「フィジカルインターネット実現会議・化学品ワーキンググループ」による共同物流の実証実験による効果を確認
~DXを用いた共同物流プラットフォームを構築~
2024.12.23
三井化学株式会社
経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」内に設置されている「化学品ワーキンググループ」(座長:流通経済大学矢野裕児教授)は、2024年9月から12月の期間で四日市~市原、中京~北陸、市原~東北の各ルートにおける共同物流の実証実験を実施し、トラック積載率改善、CO2排出量削減等の効果を確認することができましたので、本日12月23日に発表しました。
「化学品ワーキンググループ」には、現在、荷主事業者、物流事業者を中心とする78団体、日本化学工業協会、石油化学工業協会、経済産業省・国土交通省の関連各部署等が参加しており、三井化学は、三菱ケミカルグループ、東ソー株式会社および東レ株式会社とともに事務局を務めています。
詳細につきましては、添付資料をご参照ください。
フィジカルインターネット実現会議
化学品ワーキンググループ
化学業界における物流の課題解決に向け、共同物流の実証実験による効果を確認 DXを用いた共同物流プラットフォームを構築へ
経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」※1内の「化学品ワーキンググループ」※2では、「物流の2024 年問題」を象徴する物流の輸送・保管能力不足等、個社では解決が困難な物流課題に対し、化学品ワーキンググループ参加企業と共に化学業界全体で取り組んでおります。
今回、化学品ワーキンググループ参加企業の内、三菱ケミカルグループ、三井化学、東ソー、東レ、プライムポリマーは本年9月から12月まで、政府がフィジカルインターネット実現会議で推進している、物流データプラットフォーム(PF)や物流情報標準ガイドラインを活用した実証実験を、国土交通省及び経済産業省の補助金※3を活用して実施いたしました。四日市~市原のコンビナート間を結ぶ実貨・実車を伴う実地検証に加えて、中京~北陸間における共同物流のシミュレーション、市原~東北間における輸送効率の分析を行い、共同輸送の効果と共同物流プラットフォームの有用性を検証いたしました。特に、実地検証においては、トラック積載率(20pt改善)、CO2排出量(28%削減)に顕著な効果が確認できました。
■ 実証実験の狙い
- 化学品業界で前例のない、複数荷主・複数物流事業者間における共同輸送が可能であることの実証
- 定期幹線便を中心とした共同集配を含む共同輸送モデルの実効性の確認・評価
- 複数の荷主と物流事業者間の各種データ交換をマルチに行うための“共同物流プラットフォーム“および物流情報標準ガイドライン※4に準拠し た化学 品業界としての“物流情報標準フォーマット”の有用性の確認
- 複数荷主の輸送実績データを基にしたシミュレーションによる共同物流の可能性と効果の検証
■ 実証実験の効果(定量)
実地検証(四日市~市原) | トラック積載率 | 69%→89%(20pt改善) |
CO2排出量 | 28%削減 | |
机上検証(中京~北陸) | トラック積載率 | 67%→80%(13pt改善) |
CO2排出量 | 16%削減 | |
机上検証(市原~東北) | 総走行距離 | 29%削減(現行物流スキーム時) |
ドライバー労働時間 | 17%削減( 〃 ) | |
CO2排出量 | 17%削減( 〃 ) |
■ 今後の予定
今回の実証実験では共同物流の実現可能性と物流効率化を確認することができましたので、今後は対象範囲を順次拡大し、デジタルによるスケールメリットを増大させてまいります。また、共同物流を実施するためには、複数荷主・複数物流事業者間での物流業務の標準化や、商慣行の見直しが重要であることが分かりました。今回得られた知見を基に、化学品ワーキンググループにて公表した自主行動計画に則り、アクションプランの実行を進めていきます。
将来的には、日本全国に展開可能な輸送モデルの構築をめざすことで、物流におけるGHG削減や持続可能な物流の実現を通じて、日本の化学産業のサステナビリティに貢献していきます。
※1フィジカルインターネット実現会議
日本におけるフィジカルインターネットの実現に向けたロードマップを策定することを目的に、2021年10月に経済産業省と国土交通省によって設置された組織。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/physical_internet/index.html
※2化学品ワーキンググループ
フィジカルインターネット実現会議の4つ目の業界ワーキンググループとして2023年6月に設置された。荷主事業者、物流事業者を中心とする参加78団体(77企業・1大学、2024年12月時点)。
・座長:流通経済大学矢野裕児教授(流通情報学部長、日本物流学会会長)
・事務局:三菱ケミカルグループ、三井化学、東ソー、東レ
・オブザーバー:経済産業省、国土交通省、厚生労働省の関係各部署、日本化学工業協会、石油化学工
業協会、(実証実験にはデロイトトーマツコンサルティング、富士通が参画)
・2023年12月20日発表:化学品に関する物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/jk_pdf/28.pdf)
※3補助金名称
1)経済産業省資源エネルギー庁:令和6年度運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金(トラック輸送省エネ化推進事業)
2)国土交通省:物流標準化促進事業費補助金(物流データの標準化促進に向けたオープンプラットフォーム構築支援事業)
※4物流情報標準ガイドライン
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第二期スマート物流サービス」で、2021年10月に業界関係者との意見交換などを経て策定・公表された。経済産業省および国土交通省がとりまとめた「フィジカルインターネット・ロードマップ」(2022年3月策定)の中にも「物流情報標準ガイドライン」(https://www.lisc.or.jp/)の活用が位置付けられている。本ガイドラインが活用されることで、データが異なることによる個社ごとの煩雑な調整やランニングコストの削減、システム関連コストの低減などのほか、データの統一化が推進されることによる共同輸送や共同保管といったサービスの展開が容易になり、物流の効率化が進むことが期待される。
<別紙1>
■実地検証の結果
実地検証の結果、トラック積載率では89%と現行と比較すると20pt改善し、CO2排出量においては28%の削減との結果になりました。このように、実証実験を通してトラック積載率改善、CO2排出量削減、トラック台数削減、ドライバー労働時間削減等の結果が得られました。
また、共同輸送における実走においては誤配・遅配等のインシデントもなく、納品先に各荷主企業の商品を届けることができており、共同輸送は実現可能であり、共同物流プラットフォームの有用性があることが分かりました。
■机上検証の結果
中京~北陸レーンにおいては、流通経済大学に協力頂き、過去の輸送データを用いた輸送効率シミュレーションや輸送効率分析などの机上検証を行いました。複数荷主の輸送実績データを基に共同輸送を行った場合のシミュレーションを行った結果、積載率で13pt改善、トラック台数では16%の削減の可能性があることが判明しました。
加えて、市原~東北レーンでは、既に混載輸送を実施している物流事業会社の1年分の輸送データを解析し、仮に混載輸送が行われていなければ、どの程度の効率が得られなかったについて試算しました。結果として、混載輸送実施していることによって、総走行距離では最大34%の削減、ドライバー労働時間では最大22%の削減、CO2排出量では最大24%の削減に繋がっていることが分かりました。
実装に向けて推進すべき方向性が見えたことから、今後は、机上検証で得た結果をもとに、共同物流の取組みをより一層加速していきます。
■ご参考
2024年6月11日付「フィジカルインターネット実現会議・化学品ワーキンググループ」による関東・東海地区での共同物流の実証実験開始について
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2024/2024_0611/index.htm
2023年6月13日付「フィジカルインターネット実現会議」における「化学品WG」の設置について
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/release/2023/2023_0613/index.htm
以上