SDGsをはじめとする社会課題解決に向け、企業の主体的な取り組みに対する期待と要請が高まるとともに、果たすべき役割も大きくなっています。その中で化学産業は社会の基盤と革新を担う存在であり、社会課題の解決に向けて大きな責任を負っていると認識しています。持続可能な社会の実現には、多様なソリューション提供を通じて、企業自身が成長しながら継続的に社会価値を創造していくことが不可欠です。そのため、企業はESGの視点で機会とリスクを的確にとらえ、経営に反映させていくことがより重要になっています。
サステナビリティマネジメント
マネジメントシステム
方針・基本的な考え方
三井化学グループは、2006年に経済・環境・社会の3軸経営を打ち出して以来、様々な取り組みを進めてきました。2018年4月にはESG推進室を設置し、3軸経営を深化させ、ESGを中核に据えた経営を行っていくことを表明しました。2021年にはVISION 2030を始動、ESG要素の経営/戦略への組み込みのさらなる具体化により実行フェーズへの移行を進めるとともに、ステークホルダーの皆様に向けたESG情報開示の強化に取り組んでいます。
三井化学グループのサステナビリティ
ESG推進方針
SDGs等で示されているESGに関する諸課題から、下記を通じて、社会および当社グループの持続可能な発展を目指します。
- ビジネス機会を探索し、事業活動を通じた課題解決を図っていくこと
- 当社グループの将来リスク※を認識し対処するとともに、企業として遵守すべき社会的責任を果たしていくこと
※ リスク:
経営戦略および経営目標の達成に影響を与える三井化学グループを取り巻く事象がもたらす不確実性および変化。
「財務・非財務の統合」志向
- 非財務は財務の基盤である
当社グループは「事業継続の前提となる課題」に対応し、信頼を醸成する。 - 非財務は将来の財務である
当社グループは「事業継続に不可欠な能力」を向上し、成長を加速する。 - 非財務と財務は相互に関与している
当社グループは「持続可能な社会への貢献」を通じ、利益を最大化する。
課題
ESG要素の経営/戦略への組み込みのさらなる具体化
- 取締役会・全社戦略会議・ESG推進委員会における方針・戦略・計画の討議と経営への反映
- 事業・R&Dを巻き込んだ事業創出とイノベーション促進
ESG情報開示の強化
- 投資機関・顧客・ESG評価機関への訴求力向上
- ESG対話の強化
体制・責任者
責任者はESG推進委員会担当役員です。
ESGを経営の中核的なテーマとして、取締役会やESG推進委員会等で方向性を討議し、各部門の戦略への落とし込みを進めています。また、VISION 2030の非財務指標の進捗管理やマテリアリティの見直しもこの体制の中で行っています。
サステナビリティマネジメント体制
ESG推進委員会
本委員会の役割は、次のとおりです。
- 当社グループのESG推進に関する方針・戦略・計画・施策の審議
- 当社グループにおけるESG推進の状況の報告および討議
- その他ESG推進に関する重要事項の討議
ESG推進委員会は、原則として毎年4回開催しています。また、ESG推進に関する新たな重要項目の検討や施策立案などが必要となった場合は、本委員会の委員長が当該項目を担当する分科会を設置することとしています。2021年度までは気候変動・プラスチック戦略に関する分科会を設置し対応を進めてきましたが、カーボンニュートラル対応など、分科会での活動範囲が拡大し、さらなる深化と活動加速の必要性が増したことから、2022年度より分科会をサーキュラーエコノミーCoE(センター・オブ・エクセレンス)に発展的に改組し、活動の強化を図っています。
本委員会の審議結果および活動実績は経営会議に報告しています。また、特に重要な事項については、経営会議や取締役会の承認を得ています。
ESG推進委員会の構成
委員長 | 社長 |
---|---|
副委員長 | ESG推進委員会担当役員 |
委員 | 役付執行役員、本部長、グリーンケミカル事業推進室長、RC・品質保証部長、総務・法務部長、人事部長、経営企画部長、経理部長、コーポレートコミュニケーション部長、ESG推進室長および委員長が指名する者 |
事務局 | ESG推進室 |
* 常勤監査役は、必要に応じ本委員会に出席し、意見を述べることができる。
* 委員長は、討議内容に関係のある執行役員、本社部レベル長を出席させ、その説明または意見を求めることができる。
ESG推進委員会(2023年4月~2024年5月)主な討議事項と意見(抜粋)
2023年度 マテリアリティ/非財務KPIレビュー
- 2022年度は戦略会議等での役員層による議論や、ロジックツリーを用いた財務・非財務の関連性分析を通じてレビューしたが、2023年度は、リスクマネジメントと連動させて整理。職場の各人の仕事が非財務 KPI、ひいてはマテリアリティにどうつながるかを可視化する上でユニークな取り組みであった。
- 「安定生産」というマテリアリティの本来の目的は、いかに事業の機会損失を減らすか。そのKPIとして、手法である先進生産技術の実装件数から高額損失トラブル件数に見直すことは有益。
カーボンニュートラル戦略
