評価・報酬
適切な評価に沿った処遇は、社員のモチベーションを高め、優秀な人材の獲得・育成・リテンションおよび三井化学グループの発展に大きく関連する重要な制度であると考えています。
目標設定と業績評価の基本的な考え方
三井化学ではすべての階層の従業員において、年に1回、上司が目標設定面談を行うことを制度化しています。職務目標設定は、経営ビジョンに基づく、経営計画を各職場に展開し職場方針に落とし込み、さらに重点課題を、各人の担当職務の目標に反映させることで、各人の目標達成が全社の目標達成につながることを認識できる仕組みとしています。
また、職務目標とは別に、行動評価(グローバル・コアコンピテンシー評価)を導入し、行動指針およびコア・バリューに定める行動をとっているかについて、具体的事実に基づき本人が自らの行動を振り返ることにより、行動指針およびコア・バリューの浸透・定着を目指しています。
目標設定面談では、単年度の業績目標だけでなく、短期的(3年以内)・長期的に経験したい業務や習得したいスキルについて確認する「能力・キャリア開発面談」をあわせて行っています。これにより、社員が主体的に自身のキャリアを考えることができます。また、上司は部下のキャリア観や強み・弱み、今後の目標を理解し、適切な支援が可能となります。
目標設定から業績評価までの流れをタレントマネジメントシステム(Success Factors)で管理し、人材マネジメントの精度と効率の向上を図っています。システム上で上司・部下が目標やその達成状況を常時アップデートできるため、効果的な目標管理が可能となるほか、過去の情報が参照できることで各人について一貫した能力開発が行えます。
VISION 2030に連動した人事制度改定
VISION 2030のスタートに際し、2022年4月に管理社員の人事制度を一部改定しました。これは、VISION 2030で掲げる2030年のありたい姿を実現するために、エンゲージメント調査の結果やこれまでの各種人事的課題などを深堀りし、必要な人事施策を検討する中で抽出された複数のアイテムのうちのひとつです。
新たな成長領域へのチャレンジ、事業ポートフォリオ転換などを進める中で、働く人のエンゲージメント向上や、これまで以上にチャレンジングな取り組みは不可欠であり、評価の納得性を高めることや成長を促すこと、積極的なチャレンジをさらに促す仕組みとして個人業績管理の仕組みを改定しました。
具体的には、チャレンジングな目標を経営陣が率先して設定し、管下の社員にも同様の設定を促すことに加えて、管理社員についてはこれまで評価区分ごとに一律だった賞与の配分方法を、同じ評価区分の中でもそれぞれのパフォーマンスに応じてきめ細かく配分調整できる仕組みにすることで、個々の貢献に、より直接的に報いる内容としています。賞与の算定方法については、個人業績に加えて連結コア営業利益額に連動して支給額を決める賞与制度となっていますが、VISION 2030の業績目標を目指すうえでのさらなる動機づけとなるよう、高い営業利益の際にはさらに支給額が増える制度に見直しをしています。
また、行動評価のベースとしてきたグローバルコンピテンシーの見直しも行いました。社内変革に必要なものとして議論されてきた「チャレンジ促進」、「実行力強化」、「コミットメント強化」、「社内外連携の促進」の各要素を反映し、新たに「リーダーシップコンピテンシー」として改定することで、VISION 2030の実現に向けた行動を促進していきます。
加えて、従来から行動評価軸のひとつにあげていた「多様性( Diversity)の理解」に、公平(Equity)、包摂(Inclusion)の視点も反映した内容に改定しました。イノベーションを創出しVISION 2030の実現を目指す中で、「多様性」は重要な要素であると捉え、単に理解するだけでなく、公平に発言や行動の機会を提供し、多様性を認め、活かすことで新たな発想や成果に結びつけるという観点も取り入れています。
評価のフィードバック
三井化学では、年に1度、すべての階層の従業員において上司が評価結果のフィードバック面談を行うことを制度化しています。面談では結果を伝えるだけではなく、育成の観点からも、各人の長所や改善点等をしっかりと共有しています。
なお、三井化学労働組合は、組合員のフィードバック面談実施率やフィードバックに対する納得度を調査しています。調査結果は労使で共有し、評価制度の適正運営に努めています。
評価結果のフィードバック面談実施率と納得度(三井化学籍の組合員)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|
評価のフィードバック実施率 | 97% | 94% | 93% | 95% |
評価のフィードバックに対する納得度 | 86% | 91% | 90% | 90% |
法定賃金の遵守、魅力的かつ競争力のある報酬水準の設定
三井化学グループは事業のグローバル化が進展する中、従業員の報酬について、まず当然の事として各国・地域の法律を遵守しており、法定の最低賃金支給、所定労働時間または法定労働時間を超えた労働に対する代休付与または割増賃金支給などを行っています。
