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物流

安定輸送(持続可能な物流)

物流環境は、物流協力会社や船会社などが貨物や荷主を選ぶ時代に変化しています。そのため、安定輸送(持続可能な物流)の実現には、物流協力会社や船会社に「選ばれる荷主」にならなければなりません。

安定輸送への懸念材料として、物流人材の不足が挙げられ、この背景として長時間労働等といった労働環境が指摘されています。長時間労働の是正に向けては、働き方改革の一環として、2024年4月より自動車運転業務への労働時間の上限規制の適用が開始され、労働環境の改善につながることが期待される一方、輸送量の減少に伴うドライバー不足の一層の深刻化が懸念されています(2024年問題)。また、2025年4月に改正物流2法が施行され、荷主に対して「荷待時間及び荷役時間の短縮」、「積載効率の向上」の努力義務が課せられるなど、物流の効率化は喫緊の課題です。三井化学グループは、物流に携わるパートナーとともに、会社の枠を超えて労働環境の改善や効率的な輸送スキーム構築に取り組むことで、物流人材と物流安全の確保、およびGHG排出量削減に向けた取り組みを進めています。

※ 改正物流2法:喫緊の物流危機を回避し物流の持続的成長を図る目的で、物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正が2025年4月に施行され、荷主・物流事業者に対する規制的措置やトラック事業者の取引に対する規制的措置が定められた。

トラックバース予約受付システム導入によるドライバーの待機時間削減の取り組み

三井化学グループは、ドライバーの労働環境改善および物流協力会社の負担軽減を主な目的として、積込みにともなう待機時間軽減に取り組んでいます。2024年には、大阪工場および岩国大竹工場にトラックバース予約受付システムを導入しました。これにより、従来発生していた構内混雑や待機時間の削減が期待され、ドライバーの拘束時間短縮と物流協力会社の業務負担軽減に寄与しています。今後も、他の拠点へのシステムの展開やシステム機能の高度化を通じて、持続可能な物流体制の構築を目指してまいります。

荷役作業環境の改善

物流業界では長年にわたり、一部ではあるものの、運送会社の乗務員が荷造りや荷下ろしを行う附帯作業を実施している実態があります。三井化学では2019年に「ホワイト物流」推進運動にて持続可能な物流の実現に向けた自主行動宣言を行いました。また、2024年に公表されたフィジカルインターネット実現会議化学品WGの「化学品に関する物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」に賛同し、運送会社の乗務員が実施している附帯作業の廃止に向けて、事業部門・品質保証部門と共に全社一丸となって取引先への改善の働きかけを行い、附帯作業の適正化に取り組んでまいります。

イニシアティブへの参加

取り組み項目内容、期待される効果
予約受付システムの導入トラックの予約受付システムを導入し、待ち時間短縮に努めます。
パレット等の活用パレット、通い箱等を活用し、荷役時間を削減します。
入出荷情報等の事前提供物流事業者の準備時間を確保するため、入出荷情報等を早めに提供します。
高速道路の利用高速道路の利用と料金の負担について、真摯に協議に応じます。
船舶や鉄道へのモーダルシフト長距離輸送について、船や鉄道を積極利用。GHG削減に努めます。
物流事業者を選定する際の法令遵守状況の考慮契約する物流事業者を選定する際には、関係法令の遵守状況を考慮します。
荷役作業時の安全対策作業手順の明示、安全通路の確保、足場の設置等の対策を講じ、作業者の安全確保を徹底します。
異常気象時の運行の中止・中断異常気象が発生した際や、その発生が見込まれる際には、無理な運送依頼は行いません。

モーダルシフト

三井化学グループは、安定的な輸送手段の確保と環境問題への対応を目的としたモーダルシフトの取り組みを進めています。

トラック輸送から鉄道コンテナ輸送へのモーダルシフト

2023年に福岡県と埼玉県間の長距離輸送モードをトラックから鉄道輸送へとモーダルシフトする取り組みを開始しました。これにより、CO2排出量を従来比84%削減、トラックドライバーの運転時間を従来比90%削減しました。また同年、山口県と大阪府間の長距離輸送モードをトラックから鉄道輸送へとモーダルシフトする取り組みも開始しました。本取り組みにより、CO2排出量の従来比90%削減、トラックドライバーの運転時間の従来比90%削減を実現しました。これら2つの案件は、一般社団法人日本物流団体連合会主催の「第25回物流環境大賞」にて、物流協力会社と合同で「特別賞」を受賞しました。

同じく2023年、神奈川県川崎市から福岡県大牟田市までのトラックによる長距離輸送を、複数の物流業者と連携・協働した結果、東京-福岡区間で貨物鉄道輸送への全量転換(モーダルシフト)を実現しました。これにより、CO2排出量の従来比72%削減、トラックドライバーの運転時間の2,929.5時間/年削減を達成しました。本取り組みは、一般社団法人日本物流団体連合会が主催する「第1回モーダルシフト優良事業者大賞表彰」において、ドライバーの運転時間を大幅に軽減するとともに、持続可能な輸送スキームを構築したことが評価され、「モーダルシフト優良事業者賞」(連携・協働部門)を受賞しました。

