マテリアリティとは、ステークホルダーの要望や期待の把握、事業活動による社会的な影響の分析・検証といった過程を経て特定されるものであり、このプロセスは、持続可能な社会に向けて三井化学グループが取り組むべき課題の認識において非常に重要であると考えています。当社グループは、常に経営環境の変化を捉えて、取り組みをアップデートするために、次のマテリアリティ特定のプロセスを定期的かつ継続的に実施することにより、重要性の変化を確認し、事業活動に反映しています。
マテリアリティ
マテリアリティの特定プロセス
ステップ1:課題を抽出
- 以下を参考に課題を網羅的に抽出。
- ステークホルダーとの対話※1
- グローバルな社会課題に関する情報収集※2
- サステナビリティ情報開示ガイドラインやESG評価機関の評価項目
- 当社グループの企業グループ理念・行動指針をはじめとする方針類
- VISION 2030策定における議論
- 全社リスクマネジメントプロセスで挙がったリスクと機会
- 各種委員会・会議体における議論
※1 ステークホルダーとの対話の例:
三井化学グループは、様々なステークホルダーとのオープンで建設的な意見交換を通じ、相互理解を促進し、信頼関係を構築するとともに、ステークホルダーの皆様からの当社グループに対する期待とニーズを確認し、経営に活かすことを目指しています。
・Blue Value®・Rose Value®の評価・審査・認定プロセス:有識者からの助言を通じて環境や社会における課題を認識し、当社の事業活動に反映しています。
・人権デュー・ディリジェンス:社外専門家の意見を取り入れながらリスクアセスメントなどを進めています。
・ESG説明会:2022年4月、2023年7月、2024年7月に開催し、ステークホルダーとサステナビリティ経営に関する質疑や意見交換を行いました。
※2 グローバルな社会課題に関する情報収集の例:
三井化学はWorld Economic Forumに加入し、グローバルな新規課題に関連した最新動向の情報収集を行っています。そのプラットフォームでは、参加メンバーとともに国際機関および各国政府などと協力し、社会課題の解決を目指しています。
ステップ2:課題をテーマ別に分類
- サステナビリティ情報開示ガイドラインの開示要請事項やESG評価機関の評価項目などを参考に、抽出した課題をテーマ別に分類。
ステップ3:テーマの優先順位付けと整理・特定
- 各テーマを、ステークホルダーにとっての重要度と三井化学グループにとっての重要度の両軸でマッピング・優先順位づけし、候補テーマを選定。これを、ESG推進委員会、経営会議、取締役会で討議。
- 候補テーマを「持続可能な社会への貢献」「事業継続の前提となる課題」「事業継続に不可欠な能力」に整理し、マテリアリティとして特定。
ステップ4:妥当性の確認
- 特定したマテリアリティについて、ESG推進委員会、経営会議、取締役会にて妥当性を確認、最終的に取締役会の承認を取得。
- マテリアリティおよびそれに紐づくKPIは、課題の重要度の変化や新規課題の出現などを考慮するため、ESG推進委員会や全社戦略会議にてレビューし、見直しの必要性を毎年議論。
2023年度は、新たな体制・プロセスを通じた全社リスクマネジメントを開始したことも踏まえ、マテリアリティとしていた「リスク・コンプライアンスマネジメント」を「コンプライアンス」に見直しました。リスクマネジメントは経営そのものであり、マテリアリティとして個別にKPIを設定、管理することにそぐわないこと、重要なのは「マネジメント」というよりも「コンプライアンス」との整理からの修正です。 - 見直したマテリアリティおよびKPIについて、経営会議、取締役会の承認を取得。
特定したマテリアリティ
三井化学グループは、社会価値と企業価値、両方の創出に直結するテーマを「持続可能な社会への貢献」と位置付け、それを「事業継続の前提となる課題」および「事業継続に不可欠な能力」が支える構成でマテリアリティを整理しています。
選定プロセスにおいて次のように各マテリアリティを特定し、それぞれの課題と挑戦を定義しました。
ライフサイクル全体を意識した製品設計
課題認識
社会課題はそれぞれが複雑な関係性を有しており、俯瞰的に捉えて取り組む必要があります。そのため、原料調達から加工・使用、そして廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体を通じて、環境・社会に配慮した経済活動が求められています。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、産官学との連携・協力を図りながら、ライフサイクル全体の環境・社会への影響を認識・配慮した事業デザインを行うことで、新たなビジネスチャンスを獲得し、社会課題解決に貢献することを目指します。
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気候変動
課題認識
