のバイオマスPP(ポリプロピレン)「Prasus®」が日本生活協同組合連合会の食品パッケージに採用され、「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチックを使用したプラスチック製容器包装」として初のエコマークを取得しました。

※エコマーク:
公益財団法人日本環境協会が運営する様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベル。エコマークの認定基準に「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチック」(=マスバランス方式によるバイオマスプラスチック)が2023年2月1日より新たに導入されています。

エコマーク

マスバランス方式

三井化学は、化石原料由来とバイオマス由来のナフサを製造工程で混ぜることにより、バイオマス化学品・プラスチックを製造しています。これら製品は、化石原料とバイオマス原料の混合物になりますが、製造時のバイオマス原料使用分を特定の製品にのみ割り当て、顧客に提供しています。この手法をマスバランス方式といいます。本手法を用いることにより、投入したバイオマス由来の原料の量に応じて、できあがった製品の一部を「100%バイオマス由来」と見なすことができ、顧客の多様なバイオマス製品ニーズに応えることが可能となります。当社は、マスバランス方式の信頼性を担保するため、第三者による認証(ISCC PLUS認証)を取得し、適切に管理・運用しています。当社グループは、この手法がバイオマス製品だけでなく、ケミカルリサイクル製品群の拡充を推進するスキームとしても、重要な役割を果たしていくものと考えています。

マスバランス方式の認証体制

リサイクル戦略:プラスチック資源リサイクルの推進

資源の枯渇や、プラスチックごみ問題などの廃棄物の管理に関する社会課題が深刻化する中、当社グループは、廃プラスチックなどを資源と捉え、有効活用していく取り組みを進めています。リサイクルによる資源循環の促進は、化石原料・燃料の削減といった資源の有効活用だけでなく、廃プラスチックの再資源化による廃棄物の削減や、バリューチェーン全体を通じたGHG排出量の削減にも貢献できると考えています。

具体的には、廃プラスチックなどの廃棄物を原料として捉え、製品原料として再利用する「マテリアルリサイクル」や、廃プラスチックなどの使用済み資源を化学的・熱的に処理・分解して原料やモノマーに戻し、再度プラスチックや化学品としてリサイクルする「ケミカルリサイクル」による製品を供給しています。これに加えて、リサイクルを促進させる包装材料の「モノマテリアル化」や、プラスチックリサイクルのトレーサビリティを実現するデジタル基盤「資源循環プラットフォーム」の提供など、新素材、リサイクルシステム、バリューチェーンの開発を通じて、循環経済の輪を大きく、太くしていきます。

当社グループは、2022年5月より、軟包材フィルムのマテリアルリサイクルの取り組み「RePLAYER®-Renewable Plastics Layer System-」を進めています。これは、軟包材コンバーターで発生する印刷後の廃棄フィルムを回収し、インキを除去してペレット化して、もう一度軟包材フィルムに再生する取り組みです。同年12月からは、TOPPAN(株)、アールエム東セロ(株)、当社の3社共同で実証試験の基礎検討を開始し、2023年度より本格的な共同実証試験へ移行しました。共同実証試験において、印刷やラミネート、製袋に関する量産加工適性を確認するとともに、シール強度や引き裂き強度などパウチとしての物性条件をクリアしたことから、2024年10月よりパウチサンプルとして提供を開始しました。

具体的には、TOPPAN(株)において発生した印刷後の廃棄フィルムを回収し、当社名古屋工場にてインキを除去してペレット化し、アールエム東セロ(株)にてフィルム化します。再生したフィルムはTOPPAN(株)のパッケージ工場において量産検証を行い、量産加工適性を確認しました。また、パウチとしての物性評価も行い、パッケージとしての機能を確認しています。

3社は、軟包材フィルムの水平リサイクルの普及・発展に向け、2025年度の社会実装を目指します。

軟包材フィルム 水平リサイクルの共同実証試験開始

当社グループは、メガネレンズ材料のリーディングカンパニーとして、高屈折率メガネレンズ材料MR™シリーズをはじめとした様々な屈折率や高耐候性といった特性を持つ材料や、メガネレンズの長寿命化や高機能化に貢献するコーティング材料を世界中のレンズメーカーに提供しています。2024年度より、MR™を使用したメガネレンズの製造・加工工程で発生する切削粉や廃レンズをケミカルリサイクルし、再びMR™として活用する新たな技術開発とその実用化へ向けた取り組みを開始しました。

メガネレンズは、レンズメーカーでのレンズ成型、度付き加工や小売店でのフレームへの枠入れなど、いくつかの工程を経て最終製品になりますが、それらの工程で発生する切削粉や廃レンズのほとんどは現状廃棄されています。この取り組みは、切削粉や廃レンズを回収後、当社の新たな技術を駆使したケミカルリサイクルを行うことで、高い透明度や強度などの高品質が求められるメガネレンズ材料 MR™として再び活用する画期的な取り組みです。メガネレンズのバリューチェーン全体を巻き込んだビジネスモデルの構築により、サーキュラーエコノミー実現を目指します。

