三井化学グループは、企業グループ理念に従業員の幸福と自己実現を掲げております。そして、「社員の健康は、社員と家族の幸福につながり、働くことの意義や喜びの向上につながり、当社グループの基盤となり、地域社会への貢献となり、社会の持続的発展につながる」と考えています。その上で、「従業員が健康で働ける職場環境や設備などのハード面と、健康管理・健康増進のソフト面を充実させ、労働衛生と健康増進を自律的に行う健康重視経営を推進する」ことを目指す姿としています。
当社では、労働衛生に関する基本事項を定めた労働衛生管理に関する社則(労働衛生規則)を制定し、「社員の健康は、会社の健康に直結する」との基本理念に基づき、職業性疾病を予防し、適正な職場環境の形成を促進するとともに、社員の自主的な健康の確保を支援すべく、健康管理を含む労働衛生施策を積極的に展開しています。
労働衛生
健康重視経営
三井化学健康重視経営(概念図)
健康管理
健康診断や産業医・保健師などによる保健指導を通じて社員の健康管理のサポートを行っています。
2008年より、がん検診を受けやすいように、総合健診(定期健康診断に特殊健診、がん検診を融合)を実施しています。(2024年度の受診率は、健診:ほぼ100%、肺がん検診:ほぼ100%、大腸がん検診:約84%、胃がん検診:約58%、腹部超音波検診:約71%、前立腺がん検診:約89%、乳がん検診約66%、子宮頚がん検診:約56%)
がん検診を含めた健診結果は健康管理室で把握し、精密検査が必要とされる場合は、必要な精密検査をきちんと受けるよう状態を説明し、専門医への積極的な受診を促しています。また、精密検査結果についても、本人もしくは、紹介状の返書にて報告を受けています。2024年度は、がん発見の約56%が健診発見で、発見されたがん全体の約8割は根治可能な状態でした。
また、社員の自主的な健康管理や健康意識啓発のため、希望者に対し入社早期にピロリ菌に対して精度の高い便中抗原検査を行っております。このような形で自身のリスクを把握した上で、各自が希望するタイミング(最短年1回)や方法(内視鏡もしくはバリウムでの検査)で胃がん検診を継続しています。
生活習慣病有所見率、喫煙率
当社では社員の健康状態を確認する指標として、2030年度目標を生活習慣病有所見率8.0%以下に定め、生活習慣病の有所見率をモニタリングしています。2024年度も引き続き、健康診断の事後指導や保健指導、受診勧奨、オンラインを活用しての健康づくり活動等も継続しています。これらの施策の結果、血圧や耐糖能、コレステロールの有所見は低いレベルで抑制しています。残念ながら肥満については有所見率が上昇傾向という結果であり、引き続き保健指導や啓蒙活動、各種運動プログラムによる健康リスク改善に努めてまいります。新型コロナの流行を契機として働き方改革が進み、テレワークの普及やフリーアドレスの導入等で旧来の集団教育が困難となっている現在、オンラインを活用した健康増進コンテンツの配信、アプリを用いたウォーキングイベントの拡大等を通じて健康意識の向上と運動習慣の獲得等を進めてまいります。2025年度は健康オンラインセミナーの開講数を昨年度より倍増し、より健康増進の教育啓蒙活動を充実させていく予定です。
喫煙率は、10年前と比較すると10%以上低下し、年々徐々に減少しています。受動喫煙防止のための喫煙室の管理や健康管理室を中心とした個人への禁煙サポートは引き続き行いますが、社員の健康を守るために、「2025年度末までに敷地内禁煙・昼休みを含む就業時間内禁煙を達成する」ことを目標に、各事業所で協議しながら取り組みを進めています。現在、各事業所でも禁煙タイムや各種禁煙支援活動を継続しており、本社ビルにおいても社長をモデルとしたポスターの掲示等で同施策の周知を図っているところです。
生活習慣病有所見率(三井化学籍男性社員)
※ 生活習慣病有所見率については、項目によって男性と女性の基準値が異なるので、男女別に集計しています。当社の場合、男性の比率が高いため、男性の有所見率をKPIとしています。
疾病休業の内訳(三井化学籍社員)
仕事と治療の両立支援
産業医を中心として、仕事と治療の両立支援を実施しています。病気の対応に悩んでいる社員、主治医の説明がよく理解できなかった社員等の相談にのり、必要なアドバイスやサポートを行っています。就業上の配慮が必要な状況であれば、職場、人事等の関係部署とも相談し、対応をとっています。現在は社内制度も充実してきており、がんに限らず治療をしながら働く社員は珍しくはありません。また、関係情報をまとめ、具体例等を記載した「仕事と治療の両立支援ガイドブック」を提供し、社員が困った際にいつでも見られるように、情報を適宜更新したものを社内掲示板に掲載しています。
仕事と治療の両立支援ガイドブック
海外勤務者の健康支援
海外事業所へは、本社の産業医が海外を定期的に巡回し、海外勤務者の全員(希望するご家族を含む)と健康面接を行い、心身両面から社員を継続的に支援しています。
メンタルヘルスケア対策