パリ協定で掲げられた世界共通の長期目標の達成には、社会全体でのカーボンニュートラルの実現が不可避であり、脱炭素社会に向けた取り組み(緩和)の加速が求められています。また、気候変動により引き起こされる自然災害の激甚化等の環境変化への適応も望まれています。
三井化学グループにとっての●機会と▲リスク (例)
●▲ EVシフト、再生可能エネルギーの主流化 | ▲ GHG排出規制、炭素税などの規制強化 |
●▲ 再生可能原材料への転換 | ▲ 高環境負荷製品の需要減退 |
● 低炭素、脱炭素製品・技術の需要増加 | ▲ 水資源の不足、枯渇 |
● 防災・減災、感染症対応製品の需要増加 | ▲ 風水害による生産拠点の被害 |
▲ サプライチェーンの途絶 |
三井化学グループの挑戦
当社グループは、自社におけるGHG排出量の削減を進めるともに、製品・サービスを通じたバリューチェーン全体での脱炭素化に取り組み、2050年のカーボンニュートラルを目指します。また、気候変動により増加が予測されている風水害および干ばつに対応すべく、水リスク評価を行い、適切な水資源の利用、および適正な水環境の保全に努めます。
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サーキュラーエコノミー
課題認識
世界の人口増加やグローバルな経済活動の活発化に伴う、資源の大量消費と廃棄を前提とした従来型のリニアな経済活動は、地球環境に大きな負荷をかけています。また、廃棄物の不適切な処理によるごみ問題は、自然資本の損失を招いています。環境と社会の持続可能性を高める「サーキュラーエコノミー」への転換・対応強化に向けて、社会全体で協調・協働した取り組みが求められています。
三井化学グループにとっての●機会と▲リスク (例)
● エコシステム視点のソリューションビジネスの拡大 | ▲ 使い捨てプラスチック利用規制強化とプラスチック需要減退 |
● 省資源・資源再生技術の需要増加 | ▲ 自然資本に関する規制・国際規範の強化 |
● プロダクトライフサイクル全体のトレーサビリティの重要性増加 | ▲ 拡大生産者責任などの訴訟の増加 |
▲ 消費者意識変化にともなう企業レピュテーション毀損 |
三井化学グループの挑戦
当社グループは、バイオマス由来の化学品やバイオマスプラスチックの社会浸透・製品群の拡充、およびプラスチック資源循環を加速すべく、新素材・リサイクルシステム・バリューチェーンの開発を通じて、循環経済の輪を大きく太くすることを目指します。
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健康とくらし
課題認識
健康に恵まれることは基本的人権のひとつであり、社会活動の源泉でもあります。それぞれの人が充実した生活を送れる社会の実現に向けた取り組みが求められています。
三井化学グループにとっての●機会と▲リスク (例)
● あらゆる人の健康と豊かなくらしの需要の高まりによるモビリティ・医療機器類・医薬包材・ICT分野・住宅建材製品の需要増加 | ● 感染症予防・拡大防止、保健衛生の向上などの製品需要増加 |
● 年齢、性別、人種、障害の有無などを問わない、あらゆる人々の社会参画支援サービス/製品の需要増加 | ▲ VUCA時代の不確実性 |
● 病気・健康対策に加え、未病への対応とくらしの快適性・安全性ニーズの拡大 | ▲ ヘルスケア、医療分野における訴訟の増加 |
三井化学グループの挑戦
当社グループは、ビジョンケア、デンタルケア、医療用品、衛生製品、ユニバーサルデザイン対応製品など、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ※に資する製品・サービスの提供を通じ、ウェルビーイングの実現を支援していくことを目指します。
※ ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:
すべての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること。
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住みよいまち
課題認識
安心・安全に住み続けるために、自然環境の変化や人口構成の変動にも対応できる、耐久力や適応力のあるまちづくりが求められています。
三井化学グループにとっての●機会と▲リスク (例)
● 人口規模に応じたスマートでレジリエントなまちづくり需要増加(都市のICT化・インフラ整備) | ▲ 高度ICT社会に向けた人材の確保・育成 |
● 防災・減災対応製品などの需要増加 |
三井化学グループの挑戦
当社グループは、防災・減災、インフラの長寿命化およびネットワーク強化に資する製品・サービスの拡大を通じ、あらゆる変化に柔軟に対応できるレジリエントなコミュニティの構築に貢献していくことを目指します。
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食の安心
課題認識