当社は、国土交通省が設置している「エコレール運営・審査委員会」により「エコレールマーク認定企業」として認定されています。

エコレールマーク エコレールマーク

トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフト

2021年には旭化成(株)と協働し、千葉~山口・広島間の長距離輸送をトラックから船舶へモーダルシフトを行いました。当取り組みにおいて、海上コンテナ船と定期コンテナ船を、往路は当社、復路は旭化成が利用することにより、コンテナラウンドユースも実現しました。これにより、CO2年間排出量を従来比で約40%削減するとともにドライバー不足対策にも大きく貢献しています。さらに、サイドエンドオープン型コンテナを起用することにより、荷役作業を従来比で約80%削減し大幅な作業効率の改善にもつながりました。本取り組みは、社団法人日本物流団体連合会主催の「第22回物流環境大賞」で「特別賞」を受賞しました。

専用ラックの利用により段積みが可能に 専用ラックの利用により段積みが可能に
サイドエンドオープン型コンテナ サイドエンドオープン型コンテナ

異業種家電メーカーとのコンテナラウンドユース

2022年には異業種家電メーカー(以下、A社)と協働し、当社の物流協力会社である山九(株)が管理する当社専用バルクコンテナの復路にA社品を積載し、コンテナラウンドユースを開始しました。当社としては群馬~岩国間の空コンテナの空走が回避でき、A社としては群馬~福岡間の陸上輸送の内、船橋~岩国間のモーダルシフト化が実現しました。これにより、積載率向上とCO2排出量削減が見込まれます。

共同物流フロー

共同物流フロー
共同物流フロー

他企業との共同物流

三井化学グループは、他企業と協働し化学品物流の標準化・効率化を図ることで、物流環境変換に柔軟に対応できる強靭なサプライチェーンの構築を目指しています。

同業他社との小口製品共同物流

当社は2016年から、京葉地区において近隣企業との共同物流を行っています。従来は一般雑貨との混載輸送で、複数の積替拠点を経由していましたが、化学品専業会社を利用し、集荷から配送拠点までの幹線輸送と、配送拠点から各社顧客までの配送を集約することで、より専門的・効率的な輸送を実現しています。これにより、ドライバー不足、CO2削減、および破損等の品質トラブルの削減に貢献しています。当初は東北向けのみの取り組みでしたが、輸送先を北陸・甲信越エリアにも拡大しています。共同物流システムをより強固にするために、物流協力会社やパートナー荷主とともに参加会社を募りながら展開を図っていこうとしています。なお、現在は、複数の地域での荷主連携スキームと化学系物流スキームが立ち上がっており、これらをつなげることで、全国路線便網の補完・代替を実現し、小口化学品輸配送網の安定化につなげる予定です。

共同物流システム

共同物流システム

化学品物流の標準化・効率化に向けた共同検討

当社は、化学業界の物流における輸送・保管能力不足という極めて重要な課題の解決を目指し、経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」の下部組織として設置された「化学品ワーキンググループ(以下、化学品WG)」に事務局として参画し、化学品WGを通して同業他社と連携した取り組みを進めています。

化学品WGでは、化学品物流の標準化・効率化に向けた共同検討を開始しました。共同輸送、輸送ネットワークの相互活用だけでなく、共同物流案件の拡大に向けた輸送ルート・マッチングの検討を、DX技術を活用して進めていきます。

また、化学品WGの参加企業のうち、三菱ケミカルグループ(株)、三井化学(株)、東ソー(株)、東レ(株)、プライムポリマー(株)の5社が、2024年9月から12月まで物流データプラットフォームや物流情報標準ガイドラインを活用した実証実験を実施しました。実証実験では、四日市~市原のコンビナート間を結ぶ実貨・実車を伴う実地検証に加えて、中京~北陸間における共同物流のシミュレーション、市原~東北間における輸送効率の分析を行い、共同輸送の効果と共同物流プラットフォームの有用性を検証しました。特に、実地検証においては、トラック積載率(20pt改善)、CO2排出量(28%削減)に顕著な効果が確認できました。

製品輸送におけるエネルギー使用量およびGHG排出量の可視化

三井化学グループは気候変動対応方針において、「バリューチェーンによる貢献最大化」を掲げており、製品輸送を担う物流工程において排出されるGHG排出量の削減に向けても取り組みを進めてきました。物流はその特性上、製品の出荷量の増減や自然災害に起因した物流トラブルの有無によりGHG排出量や輸送によるエネルギー原単位が変動しやすく、個々の取り組みによるGHG排出量の削減努力がこれらの数値からは見えにくいという課題があります。それでもGHG排出量削減に取り組む上で、定量化した情報を基に進捗をモニタリングし取り組みの改善につなげていくべく、2022年度からは鉄道、トラック、船舶、航空機等の輸送を主とする国内物流と、船舶によるコンテナ輸送を主とする国際物流とで区別した目標を立て、それぞれの状況にあった管理と進捗の把握に取り組んでいます。

特に国際物流においては、船舶によるコンテナ輸送GHG排出量の把握を三井倉庫ホールディングスと協業で進め、そのGHG排出量計算値は国際的な第三者機関であるDNV社の妥当性評価を得ています。今後は起用船社の選定においてもGHG削減への取り組み、および貢献度を考慮するなど、バリューチェーン全体でGHG排出量の削減に向け取り組んでいきます。

また、2024年に導入したBIツールにより、製品輸送におけるエネルギー使用量およびGHG排出量という2種類のデータを同時計算し容易に把握することが可能となり、顧客からのGHG排出量の問合せなどへのタイムリーな対応を実現しました。加えて、GHG総排出量と内訳のリアルタイム可視化により、削減目標探索と実施が可能となりました。BIツールを活用して非効率な長距離輸送を特定し、事業・地域横断でモーダルシフトや輸送ルートの変更を検討することで、お客様とともにGHG削減施策を促進していきます。