メンタルヘルスは社員の健康問題として重要であり、仕事の成果にも大きな影響を及ぼします。また、テレワークの浸透や社会環境の変化により、メンタルケアの重要性は増しています。三井化学では、VISION 2030の策定にともない、従来からモニタリングしていた「メンタル不調休業強度率」を経営指標の一つとして定め、2030年度目標をメンタル不調休業強度率0.25と設定しました。2024年度はメンタル不調の新規発症者が減少したものの、休業6ヵ月以上の者の割合が上昇しており、全体的に休業日数を押し上げる結果となりました。これにより、疾病強度率全体も上昇しました。各種研修(新入社員・管理社員・ライン管理者など対象、セルフケア研修等)、産業医等による面接、カウンセリングの実施や、ストレス度調査の活用を通じて、職場環境の改善を推進しつつ、地道に病状改善や復職の支援を継続していきます。
2024年度からは、カウンセリング希望者の増加に対応するため、オンラインカウンセリングを導入し、対応枠を増やしました。自宅からも相談が可能となり、より柔軟な支援体制を整えました。
また、イントラネット上に過去のストレス調査結果(テレワークによる心身への影響や健康管理のポイントなど)や改善事例の共有、社員向けのテレワークガイドなどを掲載し、各職場で創意工夫を促進することで、働き方の多様化に対応した健全な職場づくりを推進しています。
研修、面談、カウンセリング
新入社員(新卒採用だけでなく、キャリア採用や嘱託採用も含む)に対して、集団研修に加え、コミュニケーションに関するe-ラーニングを提供しています。さらに、入社後2年間は6ヵ月ごとに産業医等が全員と面接し、生活習慣・体調面・上司や同僚とのコミュニケーション等に関する状況を把握し、必要に応じてアドバイスや、上司を含めた話し合いを行うことで、新入社員の会社生活への適応の支援も継続しています。また、カウンセリングを気軽に活用しやすくなるよう新入社員もオンラインでのカウンセリング対象としています。
その他、様々な個性・特性を持つ人々や病気治療を受けながら働く人を組織に受け入れる風土の醸成を目的としたインクルージョン勉強会も継続開催しています。
ストレス調査
ストレス調査は、「職業性ストレス簡易調査」だけでなく、職場改善のヒントとなるよう「メンタルヘルス風土調査」を加えた「新職場ストレス度調査」を2011年より全社で実施しており、ほぼ全社員が回答しています。個人に対する結果のフィードバック・フォローだけでなく、職場改善に役立つよう組織結果を各所属長に説明しています。ストレスが高い職場には、所属長や職場メンバーへのヒアリングの実施や、ストレス低減計画(コミュニケーション向上計画)を立案・実行しています。また、メンタルヘルス風土が良好あるいは経時的に改善してきている職場の活動をグッドプラクティスとして取り上げ、本社では数職場の活動発表会を行っています。また、職場代表者の発表資料や、ヒアリング等で抽出した特徴をイントラネットに掲載し、全社に水平展開しています。
2018年度からは専用のシステムを導入し、個人や所属部署の結果をWeb上で確認できるようにしました。調査結果を積極的に活用する職場も増えてきており、自主的な職場改善のきっかけになっています。その結果、2024年度は「感覚的なストレスが低く、職場の各種機能が良好」と思われる職場は49.5%、「感覚的なストレスも高く仕組みが機能しているか心配」と判定された職場が2.9%という昨年度より良好な調査結果が出ています。
人材マネジメントにおいても、リーダーシップ研修・新任管理社員やライン管理者を対象としたメンタルヘルス研修等を強化しており、働きやすい職場づくりや職場環境の改善に好影響を与えていると考えています。2025年度も、環境変化にともなうグッドプラクティスを収集しながら、各職場風土改善に活用できるよう取り組んでいきます。
2024年度 新職場ストレス度調査結果(三井化学および契約のある関係会社)
*グラフ内の各点は、各職場のポイント(本社は部単位、事業所は課単位)
※1 総合健康リスク:
仕事の負担感・コントロール感・上司・同僚の支援感に関する主観的な感覚尺度から算定。
全国平均を100とした相対評価で、120の職場では不調者発生率が20%高いと推測できる。
※2 メンタルヘルス風土:
指示系統・労務管理・連携協力・研修機会が適切かどうかの尺度から算定。
全国平均を50とした相対評価で、数値が上がるほど職場の風土がよいと考えられる。
ヘルスリテラシーの向上
2021年度から自身の健診結果やお知らせ等を掲載した個人ポータルサイト(MCIヘルスナビ)を開設しました。各自の健診結果を自らオンラインで確認できるだけではなく、自身の健診結果や業務歴に基づく情報、過去の検査データ推移が把握できるグラフ、個人の有所見項目に応じて必要な情報が得られるようなおすすめ情報のリンク、受診勧奨や保健指導の通知等も確認できます。またこのシステムの導入により、より迅速な健診結果を届けることができ、健診結果用紙や封筒等、紙資源の削減も実現しました。