気候変動や紛争などによる、不作やサプライチェーン機能の停止等が引き起こす食料不足が社会問題となっています。一方で、特に先進国において、サプライチェーンや家庭で発生するフードロス・食品廃棄物への対応も求められています。
三井化学グループにとっての●機会と▲リスク (例)
●▲食品保存・流通技術の向上(コールドチェーンなど)への対応 | ● フードロス・食品廃棄物の削減に資する包装容器需要の増加 |
● 食料の安定生産と供給および従事者の負担軽減に資する製品・サービスの需要増加 | ▲ 農薬・食品包材に対する規制強化 |
● 食品・飲料メーカーとの協業による新技術・市場の拡大 |
三井化学グループの挑戦
当社グループは、農薬・農業技術の革新や、食品包装材製品の改良に取り組んでいます。食料の生産性向上や、食品流通における安全・安定性の確保を通じて、フードロス・食品廃棄物の削減に貢献し、フードセキュリティ※の確保を目指します。
※ フードセキュリティ:
すべての人がいかなるときも、十分で安全かつ栄養価の高い食料に物理的にも経済的にもアクセスできる状況
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安全
課題認識
化学産業は社会の基盤を支える重要な役割を担っており、企業活動において安全が損なわれた結果として引き起こる、人的・社会的・経済的損失は計り知れません。安全確保の取り組みは、社会的な責任として行うべきものと認識しています。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、「安全はすべてに優先する」という経営方針のもと、事業環境の変化に伴い、人・設備・技術が多様化しても、高レベルの安全を維持することで、働く人と社会の安心と信頼の礎を築きます。
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コンプライアンス
課題認識
当社グループを取り巻くすべてのステークホルダーの皆様から信頼を得ながら企業活動を継続し、社会的責任を全うするためには、グループ一丸となったコンプライアンス推進体制のもと、すべての役員、従業員が自主的および自律的に法令・ルール遵守の姿勢をもって誠実な行動を積み重ねることが、必要不可欠であると認識しています。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、コンプライアンス意識の向上、コンプライアンス違反の予防・検知や再発防止を含めた適切な対応を行うための体制をグループ・グローバルで構築し、展開します。
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品質
課題認識
高品質の製品・サービスの製造および提供を通じて、お客様から信頼と満足を獲得し続けることが、当社グループのあるべき姿と認識しています。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、サプライチェーン全体でレスポンシブル・ケア活動を推進し、品質管理と品質保証の両輪で、顧客満足の向上を目指し、社会および化学産業の持続可能な発展に貢献していきます。
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デジタルトランスフォーメーション
課題認識
変化の激しい時代のなかで、社会課題解決に向け、革新的な製品やサービス、ビジネスモデルをアジャイルに創出し、企業・業界・社会の変革をリードしていくこと(=コーポレートトランスフォーメーション:CX)が求められます。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、全メンバーのデジタルリテラシーの向上を通じた業務変革の推進・開発力の強化・事業モデルの変革により、CXの実現を目指します。
イノベーション
課題認識
当社グループの持続的な成長・拡大には、イノベーションが不可欠です。イノベーションを起こすには、リスキルも含めた幅広い専門性、グローバル視点、挑戦志向の醸成に加えて、多様な発想を持つ人との、自由闊達なコミュニケーションが重要です。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、グローバルでの産官学連携等を通じて、R&D人材の育成を強化します。
併せて、スタートアップ等、他社との積極的な連携により双方のナレッジのアップデートを図り、新たな市場創造・技術創出を追求します。
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パートナーシップ
課題認識
社会課題はそれぞれが複雑な関係性を有していることから、企業単独で解決を目指すことは困難です。企業を取り巻く多岐に渡るステークホルダー、特に、サプライチェーン全体で協力関係を築くことが重要です。
三井化学グループの挑戦
当社グループは、サプライチェーンに関わる社内外のパートナーと連携し、環境・社会に配慮した経済活動と安定的な調達活動の実現を目指します。