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サーキュラーエコノミーに向けて

バイオマス戦略・リサイクル戦略TCFD
バイオマス戦略・リサイクル戦略TCFD

三井化学グループは、当社グループの主要製品であるプラスチックについてサプライチェーン全体を視野に入れた次の2つの戦略に注力しています。この戦略と海洋プラスチックごみ問題への対応を通して資源循環を促進し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。

バイオマス戦略・リサイクル戦略

バイオマス戦略:バイオマスプラスチック製品群の拡充

二酸化炭素を吸収し成長した植物を主な原料とするバイオマスプラスチックは、従来の化石原料由来プラスチックの代替として大きな注目を集めています。当社グループは、バイオマス原料への転換は新たな化石資源の使用を抑制すると同時に資源循環を促進することから気候変動の緩和策となると考え、バイオマスプラスチック製品群の拡充を図っています。

人々の生活基盤を支える素材メーカーである当社グループは、「素材の素材まで考える」/「世界を素から変えていく」をキーメッセージに、バイオマスでカーボンニュートラルに貢献するブランド「BePLAYER™(ビープレイヤー)」を立ち上げ、社会のGHG排出量削減への貢献を目指しています。
当社グループは、原料となるバイオマスナフサを調達し、大阪工場のエチレンプラント(ナフサクラッカー)へ投入すると同時に、マスバランス方式によってバイオマス原料使用分を特定の製品に割り当てて、フェノールやアセトンといったバイオマス化学品、ならびにバイオマスポリプロピレンの製造と販売を行っています。提供可能なバイオマスナフサ誘導品のラインナップを拡充するため、各製品におけるISCC PLUS認証の取得を進め、2023年5月現在、ナフサから製造される製品、およびその下流製品を含め、約40製品が認定されています。当社のバイオマスビスフェノールAを用いてバイオマスポリカーボネート樹脂の開発・生産を行う帝人(株)をはじめとしたパートナーとの協業や、当社グループが立ち上げたBePLAYER™製品の販売を通じ、バイオマスの社会実装を推進し、バイオマス化学品ならびにバイオマスプラスチックの普及に貢献していきます。

バイオマスナフサによるバイオマス化学品およびバイオマスプラスチックの製造・販売

(株)プライムポリマーが製造販売するマスバランス方式のバイオマスPP(ポリプロピレン)「Prasus®」が日本生活協同組合連合会の食品パッケージに採用され、「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチックを使用したプラスチック製容器包装」として初のエコマークを取得しました。

※エコマーク:
公益財団法人日本環境協会が運営する様々な商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベル。エコマークの認定基準に「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチック」(=マスバランス方式によるバイオマスプラスチック)が2023年2月1日より新たに導入されています。

エコマーク

マスバランス方式

三井化学は、化石原料由来とバイオマス由来のナフサを製造工程で混ぜることにより、バイオマス化学品・プラスチックを製造しています。これら製品は、化石原料とバイオマス原料の混合物になりますが、製造時のバイオマス原料使用分を特定の製品にのみ割り当て、顧客に提供しています。この手法をマスバランス方式といいます。本手法を用いることにより、投入したバイオマス由来の原料の量に応じて、できあがった製品の一部を「100%バイオマス由来」と見なすことができ、顧客の多様なバイオマス製品ニーズに応えることが可能となります。当社は、マスバランス方式の信頼性を担保するため、第三者による認証(ISCC PLUS認証)を取得し、適切に管理・運用しています。当社グループは、この手法がバイオマス製品だけでなく、将来、ケミカルリサイクル製品群の拡充を推進するスキームとしても、重要な役割を果たしていくものと考えています。

マスバランス方式の認証体制

リサイクル戦略:プラスチック資源リサイクルの推進

資源の枯渇や、海洋プラスチックごみ問題などの廃棄物の管理に関する社会課題が深刻化する中、三井化学グループは、廃プラスチックなどの廃棄物を資源と捉え、再び有効活用していく取り組みを進めています。リサイクルによる資源循環の促進は、化石原料・燃料の削減といった資源の有効活用だけでなく、廃プラスチックの再資源化による廃棄物の削減や、バリューチェーン全体を通じたGHG排出量の削減にも貢献できると考えています。廃プラスチックのケミカルリサイクルやマテリアルリサイクル、包装材料のモノマテリアル化に加え、スタートアップ企業の支援など、新素材、リサイクルシステム、バリューチェーンの開発を通じて、循環経済の輪を大きく、太くしていきます。

