三井化学グループでは「人権尊重」を当社グループのマテリアリティの一つとし、「事業継続の前提となる課題」と位置付けて人権尊重に向けた取り組みを進めています。
人権の尊重
取り組み
人権デュー・ディリジェンス
三井化学グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則した人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、当社グループの企業活動がライツホルダーに与える人権への負の影響を、回避・軽減および防止することを目指しています。
人権デュー・ディリジェンスの取り組み

人権への負の影響の特定・分析・評価
三井化学グループの事業拠点がある国々には、地域の政治、経済、社会の状況を背景とした、人権に関する様々な課題があります。2024年度は、前回の人権リスクアセスメント実施から3年が経過したことを踏まえ、改めて外部専門家の協力のもと、国際的なガイドラインや指標等を参考に、各人権課題の発生可能性、発生時の深刻度の観点から、事業部門・機能部門の関係者とともにリスクマッピングを実施しました。
その結果、「安全かつ健康的な作業条件を享受する権利の侵害(労働安全衛生)」、「運搬経路での人権侵害」、「地域住民の生活に及ぼす影響(環境保全)」、「原材料の調達における人権侵害」等の、13の人権課題を、当社グループにおいて、特に優先的に見るべき課題と特定しました。今後3年かけて、三井化学および国内外のグループ会社の全製造拠点に対して、優先課題に関する人権リスクアセスメント(書面調査)及び人権インパクトアセスメント(実態調査)を実施していきます。
リスクマップ
■ 若年労働者の権利 ■ 地域住民や先住民の権利 ■ 腐敗 ■ 消費者の安全と健康 ■ 原材料調達を通じた人権侵害(紛争鉱物含む) ■ 強制労働 ■ 児童労働 | ■ 地域住民の生活に及ぼす影響 ■ 安全かつ健康的な作業条件を享受する権利 ■ 運搬経路での人権
製造拠点にフォーカス | |
■ 職場での差別 ■ 採用における差別 ■ 母性保護を受ける権利 ■ 居住、移転、労働条件を選択する自由 ■ 過重労働・長時間労働 ■ 適正な報酬・生活賃金 ■ 生活水準及び健康の享受に関する権利 ■ 社会保障を受ける権利 ■ 思想、宗教、表現の自由 ■ 広告等を通じた人権侵害 | ■ プライバシーの侵害 ■ ハラスメント ■ 結社の自由・団体交渉権 | |
■ 顕著な人権課題 ■ その他留意する人権課題 |
2024年度の三井化学グループ人権インパクトアセスメントの実施概要
人権インパクトアセスメントの目的
- 人権リスクの把握
現地を訪問し、インタビューや視察を通じて、当社グループがライツホルダーに与える人権への負の影響を特定・評価(人権インパクトアセスメント)することにより、人権リスクを把握すること。 - 人権に対する顕在的な負の影響/人権リスクへの対処
本調査にて確認された事象を、三井化学グループ人権方針(人権方針内に明記された関連する方針、国際基準、企業活動を行う国または地域の法律を含む)に基づき評価し、対応を検討することにより、人権に対する顕在的な負の影響を回避・軽減し、人権リスクの防止を図ること。
実施内容
2025年3月、日本国内の製造拠点1社を訪問し、経営者・管理者インタビュー、帳票確認、工場の構内確認、労働者インタビュー(間接雇用の労働者を含む14名)を実施した。なお、サプライヤーや地域住民への調査は、本調査の対象外。
確認の視点
人権リスクアセスメントの結果を踏まえ、脆弱な立場に置かれることが多い労働者の人権リスクを、次の視点から確認した。
- 人権マネジメント(教育の実施、相談窓口)
- 労働安全衛生
- 環境保全
- 児童労働・長時間労働・適正報酬
- 原料調達、運搬経路における人権課題への対応
実施結果
今回のインタビューを通じて把握できる限りにおいて、人権に対する顕在的な負の影響は見受けられなかった。
人権リスクの防止
注意すべき人権リスクとして確認された事象に対しては、次のとおり対応を検討・協議している。
なお、実施状況および結果については、2024年度末の確認を予定している。
- 人権マネジメント(相談窓口)
- 国内関係会社が独自で備えている通報窓口を、匿名利用可能な仕組みへ改良
- 特に、協力会社社員に対する、当社グループの内部通報制度の周知徹底
- 労働安全衛生
