三井化学グループは、取水量、放流水量や水リサイクル量をモニタリングして水消費量の把握を行い、効率的な水利用に取り組んでいます。例えば、三井化学では年度予算において前年度実績を下回る製品単位当たりの水消費量目標を設定するなど、水消費量の削減に努めています。特に水を多く使用する生産拠点では、循環式冷却水利用など水のリサイクルを積極的に行うことで取水量、水消費量の削減に取り組んでいます。
環境保全
水
三井化学グループは様々な化学製品を製造しており、水はその製造過程において必要不可欠です。例えば、製造プロセスでの加熱や冷却、製品の洗浄、製造工程で生じる化学物質の除害設備、排水設備等で水を使用します。
当社グループは水資源に関する基本的な考え方を制定し、水資源の利用や水環境の保全の適正管理に努めています。また、持続可能な調達ガイドラインにおいて、サプライヤーにも排水管理や水の効率的な利用を求めています。
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水資源に関する基本的な考え方
- 水資源が限られた大切な資源であり、その保全が世界的な重要課題であると認識しています。
- 良質な水資源の利用は操業には不可欠であり、効率的水利用促進に努めてまいります。
- 水資源は、地域的、時間的に遍在するという特性のもと、各国・地域において個別に適正な管理を実施してまいります。
水質汚濁物質の削減
三井化学グループは法令や条例の規定値を目標値と定め、COD、窒素、リンなどの水質汚濁物質の排出量をモニタリングし、水環境の保全に努めています。また、各々の水質汚濁物質の排出量は、目標値を大きく下回るレベルで管理できています。
水を多く使用する国内の生産拠点では、各プラントの排水を集約し、中和や油分分離、固形物除去などを行っています。また、微生物を利用して排水中の有機物を削減する活性汚泥処理を行っています。微生物の有機物分解を阻害する物質や難分解性の有機物を含む排水については、活性汚泥処理が難しいため、オゾン処理、燃焼処理、アナモックス処理※等を行ってから、通常の排水処理を実施しています。
※ アナモックス処理:
アナモックス菌を使用して、アンモニア濃度が高い排水から窒素分を除去する処理。
全窒素排出量(三井化学)
全リン排出量(三井化学)
COD、BOD排出量(三井化学グループ)
効率的な水利用
取水量
(地表水、地下水、海水、生産隋伴水、第三者の水)
取水量の内訳
(三井化学グループ:2023年度)
放流水量
水消費量※
※ 水消費量 = 取水量-放流水量
水リサイクル量および水リサイクル率※
※ 水リサイクル率 = 水リサイクル量 /(取水量+水リサイクル量)
水リスク評価
三井化学グループは国内外の各生産拠点について、現在から2050年までの水リスク評価を行っています。評価ツールとして、WRI(世界資源研究所)のAQUEDUCT Water Risk AtlasとWWF(世界自然保護基金)のWater Risk Filterを主に用いています。まず、AQUEDUCTを用いて水ストレス地域の候補を確認した上で、異なる視点を持つWater Risk Filterも用いて、水ストレス地域を絞り込んでいます。2024年度はインドとアメリカの2拠点を水ストレス地域としました。それら地域については、そこで製造される製品の水原単位、水使用量、現地情報等から詳細な評価を行うことにしています。そのうちインドの拠点については、2021年度に詳細評価を行い、水リスクが高くないことを確認しています。アメリカの拠点については、今後詳細評価を行っていきます。
これらツールを用いた水リスク評価は毎年実施しており、新規プラント導入時も同様の評価を実施しています。昨今、環境分野においてもダブルマテリアリティ視点での評価が求められていることも踏まえ、今後は自然資本および生物多様性を含めた総合的水リスク評価方法を再構築していきます。また、生物多様性リスクも水リスクの一部として、IBAT※を使用し、生産拠点での保護地域、保護優先地域、絶滅危惧種、淡水域の絶滅危惧種を評価項目として、生物多様性リスクの情報を収集、検討しています。
TCFD提言への賛同に付随して、気候変動による各生産拠点の物理的リスク(洪水等)についてもIPCC RCP4.5および8.5シナリオ情報等をもとに評価を実施しています。評価対象として、グローバルにおける8エリア(日本、中国、韓国、台湾、東南アジア、インド、アメリカ、欧州、ブラジル、メキシコ)において重要度が高い68拠点を抽出し、河川洪水、沿岸洪水(高潮)のリスクについて分析・評価しています。洪水に関しては、日本、中国をはじめとする東アジア、東南アジアにおいてリスクが高い傾向にあり、将来的には多くのエリアで発生頻度が増加すると予測されています。
また、リスクのインパクト評価として、各拠点で100年に1度の洪水による資産価値低下および営業停止の被害額について、評価モデルを使用して2020年~2080年にわたり評価を行いました。河川洪水については、国内外拠点で2030年以降に影響が大きくなる可能性が示唆されました。今後、TCFD提言での物理的リスク評価の更なる展開と合わせて、さらにインパクト評価の対象生産拠点を拡大し、インパクト評価結果をもとに対応の要否を判定して、必要なものについては、事業戦略に反映していく予定です。
※ IBAT:
Integrated Biodiversity Assessment Tool。バードライフ・インターナショナル、コンサベーション・インターナショナル、IUCN(国際自然保護連合)、UNEP(国連環境計画)、WCMC(国際自然保全モニタリングセンター)との連名で開発された、自然保護に関する基礎データや最新情報にアクセスできるツール。