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物流

物流の安全・品質

物流作業の安全・品質教育

三井化学では、物流安全・品質の強化を図るために様々な取り組みを行っています。特に近年、世界規模での慢性的な物流人材不足に、国内での2024年問題も加わり、物流の根幹である安全・品質を維持する上で、経験不足や技能の伝承不足が極めて重要な課題となっています。そこで当社では、物流安全・品質向上に向けた、物流協力会社と一体となった教育に注力しています。

具体的には本社および各工場の物流担当部署より選任された物流RC推進者を中心とした取り組みとして、技術力向上のための教育のほか、工場相互パトロールを実施しています。工場相互パトロールでは第三者の目による作業環境や設備・施設等の維持管理状況の確認を行い、改善点や懸念点の指摘だけでなく良い取り組みの共有化により、物流安全・品質の標準化と底上げを図っています。

また、安全・環境・品質を確保した物流を実現するには、物流RCを物流現場に浸透させることが重要と考え、物流協力会社と共同での物流RC教育や訓練を実施しています。さらに、物流協力会社がその業務を再委託する際も、同様の管理を行うよう指導および確認をしています。委託先の物流会社に主要な物流機能を移管し管理している製品についても、当該物流会社の主導のもと、各工場物流担当部署が協力して上記同様の活動を行っています。

物流協力会社を含めた取り組み

  • 物流協議会における物流トラブル・ヒヤリハット事例の共有、自工場の現場パトロール、トラブル事例集を活用したトラブル防止教育の実施
  • 危険物の取扱いに関する集合教育および訓練の実施
  • 物流に関わるトラブル事例や保護具の重要性、季節ごとの留意事項(熱中症対策等)などをわかりやすく紹介した「RC物流安全品質月報」や「RC情報」による、物流安全品質に対する意識啓発の実施
  • 現場作業者との安全対話(ヒアリング)の実施

※ 2024年問題:
2024年4月1日から自動車運転業務への残業猶予規制が撤廃され、年間上限960時間規制が適用され、さらなる運送業ドライバーの不足が懸念されること。

RC物流安全品質月報

「RC物流安全品質月報」
適切な保護具着用など安全対策等を呼び掛ける

RC情報

「RC情報」
物流協力会社とRCに関するコミュニケーションを図る

製品輸送の安全対策

製品情報の提供

三井化学グループの製品には、国連の「危険物輸送に関する勧告※1 」や消防法などの国内法に規定される危険物があります。当社グループでは製品の安全な取り扱いおよび輸送の確保のために、製品の危険性や有害性の有無に関わらず、委託先である協力会社に対して、安全データシート(SDS:Safety Data Sheet)を通じた、製品の安全な取り扱いや保管上の注意に関する情報提供を行っています。また、輸送途上での事故発生時にとるべき措置や関係先への通報内容を記載したイエローカード※2を製品ごとに作成し、物流協力会社に製品輸送時のイエローカード携行を義務付けています。
提供したSDS、イエローカードの配布状況を台帳にて管理し、情報更新時は速やかに最新の情報が提供できるよう体制を整えています。

※1 危険物輸送に関する勧告:
国際的な危険物輸送における安全性を確保するために国連の危険物輸送/専門家委員会が2年ごとに出す勧告。輸送上の危険性や有害性より次の9つに分類される。1:火薬類、2:高圧ガス、3:引火性液体類、4:可燃性物質類、5:酸化性物質類、6:毒物類、7:放射性物質類、8:腐食性物質、9:その他の有害性物質

※2 イエローカード:
化学物質や高圧ガス輸送時の万一の事故に備え、ローリーの運転手や消防・警察などの関係者が取るべき処置を書いた緊急連絡カード。日本化学工業協会が活用を推進している。

イエローカード イエローカード

同業他社との連携

当社グループでは、法令順守はもとより、緊急事態に備えた体制を整備し、安全かつ安心な物流に取り組んでいます。ハイリスク製品については、同業他社と連携して、緊急時の相互応援体制の構築や対応資機材の整備などの安全対策の強化を推進しています。2022年度は、リモート形式で危険品輸送時のトラブル対応などの情報交換を行いました。また、ハイリスク製品の輸送上の安全対策の強化に向けたDXの取り組みを検討しています。