当社は、廃プラスチックを原料とした熱分解油(以下、廃プラ分解油)を(株)CFPより調達し、2023年度第4四半期に大阪工場のクラッカーに原料として投入することにより、国内初となるマスバランス方式によるケミカルリサイクル由来の誘導品(化学品・プラスチック)の製造・マーケティングを開始します。このケミカルリサイクルの取り組みにより、これまで品質や衛生面からリサイクル品を使用することが困難であった用途においても、リサイクル由来の素材を適用することが可能となり、これまで低かったプラスチックのリサイクル率を大きく向上させる可能性があります。また、廃プラスチックを炭化水素油まで分解し最上流のクラッカーへ投入するため、誘導品(化学品やポリマー)の物性は既存品(バージン品)と全く同等のものとなります。

クラッカー関連のフロー図

クラッカー関連のフロー図

当社は2022年5月に、軟包材コンバーターで発生する廃棄フィルムを回収し、インキを除去してペレット化し、軟包材フィルムに再生する取組みである「RePLAYER®-Renewable Plastics Layer System- 」の取り組みを開始しました。これは、コンバーターでの印刷前後の廃棄フィルムを回収し、インキを除去してペレット化して、もう一度軟包装フィルムに再生する取り組みです。また、ブロックチェーン技術を活用したデジタル基盤である、資源循環プラットフォーム(名称:RePLAYER®ブロックチェーンプラットフォーム)を活用することで、再生材料のトレーサビリティ(追跡可能性)、トランスペアレンシー(透明性)を担保し、顧客へ「安心・安全」を提供できる体制を構築しています。同年12月より、凸版印刷(株)、三井化学東セロ(株)、当社の三社共同で、本実証試験の基礎検討を開始、2023年8月より印刷済OPPフィルムを元の軟包材フィルムに水平リサイクルする共同実証試験を開始しました。三社はこの取り組みを通じて、日本政府のプラスチック資源循環戦略のマイルストーンに沿って、2025年度の社会実装を目指します。

ケミカルリサイクルにより生まれた化学品は新たな素材の製造に使用され、要求の厳しい用途であっても品質を損なうことがないため、マテリアルリサイクルに適さない廃プラスチックをリサイクルするためのソリューションとして期待されています。当社はマイクロ波化学(株)との戦略的提携のもと、マイクロ波を利用したケミカルリサイクル技術の開発に共同で取り組んでいます。

マイクロ波は家庭用電子レンジや通信分野において使われてきた電磁波です。特定の物質を直接、選択的に加熱できるため、従来の化学プロセスを大幅に省エネルギー化できる可能性があります。またマイクロ波は電気から作ることが可能であることから、再生可能エネルギー活用によるCO2削減に貢献しうる環境調和型の技術でもあります。これまでリサイクルが難しかったポリプロピレンを主成分とする混合プラスチックであるASR(自動車シュレッダーダスト)や、バスタブや自動車部品などに使用されるSMC(熱硬化性シートモールディングコンパウンド)、マットレスなどに使用される軟質ポリウレタンフォームのケミカルリサイクルに取り組んでいます。いずれも初期検討で良好な結果を得ており、今後はベンチ設備での検証試験を経て、早期に実証試験を開始する予定です。

