業界初のプロセスと接着剤開発で、フィルム包装製造におけるCO₂排出量を約61%削減しました

~電子線(EB)硬化型接着剤により省エネ化を実現~

2026.05.27

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
三井化学株式会社
東レ株式会社

NEDOの補助事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/省エネ軟包材ラミネートシステムの開発」(以下「本事業」)において、三井化学株式会社と東レ株式会社は共同で、無溶剤ラミネーションと電子線(EB)照射をインラインで行うプロセス並びに、そのラミネーション工程用接着剤を業界で初めて開発しました。

今回、三井化学が保有するウレタン接着剤技術と東レが保有するEB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術を融合することで、EB硬化型接着剤の接着性能を大幅に向上させることに成功しました。またインラインにてラミネーションとEB照射を行うプロセスの開発により、フィルム包装製造におけるラミネーション工程の年間消費電力を309万kWh、二酸化炭素(CO₂)排出量にして1290t、約61%の削減を達成しました。

今後は、印刷からラミネーションまでを含むフィルム包装製造工程全体の省エネルギー化とCO₂排出量削減を図り、環境対応と生産性向上の両立を実現します。

開発した新技術と従来法の比較イメージ 図1 開発した新技術と従来法の比較イメージ

1.背景

フィルム包装材は、製品の保護やバリアー性、耐熱性、耐薬品性を高めるため、ラミネーションによる多層化が施されています。軽量性や透明性、加工のしやすさを生かして、食品包装やシャンプー・洗剤などの詰め替えパウチなどに広く利用されています。また、ビンや缶、プラスチック容器からフィルム包装材への移行は、省資源化やフードロス削減に貢献しています。フィルム包装材の世界市場は2022年時点で約38兆円、年間成長率は3.6%※1と拡大を続けています。

国内のフィルム包装材製造におけるCO₂排出量の内訳(図2)は、フィルム工程52%、インク・印刷工程32%、ラミネーション工程16%です。フィルムや印刷工程では、バイオ原料の活用やモノマテリアル化、無溶剤化など、CO₂排出量削減に向けた取り組みが進んでいます。

一方、ラミネーション工程では、従来の接着剤に石油系溶剤が使われ、塗工後の加熱乾燥や燃焼処理で多量の電力を消費しています。さらに、接着剤はラミネーション直後に完全硬化していないため、外観不良を防ぐ目的で加温処理(熱養生処理、5日間程度)が必要です。この工程により製造時間が長くなり、電力消費も増加します。そのため、ラミネーション工程におけるCO₂排出量削減は、早急に対応すべき課題となっていました。

フィルム軟包装製造CO₂総排出量と内訳(三井化学、東レ共同調査、2020年) 図2 フィルム軟包装製造CO₂総排出量と内訳(三井化学、東レ共同調査、2020年)

このような背景の下、NEDOは2023年度から本事業※2の一環として、三井化学、東レと共同で「省エネ軟包材ラミネートシステムの開発」に取り組んできました。

2.今回の成果

このような背景を受けて、三井化学と東レは、本事業において、フィルム包装ラミネーション工程の溶剤系接着剤に代わり、無溶剤系EB硬化型接着剤を採用し、インラインにてラミネーションとEB照射を行う新技術を共同開発しました。

現在ラミネーション工程は、溶剤系2液熱硬化接着剤を使用するため、塗布後の溶剤乾燥、貼り合わせ後に加温処理が必要であり、ラミネーター1台あたり年間約2127tのCO₂を排出※3しています。無溶剤系接着剤を用いることで溶剤乾燥を省く方法もありますが、加温処理時間の延長や加工速度、接着性能の低下などの課題があります。

今回の共同開発では、三井化学のウレタン接着剤技術と東レのEB硬化型印刷技術を融合し、EB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術をウレタン接着剤に応用することで、接着性能を大幅に向上させました。また、ラミネーションとEB照射をインラインで行うプロセスにしたことで、溶剤乾燥が不要となり、加温処理時間の短縮と低温化が可能となりました。この結果、ラミネーション工程の年間消費電力を309万kWh、CO₂排出量を1290t※3、約61%削減しました。今回共同開発した新技術は、従来技術で課題となっていた硬化性や加工性を解決し、溶剤を含まないことからVOC(揮発性有機溶剤)フリー化にも貢献する業界初の次世代ラミネーションプロセス※4です。

表 従来技術と新規開発技術のラミネーション工程性能差(三井化学、東レ共同調査に基づく)

従来技術と新規開発技術のラミネーション工程性能差(三井化学、東レ共同調査に基づく)

3.今後の予定

今回の成果は、包装仕様を大きく変更することなく、ラミネーション工程におけるCO₂排出量を大幅に削減できることから、サプライチェーン排出量算定におけるScope3排出量※5削減を進める上で有効な選択肢になります。三井化学と東レは、食品や日用品向けフィルム包装への標準化に向けて、流通やブランドオーナーに対してEB硬化型フレキソ・オフセット印刷技術と本技術を合わせた提案を進め、フィルム包装業界の環境負荷低減と生産性向上の両立に向け、2027年の社会実装を目指します。

(想定効果)2040年までに入れ替え対象となる機器の8割に、今回開発したEB照射装置付きラミネーターを導入した場合

効果:年間電力使用削減量:4.3億kWh
 年間CO₂削減量:18万t
 年間原油換算削減量:9.65万kL

本件に関するお問い合せ先

NEDO フロンティア部 脱炭素省エネユニット
三井化学株式会社 コーポレートコミュニケーション部
東レ 事業コミュニケーション室 担当:金(キム)

その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先

NEDO 経営企画部 広報企画・報道課
TEL 044-520-5151