また、各国・地域の労働市場において、魅力的かつ競争力のある報酬水準・体系になるよう整備しています。報酬水準は、人材獲得競争にて競合するマーケットにおける当社業績のポジショニングに応じた設定とすることを基本的な考え方としており、行政機関等による各種賃金統計や外部調査機関の報酬データベース等を活用し、定期的に見直しています。
2022年度は上記考え方を前提に、三井化学の一般社員の報酬水準を見直し、4月および7月にベースアップを行いました。
その他、給与・賞与および評価・昇給などの体系は社則やハンドブックなどで従業員に公開しており、年令・年功要素を極力排除、仕事と業績成果を反映し、公平公正な制度運用を行っています。
グループ・グローバル評価ガイドライン
三井化学グループとしての評価の仕組みや考え方、設計等を整理した「グループ・グローバル評価ガイドライン」を2016年5月に策定し、全グループ会社に配布しました。本ガイドラインはMBO(目標管理)とグローバルコアコンピテンシーの二軸で構成されており、これに基づいて地域統括会社(米州、欧州、アジア太平洋、中国の四地域をそれぞれ統括)の人事部門が、域内企業の評価制度構築・変更・運用を支援しています。
とりわけグローバルコアコンピテンシーは、当社グループの人材開発における共通指標として採用しており、各層ライン長のリーダーシップ開発研修にともない実施する「360度フィードバック評価」も本コンピテンシーに基づいています。
今後、グループ横断的に優秀人材を発掘、活用していくにあたり、その評価、育成のレベルアップは喫緊の課題となっています。グループ内で共通化した評価指標が広範かつ公正に適用されるよう、グループ各社との連携を深めていきます。
ポジションマネジメント
三井化学グループは、当社グループ全体での適切な人材配置の基盤構築を目的として、2020年度より“ポジションマネジメント”に関するグローバル・ポリシーを展開しています。
当社は、2004年以降、管理社員を対象に、職務記述書を策定し、各ポジションの職務の大きさに応じ処遇する、職務評価制度を導入しています。現在、当社グループには約18,000のポジションが存在し、そのうち海外ベースのポジション割合は約40%となっています。グローバルに拡大していく当社グループにおいて、長期経営計画と整合した組織および職務を、適切にグループ全体で設計していくため、“ポジションマネジメント”に関するグローバル・ポリシーによって、グループ内におけるポジションの新設や廃止に関して、基本的な理念や仕組み、決裁権限およびプロセスを明確にしました。当該ポリシーの展開にともない、新たにグローバルグレードも導入し、標準化された職務評価基準に基づき、グループ内ポジションの可視化を進めています。これによりグループ全体での適所適材を加速させ、また国を超えた異動の枠組みを構築することで、社員のグループ内における自律的なキャリアディベロップメント形成機会の創出拡大を促進し、社員一人ひとりのエンゲージメント向上につなげていきます。
活動例 グローバルポジションマネジメントの実践
私は2006年にドイツのMitsui Chemicals Europeに入社して以来、様々な国々とその文化に接してきました。当初は欧州、中東、アフリカを担当し、その後は主にアジアやアメリカでのビジネスの機会を多くいただき、その中で異なる文化的背景を持つ人々と交流することは、常にやりがいがあり、刺激になるものと実感してきました。「Travel broadens the mind」という言葉がありますが、私は大いにそれに共感しており、これらの機会から得た経験や出会いをどれだけ大切に思っているかは強調してもしきれません。
2022年2月、私はコンパウンド事業で新たな挑戦をするため、アメリカのオフィスに異動しました。欧州とアメリカ、両方の経営陣や人事担当者がサポートしてくれたおかげで、スムーズに現地のビジネスに対応することができました。また、米国では経験豊富で意欲的なチームに支えられており、当社を真のグローバル企業にするための取り組みの一翼を担えることを嬉しく思っています。
三井化学が社員にこのような機会を提供し、赴任全過程を手厚くサポートしていることは素晴らしいことです。今後もこれまで培ってきたグローバルな経験を活かして、地域横断的な活動やプロジェクトを推進したいと考えています。

Compounds Business Division General Manager
Johannes Roemer
*役職等は掲載当時
関係会社役員任免・報酬ポリシー
2021年度には、新たに三井化学グループ会社の役員人事ガバナンスに関するグローバル・ポリシーを展開しました。これは、120を超える、国内外連結対象関係会社における①役員の任免、②報酬水準・構成の考え方、③報酬の決定プロセスを明確化したものです。当社グループにおいて、事業ポートフォリオの変革や海外展開が加速する中で、各事業・地域の経営を担いうるポテンシャルの高い経営・専門人材を獲得し、育成、リテンションすることは、経営上、最重要な課題のひとつとなっており、グループ共通のポリシーを用いることで、任免プロセスを透明化し、グループ全体の業績と連動する、適切な報酬決定の実現を狙ったものです。今後はこのポリシーに基づいて、グループ全体で一体的な役員報酬マネジメントを実行していきます。
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