- 緊急事態への対応(誘導灯・誘導標識の設置、応急処置の研修、避難集合場所・避難ルートの掲示等)
- 健康診断項目の見直し
- 化学物質対策として労働者に周知している掲示物に関し、内容及び掲示方法の見直し
- 環境保全
- 臭気への対応
- 長時間労働
- 労働時間改善のための人員補充・適正配置や、管理者教育や労働者対話の継続的実施
以上
人権インパクトアセスメントで確認された事象については、当社グループ全体で認識すべき人権リスクとして受け止め、人権リスクアセスメント(書面調査)を実施した製造拠点及び、各製造拠点を所管する事業部と対話の機会を設け、適正な人権課題への対処を実施していきます。
また、優先課題である「原材料の調達における人権侵害」および「運搬経路での人権侵害」については、本社の購買部門、物流部門とも、現在の取り組みの評価を実施しました。昨今の企業活動と人権に関する社会的要請の高まりも踏まえ、今後、より具体的な人権リスク管理の対応方針をグループレベルで検討していく予定です。
なお、人権インパクトアセスメントの実施結果についてはESG推進委員会、取締役会に報告しています。
サプライチェーンへの取り組み
当社グループでは、三井化学グループ購買方針に基づき、「持続可能な調達」の観点から購買活動を行っています。また、当社グループの取引先には、ともに取り組んでいただきたいことを取りまとめた「三井化学グループ持続可能な調達ガイドライン」を共有し、人権尊重、公正な労働条件や労働環境、環境負荷の低減、法令および社会規範の遵守等を求めています。
その取り組み状況については、「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」や外部のサステナビリティ評価機関を利用した持続可能な調達調査により確認し、調査結果に基づき、フィードバックおよび改善支援を行っております。また、紛争や犯罪への関与の無い原材料の使用(紛争鉱物への取り組み)に関しても、本調査のなかで確認を行っております。
苦情処理メカニズム(予防と是正)
当社グループでは、人権デュー・ディリジェンスを通じてライツホルダーとの対話を重ねるとともに、ライツホルダーからの懸念事項や苦情を受け付ける体制の構築を目指しています。
グローバル内部通報制度(コンプライアンスホットライン)
当社グループでは直接、当社のコンプライアンス担当部門である総務・法務部、人事部または社外の法律事務所に通報(報告・相談)できる制度として、グローバル内部通報制度(コンプライアンスホットライン)を設けており、人権に関する問い合わせも受け付けています。当社グループの役員、社員のみならず、当社グループの役員、社員の家族および退職者ならびに工場への派遣/協力会社やサプライヤーを含む取引先の方等、当社グループの企業活動に関係があるすべての方が利用できます。本制度を通じて通報された情報は、当社監査役に、即時または定期的に報告し、重要なものについては当社取締役に必要の都度、報告しています。なお、通報者が本制度により通報したことを理由に、不利益な取り扱いを一切受けないことを、当社「内部通報管理規則」で明確に規定しており、規則への違反者には懲戒等の規定も定め厳重に運用しています。
ハラスメント相談員の設置
当社グループでは、各事業所にハラスメント相談員を複数設置し、発生した場合の公正な事実の把握、迅速な解決への対応を図っています。ハラスメント相談員は、男女それぞれの担当者がいます。対象は、社員、嘱託社員、パート・アルバイト、派遣/協力会社社員等、当社で働いている方すべて、また、顧客、取引先の社員の方等を含みます。
ステークホルダー・エンゲージメント
当社グループでは、様々なステークホルダーと対話を行うプログラムに積極的に参加し、人権問題が発生する文脈や、事業活動と人権との関連性について理解を深め、当社グループの人権尊重に向けた取り組みに活かしています。
2015年度より参加をしているCRT日本委員会主催のステークホルダー・エンゲージメントプログラムでは、毎年、NGO/NPO及び有識者から国内外で注目される人権課題の提起を受け、「業界毎に重要な人権課題」の特定に向け、同業他社を交えた議論を行っております。
2023年度は、ILO駐日事務所・GCNJ共催の国際人権・労働基準の尊重に向けた企業内専門人材の育成プログラムにも参加し、自社の事業活動に人権尊重の取り組みをどのように組み込み、推進していくかについて、有識者や参加企業とともに議論を行い、具体的な方策の検討を行いました。