※ ハイリスク製品:
危険性や有害性、輸送量などを指標に、物流途上での事故による社会的影響の大きさが懸念されるもの。

緊急時の対応

三井化学グループでは、製品輸送中に事故が発生した場合に、荷主として迅速的かつ機動的に対応するための取り組みを行っています。

国内での物流事故に備えた取り組み

  • 各工場による緊急時や災害時に備えた保安防災訓練の実施
    緊急時対応訓練の一環として、輸送途中での危険品漏えい事故を想定した訓練や、物流協力会社と協働で行う訓練などを定期的に実施しています。
  • 「三井化学グループ 構外物流事故・緊急連絡網および応援体制(MENET)」の構築
    MENETでは、日本全国を6つに区分けし、それぞれの地区に所在する当社グループの主要工場を応援事業所に定め、24時間出動できる体制を整えています。これらの事業所では、毎年、有事に備えた緊急通報・出動訓練で力量向上を図っています。
  • 一般財団法人 海上災害防止センターとの「危険物質事故対応サービス(HAZMATers)」契約締結
    MENETだけでなく海上災害防止センターの専門チームや専用の資機材を活用することにより、さらなる事故対応体制の強化を図っています。
  • 車両事故に備えた設備の整備
    万が一、車両事故などで製品輸送の継続ができなくなった際に備え、安全に製品を抜き出すための設備の整備を進めています。2021年度には、大阪工場に液化高圧ガスの抜き出し作業に必要な移動式除害装置を配備しました。この装置の使用方法の習熟度を高めるために、物流協力会社との合同演練や安全に関する集合教育を行っています。

グローバルでの物流事故に備えた取り組み

  • 「化学品24時間緊急時対応サービス(Carechem24)」の導入
    NCEC社(National Chemical Emergency Centre)がグローバルに提供する緊急電話対応サービスを利用することで、当社グループ製品の海外での物流事故や問い合わせに対しても迅速かつ的確に対応する他、グローバル物流のレスポンシブル・ケア管理体制の強化を推進しています。
MENET応援事業所およびHAZMATers災害対応拠点 MENET応援事業所およびHAZMATers災害対応拠点
大阪工場の液化高圧ガスの移動式除害装置を使った演練風景 大阪工場の液化高圧ガスの移動式除害装置を使った演練風景

物流DXによる取り組み

デジタル技術を活用した物流品質の向上

三井化学は、在庫管理・出荷管理の効率化を目指し、ハンディターミナルを導入しています。入庫・出庫時に、荷姿に貼付されたQRコードをハンディターミナルで読み取り、在庫管理・出荷管理を行うことで、従来の手書きや表計算ソフトへの入力作業に比べて、業務量が削減され、さらにペーパーレス化も達成しました。また、これまで行っていた目視での銘柄名やロット番号の確認では、誤読による誤出荷のリスクがありましたが、ハンディターミナル導入は、誤出荷防止にも効果を発揮しています。2019年度に名古屋工場で本格的に運用を開始、2022年度には市原工場への導入を完了しました。

また、2021年度には当社独自のSDSシステムからイエローカード帳票に必要な情報を自動出力する機能(イエローカード半自動出力システム)の開発・導入を行いました。2022年度から実運用を開始し、この機能の追加によりイエローカードの作成業務の標準化および作業負荷の大幅軽減が実現されました。これにより、安全に関わる情報伝達を物流サプライチェーン全体でよりスピーディーかつ正確に行うことができ安全管理の強化にも繫がっています。

ハンディーターミナル ハンディーターミナル
イエローカード半自動出力システム イメージ図 イエローカード半自動出力システム イメージ図

物流BIを用いた新たな業務のやり方への取り組み

BI(Business Intelligence)ツールを用いた物流実態の可視化を進めることにより、サプライチェーンの最適化を図っています。物流に関するデータを分析する上で、データ共有、データ収集の頻度、データ粒度、およびインフラ面の問題点を解消する目的で、社内共通のデータ基盤を設け、事業部・物流部にて定常的に分析が行える環境の整備を行い、物流費の可視化を実現すると共に、物流課題の抽出を行っています。今後、物流2024年問題により、従来よりも長距離輸送が困難となるため、営業倉庫の見直しなど輸送効率の向上が必要となります。ドライバーの労働環境改善のためにも、物流ネットワーク再編を進めます。

2024年度より、BIツールを用いて製品輸送におけるエネルギー使用量および温室効果ガス(GHG)排出量の可視化を実現する取り組みを開始しました。今後、カーボンニュートラルの実現に向けてエネルギーに関する環境が急激に変化する中で、当該ツールを活用し、新たなGHG削減施策の抽出や顧客からの問合せに迅速に対応できる体制を整えています。