物流
安定輸送(持続可能な物流)
物流環境は、物流協力会社や船会社などが貨物や荷主を選ぶ時代に変化しています。そのため、安定輸送(持続可能な物流)の実現には、物流協力会社や船会社に「選ばれる荷主」にならなければなりません。
物流人材の不足が深刻化する背景には、長時間労働等といった労働環境の問題があるとされています。さらに2024年問題※や2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、物流の効率化は喫緊の課題です。三井化学グループは、物流に携わるパートナーとともに、会社の枠を超えて労働環境の改善や効率的な輸送スキーム構築に取り組むことで、物流人材と物流安全の確保、およびGHG排出量削減に向けた取り組みを進めています
※ 2024年問題:
2024年4月1日から自動車運転業務への残業猶予規制が撤廃され、年間上限960時間規制が適用され、さらなる運送業ドライバーの不足が懸念されること。
ドライバーの待機時間削減プロジェクト
三井化学グループは、ドライバーの労働環境改善および物流協力会社の負担軽減を主な目的として、積込みにともなう待機時間軽減に取り組んでいます。市原工場、大阪工場、岩国大竹工場では、積込み作業に事前予約システムを導入したことで、これまでドライバーが順番取りのために行っていた早朝待機を軽減しました。当社グループでは、すべての積込みに事前予約ができるようシステムの更新も含め、さらなるドライバーの労働環境改善に向けて検討を重ねています。
イニシアティブへの参加
三井化学は、国土交通省・経済産業省・農林水産省が提唱する「ホワイト物流」推進運動に賛同し、自主行動宣言を行いました。「ホワイト物流」推進運動とは、深刻化するドライバー不足への対応と物流の安定性の確保を目的とし、トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化と、女性や60代以上のドライバー等も働きやすい労働環境の実現に取り組む運動です。当社が、自主行動宣言のなかで表明している取り組みは以下の通りです。
取り組み項目 | 内容、期待される効果 |
---|---|
予約受付システムの導入 | トラックの予約受付システムを導入し、待ち時間短縮に努めます。 |
パレット等の活用 | パレット、通い箱等を活用し、荷役時間を削減します。 |
入出荷情報等の事前提供 | 物流事業者の準備時間を確保するため、入出荷情報等を早めに提供します。 |
高速道路の利用 | 高速道路の利用と料金の負担について、真摯に協議に応じます。 |
船舶や鉄道へのモーダルシフト | 長距離輸送について、船や鉄道を積極利用。GHG削減に努めます。 |
物流事業者を選定する際の法令遵守状況の考慮 | 契約する物流事業者を選定する際には、関係法令の遵守状況を考慮します。 |
荷役作業時の安全対策 | 作業手順の明示、安全通路の確保、足場の設置等の対策を講じ、作業者の安全確保を徹底します。 |
異常気象時の運行の中止・中断 | 異常気象が発生した際や、その発生が見込まれる際には、無理な運送依頼は行いません。 |
モーダルシフト
三井化学グループでは、2017年度国土交通省より「モーダルシフト等推進事業」に認定された三井化学を含む5社共同の取り組みを皮切りに、モーダルシフトを進めています。
トラック輸送から鉄道コンテナ輸送へのモーダルシフト
2017年に当社の市原地区(千葉県)と当社の関係会社である三井・ダウ ポリケミカルの大竹地区(広島県)間の製品輸送をトラックから鉄道に切り替えました。さらに、同年8月より日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)提供の大型コンテナを本格導入し、三井化学グループの共同物流によってコンテナラウンドユース※を実現しました。これらにより、安定的な輸送手段の確保、CO2排出量70%削減、ドライバーの拘束時間削減を可能にしました。これは、当社グループとJR貨物、物流協力会社とのパートナーシップよる成果です。
※ コンテナラウンドユース:
輸送に使用したコンテナを空のまま戻さず、帰り荷を確保して転用すること。
当社は国土交通省が設置している「エコレール運営・審査委員会」により「エコレールマーク認定企業」として認定されています。
トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフト
2019年に市原地区から中国エリアへの500Kgフレコンを用いた製品の輸送を、トラック輸送から内航船による海上輸送へのモーダルシフトを行いました。これにあたり、特殊20フィートハイキューブコンテナ(実用新案取得)および専用ラック(意匠取得)を製作し、従来平置きしかできなかったフレコンにおいて、二段組を可能とすることにより、積載効率を向上させ、より一層のCO2削減およびドライバーの省力化を実現しました。なお、この取り組みは、社団法人日本物流団体連合会主催の「第20回物流環境大賞」において、「物流環境負荷軽減技術開発賞」を受賞しました。当取り組みの展開により、2021年3月からは九州エリアへの内航船化を行っています。