また、様々な健康情報があふれる中、これらを適切に理解し、自身の健康保持・増進のために活用する力を評価する目的で、ヘルスリテラシー調査を実施しています。調査では、健診結果をどこまで確認するか、また健診で要受診の判定項目があった場合の対応などの設問を設けています。これにより、当社従業員の現状のヘルスリテラシーを把握することで、社員の健康意識の醸成・ヘルスリテラシーの向上につながるようサポートしていきます。
MCIヘルスナビホーム画面:受診勧奨や保健指導の通知
過去の検査データ推移
健診対象作業
健康管理のための様々な実施プログラム
三井化学グループでは、健康管理室や健康保険組合が中心となり、様々な健康づくりプログラムを実施し、社員の健康管理を支援しています。2024年度は、例年実施しているヘルシーマイレージ合戦、フィットネス教室、禁煙チャレンジ、社員食堂のヘルシーメニュー、身体測定、体バランス測定会以外に、自身の体を知るヘルスチェック、理学療法士によるからだ相談会などを実施しました。また健康に関するオンラインセミナーを6回シリーズで企画し、リアルタイムあるいはオンデマンドで視聴できるようにしました。
ヘルシーマイレージ合戦は、チームもしくは個人で参加し、運動や健康的な生活をポイント(ヘルシーマイル)として貯め、獲得したマイルに応じて賞品を選択できるプログラムです。Webやスマートフォンで実績の入力が可能で、海外の社員も含め、全社員の約47%が参加しています。少しでもモチベーションアップにつながるよう、各自が楽しんで参加できるよう自主性を大事に運営しています。
健保補助および健保と共同で実施している項目と内容の例
| 健康づくりイベント(オンラインセミナー、オンラインフィットネス、運動教室、栄養教室 等) | |
| 特定保健指導(特定健診の結果、特定保健指導の基準に該当した者) | |
| がん検診 | 胃がん(内視鏡もしくはX線)、大腸がん(便潜血)、腹部エコー |
| 乳がん(マンモグラフィーもしくはエコーの何れか)、子宮頸がん(医師採取) | |
| 前立腺がん(PSA) | |
| 肺がん(CT)(胃がん、もしくは大腸・腹部・前立腺の検診を受診しない場合) | |
| インフルエンザ予防接種 | |
| 歯科検診による歯周病、虫歯および口腔衛生指導 | |
| 生活習慣病健診 | 労働安全衛生法対象外の血液検査 |
| 禁煙支援 | ニコチンパッチ4週間分の補助 |
| 糖尿病性腎症重症化予防 (糖尿病性腎症重症化による人工透析移行防止) | 生活習慣指導、主治医との連携 |
| 病院受診勧奨 | 血糖、血圧、脂質が受診勧奨値以上の者に対する健保からの受診勧奨 |
医療費の抑制
三井化学の傷病手当金は、2015年度以降減少傾向にありましたが、2018年度以降はメンタルヘルス不調者の休業日数増加の影響で、増加に転じました。2024年度の傷病手当金は、2008年度比81%で、増加は続いているものの、がんおよび循環器疾患の抑制効果により長期的には抑制できています。また、三井化学健保全体と比較すると2024年度も抑制されています。
一人当たりの法定給付費(医療費)については、2024年は三井化学健保全体および健康保険組合連合会とも3年連続で増加しています。三井化学健保と健康保険連合会の被保険者一人当たりの法定給付費(医療費)は2008年度100とした指標で見た場合、三井化学健康保険組合の増加率は、一般的な健康保険組合に比べ増加率を約40%程度に抑制できています。これらは、健康管理の総合的な効果と考えられ、今後も健康増進施策を強化・継続します。
傷病手当金推移
法定給付費※1推移(被保険者一人当たり)
※1 法定給付費:
医療費他、傷病手当金、出産育児一時金、出産手当、埋葬費含む。
※2 健康保険組合連合会:
「健保組合予算早期集計結果の概要」よりデータ使用。
労働衛生に関する社外評価
健康優良企業「銀の認定」を継続
三井化学は、健康優良企業を目指して、企業全体で健康づくりに取り組むことを宣言し、審査を受けた結果、健康保険組合連合会東京連合会から2020年12月に「健康優良企業 銀の認定」を受けました。日頃の取り組み(健診結果活用、健康づくり環境の整備、食、運動、禁煙、心の健康についての活動)が評価されたことによるものであり、現在6回目の認証継続に向けて準備しています。
健銀第1444号(4) (認定期間は2025年12月まで)
日本政策投資銀行より「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」を取得
2021年度に三井化学は、(株)日本政策投資銀行(DBJ)が実施する「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」(以下、DBJ健康格付)にて最高ランク格付を取得しました。またこの格付に基づき、100億円の融資を受けました。今回は2013年の格付け取得以降2度目の取得となります。「DBJ健康格付」とは、DBJ独自の評価システムにより、従業員の健康配慮への取り組みが優れた企業を評価・選定するという「健康経営格付」の専門手法を導入した世界で初めての融資メニューです。