しっかり包装・密封、でも開封は簡単イージーオープンフィルム
コンビニやスーパーで売られているゼリーや豆腐・・・。蓋の端をつまんで引っ張ればサッと開封できて、すぐに食べられます。“そんなことは当たり前”と思っている人もいるかもしれません。しかしそこには、三井化学東セロが長年にわたり培ってきた高度な包装フィルム技術が生きています。
簡単に開けられるのにはワケがある
下の写真は、ゼリーの蓋をはがす様子を追ったものです。改めて見てみると、大きな力を加えなくても、スッとはがれることに気づきます。しかし中には、なかなか開けられなくてイライラしたことがある人もいるのではないでしょうか。サッと開けられるものと、そうではないものとでは一体どのような違いがあるのでしょうか。
その秘密はゼリーの入っている容器ではなく、蓋のほうにあります。蓋の役割は、中身が漏れ出さないように守ることです。ですから、容器と蓋は熱で溶かして密着させます(これを「ヒートシール」といいます)。容器も蓋もプラスチックでできていますが、プラスチックの材料にはさまざまな種類があり、それぞれ性質が異なります。そこでシールするときには、容器と蓋の材料の「相性」が重要になります。
容器と蓋が同じ材料の場合、熱をかけると容器と蓋は一体化し、簡単に開封することができなくなります。蓋がなかなかあかないのは、こんな場合です。
そこで、容器と蓋の「相性」を調節するフィルムが必要となります。それが、三井化学東セロの「イージーオープンフィルム」です。このフィルムのおかげで、蓋は熱をかけると容器としっかりくっつき、食品工場からコンビニへ運んだり、店頭に並べられたりしている間は決して開くことはないのに、食べる時には簡単に開けられるのです。
厚さわずか50ミクロン程度の優れもの
でも、私たちがゼリーの蓋を開けるとき、イージーオープンフィルムの存在を感じることはありません。いったいどこにあるのでしょうか。ゼリーの蓋は、100ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)ほどのごく薄いフィルムでできています。このフィルムは、見た目には1枚ですが、実は3枚のフィルムを接着剤などで貼り合わせて作られています。一番外側に商品名などを印刷するベースフィルム、中間に酸素や湿気から中身を守るバリアフィルム、一番内側にイージーオープンフィルムがあるのです。イージーオープンフィルムの厚みはわずか50ミクロンほどですから、気づかないのも無理はありません。
イージーオープンフィルムが使用される食品には、ゼリーや豆腐だけでなく、無菌米飯や茶わん蒸し、スライスハムなど、さまざまな種類があります。このため三井化学東セロでは、例えば「熱に強い」など、用途に応じた特長を持つイージーオープンフィルムを取り揃えています。
三井化学東セロのイージーオープンフィルムの歴史は、1970年代にさかのぼります。当時、三井化学のグループ会社である三井・デュポンポリケミカルが特殊なプラスチック原料を開発し、同時に、三井化学東セロがその原料をフィルムに成形することに成功しました。柔らかいプラスチックを苦労してフィルムにし1980年から販売を開始したものの、その独特の性質を生かした用途はまだ少なく、こつこつと探る状況が続きました。
1970年代といえば、ちょうどカップラーメンが登場し、「はがれやすい蓋」が求められるようになった時期でもあります。そして、この「イージーオープン」という用途に、三井化学東セロのフィルムの性質はぴったりであることがわかったのです。
その後、カップラーメンだけでなく、ゼリー、プリン、豆腐などプラスチック容器に入った食品が広く売られるようになり、イージーオープンフィルムの需要は大幅に伸びました。今では三井化学東セロの主力製品の1つになっています。
三井化学東セロでは、さまざまな種類の材料を混ぜ合わせたり、異なる材料を同時に押し出してフィルムに成形する技術を進化させることで、内容物をしっかり保護しながら簡単に開封できるイージーオープンフィルムを生み出してきました。
しかし、技術は世の中の変化に合わせて進化していくもので、製品の改良、新製品の開発に終わりはありません。イージーオープンフィルムの場合も、高齢社会を迎え、より軽い力でも開けられることが求められるようになっています。皆さんが求める性質のフィルムを次々に生み出すことは簡単ではありませんが、より快適な暮らしのために研究開発を続けています。
コラム「もっと知りたいイージーオープンフィルム」
ゼリーの蓋を軽い力で開けられるのはなぜでしょうか。イージーオープンフィルムの代表的な開封方法は、次の3種類です。
1つ目は「界面剥離」。容器と蓋の境目(界面)ではがれる、もっとも基本的な開き方です。
2つ目は「層間剥離」で、イージーオープンフィルム自体を多層構成にし、ある層と層の接着力を容器とのヒートシール強度よりも弱く設計しておくことで、決まった層の間ではがれるようにするものです。
3つ目は「凝集剥離」です。これは、フィルムの中に別の材料の小さな粒子をたくさん練りこんでおき、その境界をきっかけとして破れるようにしたものです。
凝集剥離の場合、はがした後の蓋と容器をよく見ると、蓋の内側のイージーオープンフィルムが、容器側に白く跡として残っていることが確認できます。「層間剥離」や「凝集剥離」は、蓋と容器の界面とは別の部分で開封する仕組みです。このため、ヒートシールにより蓋と容器を一体化させても開封しやすく、完全密封が求められる製品で採用されています。