マイクロ波を用いたポリウレタンのケミカルリサイクル

三井化学は、サーキュラーエコノミーの推進に取り組む産官学民連携の新事業パートナーシップであるJ-CEPに共同幹事会社として参加しています。J-CEPは、兵庫県神戸市と株式会社アミタが主体となり進める「プラスチック資源に特化した回収ステーション」に連携団体として参画し、2021年11月から約3ヵ月間、神戸市長田区にあるふたば学舎に、コミュニティスペースを有する資源回収ステーションを設置する実証実験を行いました。一般に、家庭から出るプラスチックごみのリサイクルは分別が不十分であることが多いため難易度が高いと言われています。ふたば学舎では回収するプラスチック(容器など)を特定し、住民の皆さんに洗浄して持ち寄って頂く方式を採用することで、その後のリサイクルプロセスを容易にする試みを行いました。
また、あえてPP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)/PET(ポリエチレンテレフタレート)/PS(ポリスチレン)など複数の異なるプラスチックを混ぜ、当社の接着性ポリオレフィン「アドマー®」を添加し、外からは見えないけれど内部にリサイクル材が入っていることを示す「リサイクル・インサイド」という当社商標を付けたリサイクルエコベンチを制作しました。アドマー®は、異なるプラスチックを相溶化するだけでなく、強度や耐衝撃性の低下を抑えるリサイクル助剤としても、プラスチックリサイクルの普及に大きく貢献します。

三井化学がマテリアルリサイクルで制作したベンチをお披露目

素材の素材から世界を刷新。リジェネラティブなライフスタイルを実現するPLAYERsブランド

カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー社会の実現に向けては大きな社会変革が必要です。三井化学グループは人々の生活基盤を支える素材メーカーです。だからこそ当社グループには人々のライフスタイルを根幹から変えていける可能性があります。その強みと存在意義を認識し、グループ横断的に広く社会にソリューションを提供していく責任があります。その責任を果たすためには、積極的な発信を継続し、社会からカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに関する総合的なソリューション企業として認知されることも重要です。そこで当社グループは、「素材の素材まで考える」/「世界を素から変えていく」をキーメッセージに、バイオマスでカーボンニュートラルに貢献する「BePLAYER®」(ビープレイヤー)」と、リサイクルでサーキュラーエコノミーに貢献する「RePLAYER®(リプレイヤー)」の2つのブランドを立ち上げました。再生可能資源の活用とストック資源の管理を目指すこれら2つのソリューションブランドを両輪で進めていくことで、複合的かつ複雑な社会課題を解決し、サステナブルを超えたリジェネラティブ(再生的)なライフスタイルを素材から提供していくことを目指します。
振り返ると三井化学の歴史は原料転換の歴史でもあります。1912年に石炭コークスの副生ガスから化学肥料製造を開始したことを皮切りに、ガス、石油ナフサを原料とした化学事業へと原料転換を実現させながら事業を拡大してきました。そして今まさにバイオマスやリサイクル資源を原料とした化学事業への転換の時にあると言えます。2つのブランドを社会とのコミュニケーションの軸として、再びの原料転換を成し遂げることでカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー社会の実現に貢献するとともに、さらなる成長を目指していきます。

海洋プラスチックごみ問題

海洋プラスチックごみ問題は、不適切な廃棄物管理によりプラスチックが資源循環から外れ、海洋に流出してしまうことに起因しています。最も大切なことは、河川や海にプラスチックを流出させないことです。流出の抑止には、プラスチックに関わるサプライチェーンが一体となって対策を実施することが必要です。
当社グループは、国際的なアライアンスであるAlliance to End Plastic Waste(AEPW)や、国内アライアンスであるクリーンオーシャンマテリアルアライアンス(CLOMA)などに参画して、この問題の解決に向けた取り組みを進めています。

2019年に発足、化学、プラスチック加工、小売り、廃棄物管理など、プラスチックのサプライチェーンに携わる世界各国の企業が参加しています。プラスチックごみの削減に対し、廃棄物管理のインフラ整備、イノベーションの促進、教育・啓発活動、清掃活動の4つの分野において、2024年までに総額15億米ドルを投じ、持続可能な社会への貢献を目指しています。(参加企業は、2023年2月時点で80社)

 

三井化学、Alliance to End Plastic Wasteに参加

CLOMA

2019年1月、業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、イノベーションを加速するためのプラットフォームとして設立されました。これまで、会員間の技術情報共有や、マッチング機会の提供といった活動を実施し、2020年5月には「CLOMAアクションプラン」として、2030年に容器包装リサイクル率60%、2050年にはプラスチック製品リサイクル率100%という目標を掲げ、現在は具体的な方策や実証テストの計画などを検討しています。(参加企業は、2023年7月時点で498社)

CLOMA