- 大阪工場カーボンニュートラル構想は、当社グループ単独の取り組みではなく、企業の枠を超えた大きな将来像を描き、実行していくことが求められている。地域の近隣企業や同業他社との連携をさらに加速していくことが必要。
- カーボンニュートラルロードマップでは、当社グループのGHG排出量は毎年増減しながら、長期的には減少していくことを示している。年によっては設備の新増設により増えることもあれば、再構築で減ることもある。全体感としては2030年に向けてほぼ順調に排出量の削減が進んでいる。
Scope3
- Scope3はまず算定方法の明確化、グループとしての開示を行い、その後に削減目標や時間軸をステークホルダーに示していく必要がある。削減の方策としてのバイオマス/リサイクル戦略に関する指標・目標の設定も必要。
人的資本
- 非財務KPIの女性管理職比率は、日本だけで考えるのでなく、海外グループ会社を含めた人材登用により、その働き方を皆で理解することを推進すべき。単純に数を稼ぐのではなく、何のために女性管理職を増やすのかという目的を明確にした上で 、頑張る人をいかに支援していくかという施策が必要。
人権リスクへの対応
- 人権リスクへの対応は、ESG推進室一部門だけの取り組みではなく、サプライチェーン全体で責任を果たしていく観点からレスポンシブル・ケア活動の一環として、各部門が対応すべき問題と認識する必要がある。
- 現状の実態調査は、社内目線となって人権リスクを見逃さないよう外部の目を入れることが重要との観点からNGOの協力を得て評価しているが、将来的には内部監査のように自社内で目を行き届かせる「自走」も目指したい。
ESG要素の経営システムへの組み込み
三井化学グループでは、ESG要素を経営/戦略へ組み込み、財務・非財務を統合した経営システムの構築を目指しています。
投融資判断におけるESG要素の組み込み
三井化学グループでは、大型投融資判断にESG要素やSDGsをはじめとした社会課題視点を反映するための仕組みを構築しています。2019年度からは、投融資計画書にICP※1を活用した試算を記載することとし、2022年度からはさらに、従来評価していたIRRに加え、ICPを考慮したIRR(c-IRR)※2の併記を求め投融資評価の参考にしています。なお、ESG推進委員会の討議を経て、ICP価格も見直しました。
※1 ICP:
インターナルカーボンプライシング。
※2 c-IRR:
「増分利益±GHG増減量×ICP価格」により算出したIRR。
投資計画書のイメージ
2024年度大型投融資案件※
※提携・M&A・財務支援などを除く。決裁年度:2024-2026年度。
年度予算におけるESG要素の組み込み
三井化学では全社予算編成基本方針に、ESG要素を考慮するよう織り込んでいます。
Blue Value®・Rose Value®製品・サービスの創出拡大については、2020年度から、VISION 2030で掲げた全社目標(各々の売上収益比率40%)に対し、事業部門の年度予算においてBlue Value®・Rose Value®製品・サービスの売上収益を管理指標として設定しています。各事業部門は、目標達成に向けた課題や方策を年度予算に反映させ、その進捗を管理しています。
さらに、VISION 2030の非財務指標として、マテリアリティに紐づくKPIと目標を定めています。財務・非財務双方から経営モニタリングを強化することにより、企業価値の向上を目指しています。KPIについては、夫々、担当役員および担当部長を明確にし、各部門の年度予算や目標に落とし込んで管理しています。また、年度ごとのKPIの進捗が2030年の非財務目標達成にどのようにつながるのか(KPI/目標設定の整合・妥当性)、非財務目標達成に向けて取り組むことが財務目標の達成にどのように貢献するのか(財務と非財務の関連性)という視点から、ESG推進委員会や全社戦略会議にて進捗や課題をレビューしています。
社内浸透
三井化学グループは、ESG要素を経営/戦略に組み込むためには社員一人ひとりがESGを理解し、自らの業務に落とし込むことが欠かせないと考えています。
そこで2020年度から、「誰でも気軽に参加できる」をコンセプトに、全社員を対象とした自由参加の対話型オンラインイベント「ESG Link Caféワンポイントレッスン」を開催しています。ここでは、当社グループのESGに関する取り組みはもちろん、社会的に関心の高いESG関連の話題を多岐に渡って取り上げ、短時間で平易に紹介しています。説明後にはフリートークの時間を設け、ESGをテーマとした社内コミュニケーションの場としても活用しています。
これ以外にも、社内サイトでのESG関連用語解説の連載や、職場や部署を対象としたワークショップなど、様々な社内浸透を図っています。今後も複層的なアプローチを通して、社員一人ひとりがESGに係る取り組みを自らの業務に落とし込むことを支援し、実践につなげていきます。
ESG Link Caféの主なテーマ
- 三井化学グループのESG推進の取り組み
- Blue Value®・Rose Value®認定制度と申請
- カーボンニュートラルの最新動向(政策動向・当社の取り組み)
- 三井化学グループのブランディング(BePLAYER®とRePLAYER®)
- プラスチックリサイクルあれこれ(現状と取り組み)
*2020~2023年度 計23回開催、のべ2,368名参加