2021年には旭化成株式会社と協働し、千葉~山口・広島間の長距離輸送をトラックから船舶へモーダルシフトを行いました。当取り組みにおいて、海上コンテナ船と定期コンテナ船を、往路は当社、復路は旭化成が利用することにより、コンテナラウンドユースも実現しました。これにより、CO2年間排出量を従来比で約40%削減するとともにドライバー不足対策にも大きく貢献しています。さらに、サイドエンドオープン型コンテナを起用することにより、荷役作業を従来比で約80%削減し大幅な作業効率の改善にもつながりました。本取り組みは、社団法人日本物流団体連合会主催の「第22回物流環境大賞」で「特別賞」を受賞しました。
異業種家電メーカーとのコンテナラウンドユース
2022年には異業種家電メーカー(以下、A社)と協働し、当社の物流協力会社である山九(株)が管理する当社専用バルクコンテナの復路にA社品を積載し、コンテナラウンドユースを開始しました。当社としては群馬~岩国間の空コンテナの空走が回避でき、A社としは群馬~福岡間の陸上輸送の内、船橋~岩国間のモーダルシフト化が実現しました。これにより、積載率向上とCO2排出量削減が見込まれます。
共同物流フロー
他企業との共同物流
三井化学グループは、他企業と協働し化学品物流の標準化・効率化を図ることで、物流環境変換に柔軟に対応できる強靭なサプライチェーンの構築を目指しています。
同業他社との小口製品共同物流
当社は2016年から、京葉地区において近隣企業との共同物流を行っています。従来は一般雑貨との混載輸送で、複数の積替拠点を経由していましたが、化学品専業会社を利用し、集荷から配送拠点までの幹線輸送と、配送拠点から各社顧客までの配送を集約することで、より専門的・効率的な輸送を実現しています。これにより、ドライバー不足、CO2削減、および破損等の品質トラブルの削減に貢献しています。当初は東北向けのみの取り組みでしたが、輸送先を北陸・甲信越エリアにも拡大しています。共同物流システムをより強固にするために、物流協力会社やパートナー荷主とともに参加会社を募りながら展開を図っていこうとしています。なお、現在は、複数の地域での荷主連携スキームと化学系物流スキームが立ち上がっており、これらをつなげることで、全国路線便網の補完・代替を実現し、小口化学品輸配送網の安定化につなげる予定です。
共同物流システム
化学品物流の標準化・効率化に向けた共同検討
当社は、化学業界の物流における物流の輸送・保管能力不足という極めて重要な課題の解決を目指し、同業他社との連携した取り組みを進めています。
2022年度からは、三菱ケミカルグループと、化学品物流の標準化・効率化に向けた共同検討を開始※1しました。共同輸送、輸送ネットワークの相互活用だけでなく、共同物流案件の拡大に向けた輸送ルート・マッチングの検討を、DX技術を活用して進めていきます。
また、2023年7月には、経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」内に、当社、三菱ケミカルグループ、東ソー(株)および東レ(株)の4社を事務局とする「化学品ワーキンググループ」を設置※2しました。本ワーキンググループでの活動を通じ、物流の商慣行の改革・標準化、DX推進に関するアクションプランの策定・ステークホルダーへの周知・実行などの施策を通じて、生産性・安全性の確保と二酸化炭素の排出量削減を両立させた持続可能な物流の実現を目指します。
物流GHG排出量削減目標の設定
三井化学グループは気候変動対応方針において、「バリューチェーンによる貢献最大化」を掲げており、製品輸送を担う物流工程において排出されるGHG排出量の削減に向けても取り組みを進めてきました。物流はその特性上、製品の出荷量の増減や自然災害に起因した物流トラブルの有無によりGHG排出量や輸送によるエネルギー原単位が変動しやすく、個々の取り組みによるGHG排出量の削減努力がこれらの数値からは見えにくいという課題があります。それでもGHG排出量削減に取り組む上で、定量化した情報を基に進捗をモニタリングし取り組みの改善につなげていくべく、2022年度からは鉄道、トラック、船舶、航空機等の輸送を主とする国内物流と、船舶によるコンテナ輸送を主とする国際物流とで区別した目標を立て、それぞれの状況にあった管理と進捗の把握に取り組んでいます。
特に国際物流においては、船舶によるコンテナ輸送GHG排出量の把握を三井倉庫ホールディングスと協業で進め※、そのGHG排出量計算値は国際的な第三者機関であるDNV社の妥当性評価を得ています。今後は起用船社の選定においてもGHG削減への取り組み、および貢献度を考慮するなど、バリューチェーン全体でGHG排出量の削減に向け取り組んでいきます。
※製品の輸送によるエネルギー原単位:
「エネルギー使用量(原油換算KL)」 / 「製品出荷数量(千t)」