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三井化学と帝人がプラスチックのバイオマス化を実現する製品の市場展開に向けた取り組みを開始

2022.08.09

三井化学株式会社
帝人株式会社

三井化学株式会社(本社:東京都港区、社長:橋本 修)と帝人株式会社(本社:大阪市北区、社長:内川 哲茂)は、このたび、日本初となるバイオマスビスフェノールA(以下、バイオマスBPA)とバイオマスポリカーボネート樹脂(以下、バイオマスPC樹脂)の市場展開に向けた取り組みを開始します。この取り組みは、三井化学がISCC PLUS認証(国際持続可能性カーボン認証)に基づいたマスバランス方式(*1)を用いてバイオマスBPAの市場供給を開始することに伴い、帝人が同BPAを用いて同方式によるバイオマスPC樹脂の開発・生産を開始するものです。

*1ISCC PLUS認証に基づいたマスバランス方式:原料から製品への加工・流通工程において、ある特性を持った原料(例:バイオマス由来原料)とそうでない原料(例:石油由来原料)を混合させる場合に、特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対し、その特性の割り当てを行う手法。

1. 背景

  1. 近年、カーボンニュートラルの実現に向けて、サプライチェーン全体を通した温室効果ガス(以下、GHG)の排出量削減への市場要求が高まっており、環境負荷低減に貢献する製品の開発・生産が求められています。
  2. 自動車のヘッドランプや電気・電子部品など、さまざまな用途で使用されるPC樹脂は、市場から回収してリサイクルした製品が市場に広まりつつある中、環境負荷の低い新しい製品にも期待が寄せられています。
  3. こうした中、三井化学は、2021年12月から石油化学工場における根幹の設備であるナフサクラッカー(ナフサ分解装置)に、石油由来ナフサに代わり、廃植物油および残渣油などを由来とするバイオマスナフサの投入を進めており、ISCC PLUS認証に基づいたマスバランス方式によるバイオマス誘導品(*2)の生産を開始しています。

    *2バイオマス誘導品:バイオマス原料から、化学反応によって生成される各種製品

  4. 一方、帝人は、石油由来の原料を用いた従来のPC樹脂や、環境負荷低減に繋がる製品としてリサイクルPC樹脂を展開しており、それらに加えて新しい環境配慮型PC樹脂の導入を目指していました。

2. バイオマスBPAおよびバイオマスPC樹脂の市場展開に向けた取り組みについて

  1. 三井化学は、2022年5月にPC樹脂の原料であるBPAに対するISCC PLUS認証を取得しました。同認証に基づいたマスバランス方式を用いて、国内企業として初めてバイオマスBPAを生産し、市場への供給を開始します。
  2. また、帝人は、三井化学からバイオマスBPAを調達のうえ、国内企業として初めてISCC PLUS認証に基づいたマスバランス方式を用いてバイオマスPC樹脂を生産するために、同認証の取得に向けた取り組みを行っています。
  3. バイオマスBPAおよびバイオマスPC樹脂は、従来の石油由来のBPAおよびPC樹脂といずれも物性が同等であり、従来品から容易に切り替えることができるため、製品ライフサイクル全体におけるGHG排出量の削減に寄与し、カーボンニュートラルの実現に貢献します。

3. 今後の展開

  1. 両社は、このたびの取り組みを通して、プラスチックのバイオマス化に資する製品の拡販を目指し、サプライチェーン全体における環境に配慮した製品の開発・生産を進めていきます。
  2. 三井化学は、バイオマスナフサの調達網の拡大を検討しており、市場に対して安定的な製品供給を行うことを目指していきます。三井化学グループでは、バイオマスナフサ誘導品のISCC PLUS認証取得を進めていますが、フェノール事業においては、フェノール、アセトン、BPAおよびα-メチルスチレンの4製品で同認証を取得しており、今後は外販する全フェノール・チェーン製品の認証登録とそれらの販売を、2024年3月末までに開始することを目標に進めていきます。
  3. 帝人は、2023年前半にはISCC PLUS認証を取得し、バイオマスPC樹脂の生産開始を目指していきます。石油由来の原料を用いた従来のPC樹脂からの切り替えが容易であり、環境配慮型製品の選択肢が増えることを顧客企業へ訴求し、バイオマスPC樹脂のマーケティング活動を進めていきます。
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BPAプラント(三井化学 大阪工場)
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PC樹脂(帝人)

以上

参考

三井化学の環境負荷低減に向けた目標

三井化学は、2020年11月に2050年カーボンニュートラル宣言を行い、三井化学グループのGHG排出量削減[Scope1とScope2 (*3)]と、製品のライフサイクル全体を通じたGHG削減貢献量の最大化をカーボンニュートラル戦略の両輪として進めています。

*3Scope1とScope2:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)と他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

帝人の環境負荷低減に向けた目標

帝人は、自社によるCO2排出量(Scope1とScope2)を2050年度までに実質ゼロ、2030年度までに2018年度対比「30%削減」することを目指しています。また、サプライチェーン全体でのCO2排出量については、2030年度までに「総排出量<削減貢献量」とすること、さらに、自社の活動に関連する他社からの排出量(Scope3)全体の2/3以上を占める排出源からの排出量(*4)を、2030年度までに2018年度対比「15%削減」することを目指しています。

*4Scope3全体の2/3以上を占める排出源からの排出量:Scope3のうち、自社が調達した製品・サービスに関するCO2排出量(Category1)から、商社ビジネスに関連する排出量を除いたもの。