メガネレンズ材料 MR™のケミカルリサイクルスキームのイメージ図 メガネレンズ材料 MR™のケミカルリサイクルスキームのイメージ図

当社グループは、サーキュラーエコノミーの実現に向け、廃プラスチック(以下「廃プラ」)を熱分解し、得られた廃プラ分解油をナフサクラッカーに投入することで新たなモノマーを生成し、再生プラスチックへ転換する「油化ケミカルリサイクル」に関する技術開発を推進しています。

クラッカーに投入可能な品質の廃プラ分解油を得るためには、油化原料となる廃プラを限定し、廃プラ分解油に含まれる不純物濃度を適切にコントロールする必要があります。現在サーマルリサイクル(熱回収)されている廃プラには異種混合・複合プラスチックが多く含まれており、これらを熱分解して得られる廃プラ分解油には高濃度の不純物が含まれるため、クラッカーへの投入は困難であるという課題があります。

こうした不純物を除去する方法として、水素化精製などが知られていますが、高温・高圧を要するため多量のエネルギーが必要となります。当社は、熱分解条件の最適化、常温・常圧で行う化学処理を組み合わせた技術により不純物を効率よく取り除き、従来の方法と比べ約70%のエネルギー削減を期待できる「廃プラ熱分解油の精製技術の開発」に着手しました。本技術の実用化により、これまでサーマルリサイクルに回されていた異種混合・複合プラスチックも油化ケミカルリサイクルの原料として活用可能となることから、持続可能な社会の実現に大きく貢献することが期待されます。

本事業は、革新的なアプローチが高く評価され、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム(実用化開発)」に採択されました。

軟包材フィルム 水平リサイクルの共同実証試験開始

素材の素材から世界を刷新。リジェネラティブなライフスタイルを実現するBePLAYER®、RePLAYER®

カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー社会の実現に向けては大きな社会変革が必要です。三井化学グループは人々の生活基盤を支える素材メーカーです。だからこそ当社グループには人々のライフスタイルを根幹から変えていける可能性があります。その強みと存在意義を認識し、グループ横断的に広く社会にソリューションを提供していく責任があります。その責任を果たすためには、積極的な発信を継続し、社会からカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに関する総合的なソリューション企業として認知されることも重要です。そこで当社グループは、「素材の素材まで考える」/「世界を素から変えていく」をキーメッセージに、バイオマスでカーボンニュートラルに貢献する「BePLAYER®」(ビープレイヤー)」と、リサイクルでサーキュラーエコノミーに貢献する「RePLAYER®(リプレイヤー)」の2つのブランドを立ち上げました。再生可能資源の活用とストック資源の管理を目指すこれら2つのソリューションブランドを両輪で進めていくことで、複合的かつ複雑な社会課題を解決し、サステナブルを超えたリジェネラティブ(再生的)なライフスタイルを素材から提供していくことを目指します。
振り返ると三井化学の歴史は原料転換の歴史でもあります。1912年に石炭コークスの副生ガスから化学肥料製造を開始したことを皮切りに、ガス、石油ナフサを原料とした化学事業へと原料転換を実現させながら事業を拡大してきました。そして今まさにバイオマスやリサイクル資源を原料とした化学事業への転換の時にあると言えます。2つのブランドを社会とのコミュニケーションの軸として、再びの原料転換を成し遂げることでカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー社会の実現に貢献するとともに、さらなる成長を目指していきます。

プラスチックごみ問題

プラスチックごみ問題は、不適切な廃棄物管理によりプラスチックが資源循環から外れ、環境中に流出することが原因です。河川や海への流出を防ぐためには、プラスチックに関わるバリューチェーン全体で対策を講じる必要があります。

当社グループは、国際的なアライアンスであるAlliance to End Plastic Waste(AEPW)や、国内アライアンスであるクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)などに参画して、プラスチック廃棄物管理やリサイクル促進に取り組んでいます。

2019年に発足し、化学、プラスチック加工、小売り、廃棄物管理など、プラスチックのサプライチェーンに携わる世界各国の企業が参加しています。世界各地で50以上のプロジェクトを展開し、プロジェクトを通じたソリューションの開発やリスク低減、実証を推進することで、プラスチックごみの削減とプラスチックのサーキュラーエコノミーの促進を目指しています。

 

三井化学、Alliance to End Plastic Wasteに参加

CLOMA
AEPW東京サミット(2023年9月)パネルディスカッションの様子 AEPW東京サミット(2023年9月)パネルディスカッションの様子

2019年1月、業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速するためのプラットフォームとして設立されました。2050年のプラスチック製品リサイクル率100%をゴール、2030年の容器包装プラスチックへの再生材使用率30%をマイルストーンとして、会員間の技術情報共有やビジネスマッチング、実証試験によるビジネスモデルや技術の検証などに取り組んでいます。

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